スムーサー (変速機)スムーサー(英: Smoother)は、いすゞ自動車の貨物自動車に採用されているトランスミッションの商標である。変速時の操作を省略して運転者の負担を軽減しながら、オートマチックトランスミッションと比べた場合のマニュアルトランスミッションの利点を持たせた機構である。 概要スムーサーは、マニュアルトランスミッション (MT) の長所とオートマチックトランスミッション (AT) の長所を両立させ、さらに整備や保守に必要なライフサイクルコストの低減を実現したトランスミッションである[1]。運転者の変速操作を軽減できるのがオートマチックトランスミッションの長所であるが、従来から採用されていたトルクコンバータ式のオートマチックトランスミッションでは、トルクコンバータの構造上の特性として伝達ロスが生じるため、燃費や動力性能の点ではマニュアルトランスミッションのほうが有利であり、同時にオートマチックトランスミッションで広く採用されているプラネタリーギアの組み合わせは、大きなトルクを伝達する際には変速時のトルク変動(変速ショック)が大きい。 スムーサーは通常のマニュアルトランスミッションに、フルードカップリングと油圧アクチュエータで動作する摩擦クラッチを組み合わせ、シフト操作やアクセル操作に応じてクラッチ操作を自動的に制御するものである[1]。シフト操作は手動で行うが、運転装置にクラッチペダルがなく、オートマチック限定免許での運転が可能である[1]。変速時には湿式多板クラッチによって動力を断切し、発進以外のほとんどの走行状態ではフルードカップリングの伝達ロスを防ぐロックアップクラッチが動力伝達を行うため、マニュアルトランスミッションを搭載した車両と同等の加減速性能や燃費が得られ、エンジンブレーキや排気ブレーキもマニュアルトランスミッション車と同等の性能が得られる[1]。0 - 20km/hまでの低速走行中はフルードカップリングで動力伝達が行われ、ギアが入った状態ではオートマチックトランスミッション搭載車と同様にクリープ現象が発生し、坂道発進や数センチ単位のプラットホーム付け、縦列駐車などのように微速走行を行う場面でも、アクセルとブレーキ操作のみで運転が可能である[1]。発進時はフルードカップリングが滑らかにトルクを伝達し、マニュアルトランスミッションのように半クラッチを利用してクラッチプレートを滑らせながら接続する必要がないため、摩耗したクラッチプレートを交換するための保守費用がかからない[1]。 エンジンの回転数制御にドライブ・バイ・ワイヤを用い、変速機との連携制御を行っている。シフトレバーがニュートラルでなければ始動できないようになっている。インストゥルメントパネルに、MT車における半クラッチ状態を調整するためのスイッチが設けられ、運転者の好みや状況に応じて調整できる。スムーサー機構が故障した際に(緊急用途に)使用する、強制的に前進1速または後退ギアで走行するスイッチを持つ。 スムーサーEエルフに搭載されているスムーサーのシリーズ名である。エルフのOEM供給先である日産・アトラス、日産ディーゼル(UDトラックス)・コンドル、ならびにマツダ・タイタンにも搭載されている。シリーズには機能の拡張により「スムーサーE(英: Smoother-E)」、「スムーサーE オートシフト(英: Smoother-E Autoshift)」、「スムーサーEx(英: Smoother-Ex)」といった派生製品がある。
スムーサーFフォワードに搭載されているスムーサーのシリーズ名である。スムーサーEシリーズよりも早い2002年から採用された。フルードカップリングと摩擦クラッチの容量がスムーサーEよりも大きい点が異なるが、機構や機能は同一である。また、同様に「スムーサーF(英: Smoother-F)」、「スムーサーF オートシフト(英: Smoother-F Autoshift)」、「スムーサーFx(英: Smoother-Fx)」といった派生製品があり、機能や機構はスムーサーEシリーズと同様である。
スムーサーGギガに採用されているスムーサーで、トランスミッションへの負荷がエルフやフォワードよりも大きく、これらとは異なる構造を採用している。エルフやフォワードでは摩擦クラッチに湿式多板クラッチを採用したが、ギガでは乾式クラッチを採用し、車型により単板と複板の2種がある。トランスミッションの機構は、12段の変速段数のうち使用頻度が高いメインギアのシンクロメッシュ機構を廃し、メインギアの同期にはカウンターシャフトブレーキを採用している[1][2]。通常の走行ではクラッチ操作が不要であるが、荷役時の位置合わせ(プラットホーム付け)など微速走行の際に用いるクラッチペダルを備えている[3]。
デュアルモードMTいすゞ自動車はスムーサーシリーズを製品化する以前に、クラッチ操作による運転者への負担を軽減するという同様のコンセプトを持った製品としてデュアルモードMTを開発し、1998年式エルフの一部車型から採用を始め、改良したものを2000年式エルフから標準装備としたことがあった[4]。 通常のMT車と同様クラッチペダルを持ち、H形シフトパターンを採用した変速機構である。 動力の断続機構には、通常のMTと同様の乾式単板クラッチ+ダイアフラムクラッチカバーを用いている。 インストゥルメントパネルに「クラッチフリーモード」の選択スイッチがあり、それをONにすることで、クラッチペダルを操作しなくとも通常のマニュアル変速操作が可能となる。「クラッチフリーモード」でギアを選択する際、シフトレバーを操作するとレバーの基部に備わるセンサがレバーのわずかな動きを感知し、自動的にクラッチを切るシステムである。 クラッチフリースイッチがOFFの状態では、通常のMTと同様のクラッチ操作を必要とする変速操作となり、プラットホーム着けなど、微妙な位置合わせも可能である。 他の注意点としては、
などがある。 脚注
関連項目
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