グリーナムステークス(Greenham Stakes)は、イギリスのニューベリー競馬場で行われる競馬の競走。2000ギニーの前哨戦として知られる。2014年の格付はG3。
概要
グリーナムステークスは、ヨーロッパの平地競馬シーズン初めの4月に行われる3歳牡馬の競走である[2]。クレイヴンステークスとともに、ヨーロッパ各地の牡馬クラシックレースの重要な前哨戦とみなされている[2][3]。1970年にヨーロッパにグループ制が敷かれて以来、G3に格付けされている。
ヨーロッパクラシック戦の前哨戦
グリーナムステークスは定量戦で、2歳時の成績に関係なく同じ斤量で出走できるため、有力な3歳馬にとってシーズン最初のグループ競走となる場合も多い。歴代優勝馬の中でその年に特筆すべき成績を残したものとしては、1909年優勝のミノル(Minoru、この年のクラシック二冠)、1923年の優勝馬パース(Parth、この年の凱旋門賞優勝)、ミルリーフ(Mill Reef、この年の全欧年度代表馬)、クリス(Kris、この年の全欧チャンピオンマイラー)などがいる。
近年のグリーナムステークスの優勝馬の中で最も活躍したのは2011年のフランケルである。フランケルはグリーナムステークス優勝を皮切りに、2000ギニーをはじめG1を無傷のまま4連勝、この年の全欧年度代表馬に選出された[2]。
このほか、グリーナムステークスの優勝馬で2000ギニーに勝ったものとしては、ミノル(Minoru)、オーウェル(Orwell)、ウォロー(Wollow)がいる。また、1992年にグリーナムステークスで4着だったロドリゴデトリアーノがその後2000ギニーで優勝している[2]。イギリス以外では、1998年の優勝馬ヴィクトリーノート(Victory Note)がプール・デッセ・デ・プーラン(フランス2000ギニー)に勝った[2]。
スプリングトライアル開催
イギリスでは秋から春にかけてが障害競馬のシーズンとなっており、ニューベリー競馬場でも3月の末に障害戦がフィナーレを迎える。そして4月になると、いよいよ平地競走のシーズンが始まり、3歳クラシック戦線がスタートする。ニューベリー競馬場では毎年4月に恒例の「スプリングトライアル開催(Spring Trials Meeting)」を行っている[4]。近年は航空関連会社のドバイデューティーフリーがスポンサーとなって、「ドバイデューティーフリー・スプリングトライアル開催」として行われている。
この開催では、3歳牡馬の2000ギニーの前哨戦としてグリーナムステークス、3歳牝馬の1000ギニー前哨戦のフレッドダーリンステークス、古馬の重賞としてクラシック距離のジョンポーターステークス(G3、1マイル4ハロン5ヤード=約2419メートル)が行われる[5]。
2014年のスプリングトライアル開催にはエリザベス女王が臨席した[6]。
レース名について
グリーナムステークスの名前は、ニューベリー競馬場があるグリーナム行政教区に由来する[4]。
原語の“Greenham”の日本語カタカナ転記については「グリーナム」「グリーンハム」などが見られるが、本項では日本での競馬関係文献での一般的表記として「グリーナム」で統一する。
スポンサー名について
グリーナムステークスでは、1970年代に生命保険会社のClerical Medical社、1980年代から1994年までは金融会社のSinger & Friedlander社がスポンサーを務めた。1995年から4年間Tripleprint社がスポンサーとなり、「トリプルプリントステークス」の名称で行われていた時期がある。ただしこの時期でも競走成績書には「グリーナムステークス」と記載される。2000年からはレーンズエンド牧場(Lane's End)、バズウィックタイヤ社(Bathwick Tyres)、トートスポーツドットコム(totesport.com)、エーオン社がスポンサーとなり、いずれも競走名にスポンサー名を冠して開催された。これらの場合も、競走成績書には「グリーナムステークス」と記載される[4][7]。
なお、上述のスプリングトライアル開催でグリーナムステークスと同日に開催されるフレッドダーリンステークスは、イベントのスポンサー名から「ドバイデューティーフリーステークス」の名称で行われるが、競走成績書には本来の「フレッドダーリンステークス」と記載される[8]。同様にジョンポーターステークスも、イベント開催上は「ドバイデューティーフリー・ファイネストサプライズステークス」の名称でおこなわれるが、成績書上は「ジョンポーターステークス」となる[9]。
歴史
グリーナムステークスは1906年に創設され、第二次世界大戦が始まるまでは1マイル(約1609メートル)で行われていた[4]。1941年から1948年までの間は中断され、1949年に再開された時に7ハロン60ヤード(約1463メートル)になった。1956年からは7ハロン(1408メートル)に短縮されて行われている[4]。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催中止となった。
記録
最多勝騎手
最多勝調教師
歴代勝馬
*印は日本輸入馬。(国際競走出走のための一時的なものも含む)
1906年-1940年(1マイル時代)
- 1906: Rocketter
- 1907: Donna Caterina
- 1908: Sir Toby
- 1909: Minoru
- 1910: Bronzino
- 1911: Sydmonton
- 1912: Jingling Geordie
- 1913: Shogun
- 1914: Sunny Lake
- 1915: Let Fly、Sunfire※
- 1916: Analogy
- 1917: 中止(第一次世界大戦)
- 1918: 中止(第一次世界大戦)
- 1919: *ポリグノータス
- 1920: Silvern
- 1921: 中止
- 1922: Weathervane
※1915年は同着。
- 1923: Parth
- 1924: Green Fire
- 1925: Sparus
- 1926: Friar Wile
- 1927: Lordland
- 1928: The Wheedler
- 1929: Sidonia
- 1930: Christopher Robin
- 1931: Link Boy
- 1932: Orwell
