ネコヤマヒゴタイ
ネコヤマヒゴタイ(猫山平江帯、学名:Saussurea modesta)は、キク科トウヒレン属の多年草[2][3]。 特徴茎は直立し、高さは30-70cmになる。茎に狭い翼があり、ふつう単純であるが、上部が分岐するときは枝は鋭角的に分枝する。根出葉は花時にも存在する。根出葉と茎の下部につく葉や根出葉の葉身は、披針形で長さ7-10cm、縁は低平な鋸歯縁、鋸歯は微突端状になる。葉身の基部はくさび形になり、葉柄は長さ3-10cmになり、葉柄の基部は茎を明瞭に抱く[2][3]。 花期は9-10月。頭状花序は茎先または枝先に少数が密集して散形状につき、頭花の径は10-13mmになり、花柄は長さ2-5mmになる。総苞は長さ9-10mm、径5-6mmになる狭筒形。総苞片は8-9列あり、縁は紫褐色をおび、総苞片間にくも毛があり、総苞外片は卵状披針形から長卵形で、先端は鋭くとがるが尾状とはならない。頭花は筒状花のみからなり、花冠の長さは9mm、色は紅紫色になる。果実は長さ3.5mmになる痩果になる。冠毛は2輪生で、落ちやすい外輪は長さ1.5-2.5mm、花後にも残る内輪は長さ8mmになる。染色体数は2n=26[2][3]。 分布と生育環境日本固有種[4]。本州の中国地方の広島県、近畿地方の兵庫県に分布し[4]、山地の乾いた草原に生育する。超塩基性岩地である蛇紋岩地を好む[3]。 名前の由来和名ネコヤマヒゴタイは、「猫山平江帯」の意で[2]、タイプ標本の採集地が広島県比婆郡小奴可村(同郡東城町を経て、現、庄原市)の猫山であることに由来する。植物学者北村四郎 (1933) による命名である[5]。 種小名(種形容語)modesta は、「適度な」「内気な」の意味[6]。 種の保全状況評価
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[7]。岐阜県-絶滅危惧I類、静岡県-絶滅危惧IB類(EN)、兵庫県-Aランク、岡山県-絶滅危惧I類、広島県-絶滅危惧I類(CR+EN)。 ギャラリー
キリガミネトウヒレンとの混同と独立本種とキリガミネトウヒレン Saussurea kirigaminensis Kitam. (1934)[8]は同一の種とする見解がある[2][9][10]。 しかし、門田裕一 (2017) は、『改訂新版 日本の野生植物 5』記載の際、本種とキリガミネトウヒレンは別の種とした。門田によると、本種は花時にも根出葉が存在し、葉の鋸歯は微突端状、葉柄の基部は茎を明瞭に抱き、花柄が長さ2-5mmになり、総苞外片の先端は鋭突頭になり、中国地方の乾いた草原に生育する。一方、キリガミネトウヒレンは花時に根出葉はなく、葉の鋸歯は粗い鋸歯縁、葉柄の基部は茎を半ば抱き、花柄はほとんどなく、総苞外片の先端は尾状に伸び、長野県霧ヶ峰とその周辺の湿地周辺に分布する[3]。 超塩基性岩地のトウヒレン属ネコヤマヒゴタイのように、超塩基性岩地に生育するトウヒレン属の種は、日本に数種ある。北から、ウリュウトウヒレン Saussurea uryuensis[11] は、北海道上川地方、宗谷地方に分布し、岩がちの草地や岩壁に生育する。2013年にヒダカトウヒレン S. kudoana を基本種とする変種から独立した種とされた。カムイトウヒレン S. kenjihorieana[12] は、北海道上川地方の幌内山地に分布し、夏緑林林内の草地に生育する2015年新種記載の種。ユウバリトウヒレン S. yubarimontana[13]は、北海道夕張岳山麓などの岩地に生育する2013年新種記載の種。ヒダカトウヒレン S. kudoana[14]は、北海道日高地方のアポイ岳とその周辺に分布し、岩がちの草地や岩壁に生育する。イナトウヒレン S. inaensis[15]は、長野県の伊那市および下伊那郡大鹿村に特産し、夏緑林の林縁や林間の草地に生育する。ワカサトウヒレン S. wakasugiana[16]は、福井県大島半島の特産で、海岸の波打ち際近い草地に生育する2004年新種記載の種[17]。オヌカトウヒレン S. ochiaianaは、岡山県新見市、広島県庄原市に分布し、蛇紋岩地の湿地に生育する2023年新種記載の種[18]。トサトウヒレン S. yoshinagae[19]は、四国の徳島県、愛媛県、高知県に分布し、山地の草地、土手、田畑の畔などに生育する。キリシマヒゴタイ S. scapose[20]は、高知県と九州の山地の草原や夏緑林の林下に生育する[17]。 脚注
参考文献
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