アルノールの王たちアルノールの王たち(アルノールのおうたち)では、J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』および『シルマリルの物語』の舞台となる中つ国に存在する、架空の国の王族について述べる。 概要西方の大海に浮かぶ島ヌーメノールが沈没したとき、わずかな生き残りが中つ国に漂着して破滅を逃れた。指導者エレンディル、長男イシルドゥア、そして次男アナーリオンは、北方王国アルノールと南方王国ゴンドールを築いた。しかし冥王サウロンとの戦いでエレンディルもアナーリオンも死亡し、イシルドゥアもまたあやめ野で討たれた。王位は彼らの子孫が継いだものの、南北両王国が統一されることはなかった。 その後ゴンドールは繁栄したが、アルノールはやがて3国に分裂し、最後は魔の国アングマールとの戦いで滅亡した。しかし王の一族は生き延び、さすらい人「野伏」となってひそかに冥王の勢力に抵抗を続けた。 『指輪物語』にて冥王は滅び、イシルドゥアの子孫であるアラゴルンがエレッサール王として位につくことで、滅亡以来約2000年を経てアルノールは復興した。 王の証ゴンドールには王冠があったが、アルノール王は冠を頂かず「エレンディルの星」エレンディルミアと呼ばれる白い宝石を銀の帯で額に結び付けていた。元々イシルディアが所持していた宝石は彼の死と共に失われ、ヴァランディル王以降は複製を身に着けた。オリジナルに及ばないとはいえ、このエレンディルミアも至宝として王国滅亡後も代々受け継がれた。指輪戦争後になって、サルマンが一つの指輪の捜索中にイシルドゥアのエレンディルミアを発見し秘蔵していたことが発覚。本来の継承者アラゴルンの手に渡った。 冠のないアルノールでは、アンヌーミナスの王笏が王位を象徴するものだった。これはヌーメノール王家のものではなく、アンドゥーニエ領主に伝わっていた銀の杖である。人間が作成した品物の中では中つ国に残る最古の物で、エルロンドからアラゴルンに引き渡されたときには既に5000年以上が経っていた。 さらに古く、約6500年が経過しているのが、上古にエルフのフィンロドから王家の先祖に与えられたというバラヒアの指輪である。また、エレンディルの折れた剣ナルシルもいつか鍛え直される日のために伝えられてきた。 これらの宝物は王国の滅亡から復興までの間、エルロンドの裂け谷に保管されていた。 王国草創期エレンディル中つ国に流れ着いたヌーメノール人の指導者。主にアルノールを治めていたが、ゴンドールを加えた両王国を統べる上級王にあたる。第二紀3441年、冥王サウロンとの戦闘で戦死。 →詳細は「エレンディル」を参照
イシルドゥア弟アナーリオンとゴンドールを共同統治していたが、亡き父エレンディルの後を継いで上級王になるためにアルノールへ向かう途中の、第三紀2年に、あやめ野にてオークに討たれ死亡。このとき4人の息子たちのうち3人までもが命を落とした。 →詳細は「イシルドゥア」を参照
アルノール上級王※ 以下、代・名・没年の順に王について記載する。
イシルドゥアの末子で、まだ幼かったため戦いに加わっていなかったヴァランディルが、従者オホタールの持ち帰ったナルシルの刃を受け継ぎ、アルノールの統治者となった。彼を含む8代は大きな問題もなく国を治めていたが、南方王国ゴンドールとの関係は疎遠になっていった。 アルセダイン王王国の分裂
エアレンドゥアの息子たちの不和が原因で、アルノールはアルセダイン、ルダウア、カルドランの3つに分裂した。長子アムライスが治めたのはアルセダインである。残りの2国では王の血統は早々に絶えてしまった。 なお、アムライス以降の王はエルフ語の名前を使うのをやめている。 アングマール出現
マルヴェギル王の治世の初め頃、アルノールのさらに北にアングマール王国が出現した。この国は凶悪な人間やオークを集めて北方王国を悩ませるようになったが、その支配者が指輪の幽鬼の首領であることはまだ知られていなかった。 アルゲレブ以降の王は、名前に接頭辞「AR」を加えているが、これは全アルノールの統治権を有する上級王の位を主張していることを表す。他の2国にはもはやイシルドゥアの子孫は残っていなかったからである。しかしこの主張はルダウアによって却下された。実はルダウアはひそかにアングマールと結んでおり、その支配権は山岳人の邪悪な領主の手にあった。真相を知ったアルゲレブは風見が丘の守りを固めたが、ルダウアとアングマールの連合の前に討ち死にした。 アルヴェレグはカルドラン国やリンドンのエルフの協力を得て、風見が丘から敵を駆逐し、国境線を維持した。だが1409年、アングマールが差し向けた大軍がカルドランに侵攻。風見が丘包囲戦でアルヴェレグは死亡した。 アラフォールはまだ若年だったが勇敢であり、キーアダンの援助を受けて敵を追い返した。荒廃したカルドランのドゥーネダイン残党は、はだか山丘陵や古森に潜伏して抵抗を続けた。しかしルダウアはアングマールの人間によって完全に制圧されてしまい、現地の数少ないドゥーネダインは殺されるか逃亡するしかなかった。 疫病
