イヤー・オブ・ザ・ドラゴン
『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(Year of the Dragon)は、1985年製作のアメリカ映画。原作は元ニューヨーク市警警察委員ロバート・デイリーの同名小説。 ニューヨークのチャイナタウンを舞台に、刑事とチャイニーズ・マフィアの対決を描いたバイオレンス作品である。タイトルの意味は「辰年」。 日本での配給は当初はUIPにするはずだったが、松竹富士に変更された。 ストーリーニューヨーク市警察の刑事スタンリー・ホワイトは、ベトナム戦争に従軍してきた過去を引きずりながら、犯罪の頻発するチャイナタウンに乗りこみ取り締まりを開始する。強引な摘発を続けチャイニーズ・マフィア全体を潰そうとするスタンリーに対し、相手のボス達は強く反発する。しかも警察の上層部はマフィアと暗黙の協定を結び、末端の摘発だけで事を済まそうとする。警察内部でもスタンリーは次第に孤立していく。 一方、チャイニーズ・マフィア新世代のボス、ジョーイ・タイはイタリアン・マフィアや身内の旧体制派、かつての取引相手を容赦無く粛清し勢力を拡大していく。たびたび起きる殺人事件にタイの影を見て取ったスタンリーは中華系の警察官ハーバートを潜入捜査官としてタイの組織に送り込むが、タイもヒットマンを差し向けスタンリーの自宅を襲撃、正体を見破られたハーバートも殺害された。 かつてない緊張が高まる中、タフな刑事と若きボス、この二人の対決が今始まろうとしていた。 アクション描写など熱血漢の刑事と冷徹なチャイニーズ・マフィアの対決を描いた映画であり、その描写は苛烈を極める。バイオレンス描写に関しては、中盤のレストラン襲撃シーンでは多くの一般市民も容赦無く殺傷される描写がなされている。ジョーイ・タイが東南アジアの麻薬王(バン・スン)との取引において、競合するマフィアのボスの生首を取り出し見せつけるシーンや、ヒットマンに顔面を撃ち抜かれたハーバートのクローズアップなどは、他に類を見ない激烈さである[3]。 また、カーアクションにおいては、当時の現行車種であるフォード・サンダーバード(9代目)やメルセデス・ベンツ・Sクラス(2代目)が惜しげも無く破壊されている[3]。特にサンダーバードは撮影時、文字通りの「最新型」であった。 それに対し、BGMやエンドロールにマーラーの交響曲第2番が効果的に使われるなど、極めて叙情的な面も併せ持つ映画である[3]。 アジア系アメリカ人からの抗議この映画には、民族対立を助長するような表現、差別用語("Chinks"、"Slant-eyed"、"Yellow niggers"、"Polak"など)の使用、性差別表現などについて、中国系(中華系)を含むアジア系アメリカ人からの抗議が相次いだ[4]。いくつかのコミュニティからは、この映画がチャイナタウンのイメージを悪くし、経済的打撃を与える恐れがあるという抗議も上がった[4] 。これらの抗議を受け、オープニングクレジットには以下の注意書きが付け加えられた[5]
監督のチミノは、Jeune Cinémaとのインタビューの中で、以下のように話している[6]。
チミノの発言通り、劇中ではアメリカ社会の暗部が糊塗されることなく随所に表現され、民族差別問題の存在が提起されている。ミッキー・ローク演じる刑事もポーランド系アメリカ人という設定であり、同問題とは無縁でない出自であることが描写されている(ポーランド系という設定は、終盤で生きることになる[3])。 キャスト
受賞この映画は、セザール賞最優秀外国語映画賞にノミネートされ[8]、ジョン・ローンがゴールデングローブ賞助演男優賞に、デヴィッド・マンスフィールドが作曲賞にそれぞれノミネートされた。[8]。 脚注
出典
外部リンク |
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