ニコンI(Nikon I 、1948年3月[1]発売[注釈 4]) - ニコン初の量産カメラ。1945年8月25日に日本光学工業(現ニコン)内で戦後対策委員会が設置され、10月16日に連合国軍最高司令官総司令部から民需品生産への転換が承認され、続いて監督官庁の許可によりカメラ製造への道が開かれた[2]。1946年春に135フィルムを使用する小型高級カメラを製造する基本方針が決まり、1946年7月下旬にはこのカメラに「ニコン」という名称が決まった[2]。1947年3月には数台の試作品が完成した[2]。しかしテストをしてみると数々のトラブルが続出し、設計変更をして試作してはテストを繰り返すことになったが、この過程で現在のニコンの技術的基礎を築いた知識と経験が蓄積されることにもなった[2]。1947年12月に試作品最後のテストが完了し、ただちに本格的生産に入った[2]。当初6FTの製造指図でシリアルナンバー6091から60920までの20台が製造された。その後シリアルナンバー60921がテスト用に製造された。生産が軌道に乗るまでにも様々な問題が続出し、1948年の年間生産台数は300台にも満たなかった[2]。ライカ判は一画面に8個のパーフォレーションを使い画面サイズ24×36mmだが、このカメラは7個のパーフォレーションを使い画面サイズ24×32mm[2]で40枚撮り[2]のいわゆるニコン判/ニホン判である。この独自の画面サイズのためアメリカのスライド自動裁断機[2]で扱えずクレームがつき、少数の生産にとどまったためニコンMとともにコレクターズアイテムとしての価格がつき、非常に高額で取引されている。シャッターはライカのコピーであるがスローシャッターを一般のシャッターと同軸にして操作しやすくしてある。シャッタースピードは高速シャッターがB、1-1/20、1/30、1/40、1/60、1/100、1/200、1/500秒。これを1-1/20に合わせるとスローシャッターが有効となりT、1、1/2、1/4、1/8、1/20秒。距離計はコンタックス式のファインダー組み込みで、棒状プリズムを使う高級なものではないものの距離計ギアの位置を変更し距離計窓を隠す事故を防いでいる。距離計基線長は60 mm[2]、倍率×0.6。巻き戻しノブはコンタックスより大型化されている。スプールも当初コンタックス式の取り外し式だったが後期型は固定されている。製造台数はテスト用を含めて738台[2]で、市販されたのはシリアルナンバー60922から609759。
ニコンM(Nikon M 、1949年7月[3]または1950年3月[1][4]発売) - ニコンIでクレームがついた画面サイズの横幅を34mmまで拡大した改良機[2]。一画面を通常の8パーフォレーションに改めフィルムのコマ間の間隔については解決した。このことを示すためシリアルナンバーの前にMの文字が入っている。このMについては「L(ライカ判)」とN(ニコン判)との中間(Medium )」「L(ライカ判)」とN(ニコン判)との中間(アルファベット順のL、M、N)」の二説が知られており、両方を兼ねさせているのかも知れない。横幅についてはボディの金型とシャッターの設計上の問題から36mmまでは拡大できなかった。この画面サイズの問題は次のニコンSにも引き継がれ、シャッターを変更したニコンS2まで解決しなかった[注釈 5]。シリアルナンバーはM609760?-M6092462?、彫刻原版ミスで6と9が逆になったM90615**~M90618**番台にも存在し、製造台数は1,643台[2]。特殊なものとして最終期にシンクロ配線用カバーをビス止めし接点装備の準備を済ませた個体も存在する。
ニコンMS(Nikon MS ) - 製品自体はニコンSそのものだがシリアルナンバーの前にM型と同様のM文字が入っている。
ニコンS(Nikon S 、1950年生産開始[2]、1950年12月10日日米同時発表[2]、1951年1月発売[1]) - ニコンMにシンクロ接点の追加等の改良を加えた機種[2]。。ニコンの生産現場ではニコンIからニコンSまで同一の生産指示番号で作成されていたという逸話がある。またニコンIからニコンMまではその大半がPXでの進駐軍相手の販売だったため国内やヨーロッパにはほとんど流通せず、実質的には初の民間相手のニコンカメラとの認識がある。シリアルナンバーは609****が繰り上がって8桁の6091****となったがその後610****と捨て番が繰り上げられて7桁に戻された。ニコンIからの改良も一段落し、生産台数は距離計連動式ニコンの中ではニコンS2に次いで多いニコンMSを含めて36,746台[2]。三木淳のアイデアで巻き戻しクランクが三木淳のニコンSに取り付けられ、この機構はニコンS2に正式採用されることとなる。