ひそやかな音楽『ひそやかな音楽』(Música Callada)は、フェデリコ・モンポウ作曲のピアノ曲集。モンポウ後期の代表的作品。4巻、全28の小曲からなる。モンポウの最高傑作と見なす人も多い[1][2]。原題を直訳すると「沈黙の音楽」だが、「ひそやかな音楽」の方が定着しつつあるようである。 概要モンポウは、この曲が演奏されたり出版されることを前提として作曲を進めたわけではない。全曲演奏しても1時間程度だが、作曲年代は広範囲(1959〜1967年)にわたっている。初期のピアノ作品や『歌と踊り』などとはまったく曲想が異なり、ほとんどの曲が瞑想的で、意図的な単純さが追求されている。また、しばしば複調や無調的な箇所が見られ、モンポウの曲の中では最も前衛的語法に近づいた曲集である。 哲学者ジャンケレヴィチはエリック・サティの影響を指摘するが[1]、これは実証的ではないし、かなり疑わしい。モンポウがサティから影響を受けたのはパリ時代の一時期であって、かつ、間もなく批判的な立場に変わっているからである[2]。 題名の由来題名はスペインの神秘思想家十字架の聖ヨハネ(San Juan de la Cruz)の詩『霊の賛歌』(Cántico espiritual)の中にある一節「音のない音楽、叫ぶ孤独」(la música callada, la soledad sonora)からとられている。十字架の聖ヨハネはこれを、「自然の感覚と能力に関する限り、その音楽には響きがない。しかし、孤独は精神の持つ能力を通して大きく響く」と説明する。一方、当曲集第1巻序文にフランス語で書かれているモンポウ自身の言葉によれば、「música callada」の真の意味をスペイン語以外で表現したり説明しようとするのは難しいという。 曲の構成第1巻1959年出版。9曲からなる。約20分。
第2巻1962年初演。7曲からなる。約14分。
第3巻1965年初演。4巻の中で最も曲数が少なく、5曲からなる。約14分。
第4巻1972年、スペインのカダケ国際音楽祭においてアリシア・デ・ラローチャによって初演された。7曲からなる。約21分。ラローチャに献呈された(被献呈者があるのはこの曲集のみ)。
出版楽譜はパリのサラベール社から出版されている。 録音モンポウ自演による全巻の録音がある(Ensayoレーベル。後にBriliant Classicsレーベルより再発された)。1974年録音。音質はそれほどよくない。日本人による演奏としては、熊本マリ[3]や高橋悠治による録音[4]がある。 脚注 |
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