アルゲレブ2世の治世に、エリアドール地方に東南から疫病が広まった。アルセダインの北部までは伝染しなかったが、カルドランは壊滅的な被害を受け、生き残りのドゥーネダインも死に絶えた。アングマールやルダウアから放たれた悪霊が塚山を恐ろしい場所へと変えたのもこの時代である。 ゴンドールとの協議
アルノールがアングマールの脅威をしのぎ、ゴンドールが馬車族の侵入に脅かされていた頃、両王国はようやく一連の危機の背後にある1つの悪意があることに気付いた。1904年、アラファント王は息子のアルヴェドゥイの妻として、ゴンドールの王オンドヘアの娘フィーリエルを迎えた。しかし両国ともそれぞれの敵への対処で手一杯で、互いに援軍を送りあう余裕はなかった。 オンドヘア王が息子たちもろとも討ち死にすると、フィーリエル王女の夫であるアルヴェドゥイ王子は南方王国の王位を要求した。しかし執政ペレンドゥア率いるゴンドールの会議は「メネルディルの男系の子孫のみが継承権を有する」として、要求を却下した。アルヴェドゥイはなおも「南北両王国を統べる上級王権はエレンディルからイシルドゥアが受け継ぐはずだった。それに古のヌーメノールでは、男女問わず長子が王位を継いでいた」と主張したが、回答は得られなかった。結局ゴンドールの新王となったのは戦勝をもたらしたエアルニル将軍だったが、アルヴェドゥイはそれに異議を唱えるまではしなかった。 最後の王
アラファントの死後、アルヴェドゥイはアルセダインの王位を継いだ。そもそも彼の名は「最後の王」を意味しており、後世にアラゴルンが死者の道に挑む契機となった詩を遺した予見者マルベスの進言で付けられたものだった。マルベスによれば、彼が新たな名を得て大王国の王となる運命の選択肢もあったという。しかし実際にはそうはならなかった。 1974年のアングマールの猛攻で首都フォルノストが陥落したが、アルヴェドゥイは北方丘陵にとどまって抵抗を続けた後、さらに北へと撤退した。王はしばらくドワーフの廃坑に隠れていたが、飢えに耐えかねてフォロヘルの雪人ロッソス族に助けを求め、雪小屋の中で助けをじっと待った。ルーン川を越えて逃れてきたアラナルス王子から事のあらましを聞いたキーアダンによって、船がフォロヘルへと差し向けられたが、ロッソス族はアルヴェドゥイに夏になるまで脱出を控えるように忠言した。王はこれを聞き入れずに出航したものの、嵐によって船体が氷に押し潰され、2つのパランティーアとともに海中に沈んだ。 ゴンドールのエアルヌア王子が救援の軍勢を率いてたどり着いたときには、既にアルセダインは滅亡していた。エアルヌア軍によってアングマールもまた滅ぼされたが、アルノール全土は空虚な荒地と化して戻らなかった。アルヴェドゥイの最期がロッソス族によって伝えられたのは、ずっと後のことである。無事だったのはバラヒアの指輪だけで、この宝は別れ際に王が助けてくれた礼として雪人に預けていたため、ドゥーネダインが買い戻した。 野伏アルノール王国は滅び去ったが、王の血統は絶えなかった。アラナルスとその子孫を族長とし、ドゥーネダインは放浪の野伏となってひそかに冥王の勢力と戦い続けた。 →詳細は「ドゥーネダイン § ドゥーネダインの族長」を参照
再統一王国指輪戦争のさなか、第15代族長のアラゴルンがゴンドールに帰還し、ペレンノール野の合戦を勝利に導いた。彼は戦時下であからさまに王位を請求するような態度はとらず、あくまで一介のドゥーナダンとして行動していたが、冥王サウロンを挑発するために進軍中あえて「王の到来」を布告したことはあった。 戦争が終結し、冥王が滅んだ後の3019年5月1日、アラゴルンはエレッサール・テルコンタール(Elessar Telcontar)として戴冠し、アルノールとゴンドールを統一した国の王として即位した。同年の夏至に王はアルウェンと結婚し、やがて息子のエルダリオンと数人の娘をもうけた。 エレッサール王は主にゴンドールのミナス・ティリスで再統一王国の統治を行ったが、しばしば北方に行幸しては復元されたアンヌーミナスの王館に滞在し、ペレグリン・トゥックやサムワイズ・ギャムジーのようなかつての仲間と旧交を温めたという。 系譜※ かっこ付きの数字は、何代目の王かを示している。
脚注 |
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