セイヨウネズ
セイヨウネズ(西洋杜松、Juniperus communis)は、ヒノキ科ビャクシン属の針葉樹である。全ての樹木の中で最も広い分布域を持つものの1つであり北半球の寒い地域全域に分布する。北極から北緯30度程度までの北アメリカ、ヨーロッパ、アジアに自生する。 特徴セイヨウネズは低木だが、時には10mにも達するものもある。葉は常緑の針状で、螺旋状についている。雌雄異株で、雄花と雌花は別の木に咲き、風を利用して受粉する。球果は木質とならず、やや肉質の漿果状となり、最初は緑色であるが18か月ほどで熟し、青色のワックス質に覆われた紫から黒色になる。直径4 - 12mmの球形で、1つあたり通常3つ(時には6つ)の種子を持つ。鳥に食べられ、糞と一緒に落とされることで種子が遠くまで運ばれる。雄球花は2 - 3mmの大きさで黄色く、3月から4月頃に花粉を飛ばす。球果(杜松果)は英語でジュニパーベリー(Juniper berry)と呼ばれ、ジンの香りの元として有名である。 分布域が広いことから、種内でも非常に遺伝的な多様性が高く、いくつかの亜種がある。亜種間の関連はまだはっきりしておらず、遺伝的なデータと外見は必ずしも一致していない。 亜種、変種セイヨウネズの亜種、変種には下記のものがある。
利用この木はよく園芸用に使われるが、小さいため他の木材のように使うことはできない。しかしスカンジナビア半島では、バターやチーズなどの日用品を入れる入れ物や、木製のバターナイフとして加工される。 収斂作用を持つ紫色の熟した球果は生で食べると苦いが、乾燥させて肉、ソース、ファルス、ジンなどの香り付けに使われる。実際にジンという言葉はネズの類を表すフランス語: genévrier(ジュネヴリエ)もしくはセイヨウネズを表すgenièvre(ジュニエーヴル)に由来する。 また味もとても強いため、ジビエや舌など、癖の強いものの調理に少量だけ使われる。フィンランドの伝統的なビール「サハティ」(Sahti)を作るためにも必須である。さらに、ローマ帝国のペダニウス・ディオスコリデスによる『デ・マテリア・メディカ』(『薬物誌』、『ギリシア本草』)には、避妊用に使われたと記述される。 画像
出典関連項目 |
Portal di Ensiklopedia Dunia