エネミー・ライン
『エネミー・ライン』(Behind Enemy Lines)は、2001年のアメリカ合衆国の映画。撃墜された戦闘機から脱出した航空士の逃走劇を描いた戦争映画。オーウェン・ウィルソン主演。監督はジョン・ムーア。 製作本作は、ボスニアヘルツェゴビナのセルビア人武装勢力により撃墜されたF/A-18Fから脱出したWSO(兵器管制士官)の逃走劇をメインとした戦争映画である。 空母はカール・ヴィンソン(CVN-70)が使われた[2]。 兵器のメカニズムが精巧に描写されている。例えば、公開当時まだ就役間もなかったF/A-18Fスーパーホーネット戦闘攻撃機[2]の発着艦、被撃墜・コックピットイジェクトプロセス、地雷の仕掛けられたトラップの起爆ギミックなどである[独自研究?]。また、セルビア人武装勢力が装備するT-72(セルビア仕様T-84として出演)戦車、BMP-1歩兵戦闘車なども全て実車を用いて撮影されている[要出典]。ただ、F/A-18Fの最新操縦システムを構成するグラスコックピットやHMDは画面上に登場せず、旧世代の計器板やヘルメットで代用撮影されている[要出典]。 物語の基盤は、1995年7月22日撃墜された米空軍F-16Cパイロットスコット・F・オグレディ大尉が友軍に救出されるまでの6日間の逃亡劇とする説があり、当人自身も退役の翌2002年に主人公のモデルに無許可での映画化であると主張して製作会社に対し提訴した[2]。1994年に撃墜され脱出した英国海軍FRS Mk.1シー・ハリアーパイロットニック・リチャードソン大尉や、湾岸戦争帰りの元英国空軍ナビゲーターで作家のジョン・ニコールの作品とも類似するといわれる[独自研究?]。 あらすじ1992年から起きた旧ユーゴスラビアの民族紛争がシンシナティ協定により、ボスニアの停戦合意が実現。戦闘の鎮静化に伴いNATO軍が撤退を始め、米海軍空母カール・ヴィンソンはアドリア海上で不測の事態に備えていた。 米海軍大尉クリス・バーネットは、実戦ではなく訓練と巡回だけの任務に意味を見出せず辞表を提出し、アドリア海戦闘群司令官レイガート少将と衝突する。そして、本来は休暇であるクリスマスに、レイガート提督はボスニア上空からの撮影任務を命じる。 相棒のスタックハウス大尉と共に空母から発艦したF/A-18Fは、ボスニア上空を飛行中、非武装地帯に移動目標のレーダー反応を探知。偵察のため無許可で飛行ルートを外れてその非武装地帯に向かい、搭載カメラで空撮するが、それに気付いたセルビア人武装勢力から地対空ミサイル(SAM)9K35ストレラによる攻撃を受けて撃ち落とされる。和平合意に反して武装勢力が集結していたのだ。 バーネットとスタックハウスは、敵地上空で大破した偵察機から緊急脱出しパラシュートで山中に降下する。脱出の際に負傷して動けないスタックハウスを残して、バーネットは無線連絡を取るために山頂を目指すが、その最中にセルビア人武装勢力が降下地点に迫ってくる。スタックハウスはなすすべもなく捕まり、その場で射殺される。隠れながらその光景を目にしたバーネットは思わず声を上げてしまい、武装勢力に察知されてしまう。 バーネットはセルビア人武装勢力に追われながらも山頂にたどり着き、基地との無線連絡によりレイガート提督が救出命令を出す。しかし、停戦合意が崩れることを危惧したNATO海軍部司令官ピケ提督に中止させられ、バーネットは自力で安全地帯まで突破しなければならなくなり、追跡をかわしながら逃走中、大量虐殺の墓地にはまり、さらに危険な地雷原を進む。 米軍機被撃墜が国際ニュースとなり、スタックハウス殺害への関与を否定するセルビア人勢力は、バーネットを殺害しようと執拗に迫っていた。また、撮影された写真が保存されている記憶媒体を回収しようと躍起になって捜索していた。 逃走中、バーネットはボスニア人民兵の拠点にてセルビア人武装勢力が民間人の大量虐殺を行っていた事を聞き、その証拠を持っていると話したが信じてもらえなかった。そこにセルビア側の戦車が砲撃を加え、ボスニア人民兵に被害が出る。 バーネットはその状況を利用し、セルビア人勢力の遺体と自分の軍服をすり替えて欺く。しかし、その遺体は偽物であるとばれてしまい、セルビア人勢力が遺体映像を利用しニュースで米軍人死亡が報じられる。これを受け誤解した米海軍は救出作戦を中止、バーネットの目に見える位置まで来ていた救出部隊ヘリは引き返してしまう。 絶体絶命かと思われたが、墜落時に見た聖母像を発見しひらめいたバーネットは、脱出シートまで向かい停止していた位置信号ビーコンを手動で復活させる。それを察知したレイガート提督は解任覚悟で自らヘリ部隊を率い、救出に向かう。直後にセルビア人武装勢力の司令官であるミロスラヴ・ロカーもビーコン反応を察知し位置を知ることとなり、同時に記憶媒体がそこにあることも露見する。 バーネットを追跡していた傭兵サシャ・イヴァニッチはバーネットを追い詰めるが逆に罠に嵌り、死闘の末に返り討ちにされる。相棒のスタックハウスの無念が晴れた直後にセルビア人武装勢力の奇襲を受けるが、そこへ救出に駆けつけたレイガート提督率いるヘリ部隊の援護を受け九死に一生を得る。 そのまま離脱することもできたが、バーネットは大量虐殺及び戦争犯罪の証拠写真が入った記憶媒体を回収することを決意し、銃弾の降り注ぐ中に舞い戻りこれを間一髪で回収。すんでのところでヘリに飛び移り脱出に成功を果たした。 レイガート提督に帰還報告の後、渡していた辞表を返してもらったバーネットはそれを破いて、海軍に留まる決意を固めた。空母カール・ヴィンソンに帰還すると乗員達は救出成功の歓喜で満ちた。バーネットが持ち帰った写真が証拠となり、セルビア軍司令官ミロスラヴ・ロカーは大量虐殺を含む数々の戦争犯罪で逮捕され、有罪判決を受けた。この事件によって、レズリー・レイガート海軍少将は空母戦闘群司令官の地位を失う事になった。そして、ワシントンの管理部門に閑職へと追い込まれた。しかし、レイガート提督は部下達からの尊敬と一心で感謝を集めつつも長年の軍隊生活から引退する道を選ぶのだった。 キャスト
日本語吹替
評価公開から1週間で興行収入1870万ドルを稼ぎ、同年公開の『ハリー・ポッターと賢者の石』に次いで2位となった。最終的には予算4000万ドルに対し、全世界で9200万ドルの収益を上げた[1]。 2002年の世界スタント賞で、空中戦を演じたパイロットがトーラス賞を受賞した[3]。 その他
注釈
脚注
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