- 1933: Harinero
- 1934: Zelina
- 1935: *セフト
- 1936: Noble King
- 1937: Fairford
- 1938: Mirza II
- 1939: Fairstone
- 1940: Tant Mieux
1941年-1955年(7ハロン60ヤード時代)
- 1941: 中止(第二次世界大戦)
- 1942: 中止(第二次世界大戦)
- 1943: 中止(第二次世界大戦)
- 1944: 中止(第二次世界大戦)
- 1945: 中止(第二次世界大戦)
- 1946: 中止(第二次世界大戦)
- 1947: 中止(第二次世界大戦)
- 1948: 中止(第二次世界大戦)
- 1949: Star King
- 1950: Port o'Light
- 1951: 中止
- 1952: Serpenyoe
- 1953: March Past
- 1954: *インファチュエイション
- 1955: Counsel
1956年以降(7ハロン時代)
施行年 |
格付 |
優勝馬
|
1956 |
|
*ラティフィケイション
|
1957 |
|
Pipe of Peace
|
1958 |
|
Paresa
|
1959 |
|
Masham
|
1960 |
|
Filipepi
|
1961 |
|
Primus
|
1962 |
|
*ロムルス
|
1963 |
|
Fighting Ship
|
1964 |
|
Excel
|
1965 |
|
Silly Season
|
1966 |
|
中止
|
1967 |
|
Play High
|
1968 |
|
Heathen
|
1969 |
|
Tower Walk
|
1970 |
G3 |
Gold Rod
|
1971 |
G3 |
Mill Reef
|
1972 |
G3 |
Martinmas
|
1973 |
G3 |
Boldboy
|
1974 |
G3 |
Glen Strae
|
1975 |
G3 |
Mark Anthony
|
施行年 |
格付 |
優勝馬
|
1976 |
G3 |
Wollow
|
1977 |
G3 |
He Loves Me
|
1978 |
G3 |
Derrylin
|
1979 |
G3 |
Kris
|
1980 |
G3 |
Final Straw
|
1981 |
G3 |
Another Realm
|
1982 |
G3 |
*カジュン
|
1983 |
G3 |
*ワッスル
|
1984 |
G3 |
Creag-an-Sgor
|
1985 |
G3 |
Bairn
|
1986 |
G3 |
Faustus
|
1987 |
G3 |
Risk Me
|
1988 |
G3 |
Zelphi
|
1989 |
G3 |
Zayyani
|
1990 |
G3 |
Rock City
|
1991 |
G3 |
Bog Trotter
|
1992 |
G3 |
Lion Cavern
|
1993 |
G3 |
Inchinor
|
1994 |
G3 |
Turtle Island
|
1995 |
G3 |
Celtic Swing
|
1996 |
G3 |
Danehill Dancer
|
1997 |
G3 |
Yalaietanee
|
1998 |
G3 |
Victory Note
|
1999 |
G3 |
Enrique
|
2000 |
G3 |
Barathea Guest
|
※2000年はニューマーケット競馬場で開催。
脚注
出典
基礎情報
各回結果
「グリーナム」表記の出典
- 『日本の種牡馬録8』白井透・著、サラブレッド血統センター・刊、1998、p26
- 『サラブレッド種牡馬銘鑑』第2巻,日本中央競馬会・刊,1972、pVII
- 『サラブレッド血統事典』山野浩一・吉沢譲治、二見書房、1992、1996、p617
- 『新・世界の名馬』原田俊治・著、サラブレッド血統センター・刊、1993、p163
注釈・出典
- ^ a b 2014 International Cataloguing Standards Book Great Britain2014年12月19日閲覧。
- ^ a b c d e Betting-Directory.com Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ HRUK Greenham Stakes History2014年4月26日閲覧。
- ^ a b c d e FRIX Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ ニューベリー競馬場公式HP スプリングトライアル開催2014年4月26日閲覧。
- ^ ZIMBO Dubai Duty Free Spring Trials2014年4月26日閲覧。
- ^ Galopp-Sieger Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ FRIX Fred Darling Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ FRIX John Porter Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ 2015年レース結果 - racingpost 2015年4月20日閲覧
- ^ 2016年レース結果 - racingpost 2016年4月19日閲覧
- ^ 2017年レース結果 - racingpost 2017年4月23日閲覧
- ^ 2018年レース結果 - racingpost 2018年4月22日閲覧
- ^ “2019年グリーナムS”. レーシングポスト (2019年4月13日). 2019年4月14日閲覧。
- ^ “2022年グリーナムS”. レーシングポスト (2022年4月16日). 2022年4月18日閲覧。
- ^ 2023年グリーナムステークスレーシングポスト、2023年4月22日配信・閲覧
- ^ 2024年グリーナムステークスレーシングポスト、2024年4月20日配信・閲覧
- ^ 2025年グリーナムステークスレーシングポスト、2025年4月12日配信・閲覧
- ^ 一部回次欠落部については英語版による。
関連リンク