バーンサイドの定理![]() 数学におけるバーンサイドの定理(バーンサイドのていり、英: Burnside theorem)は、位数が素数 p , q と非負整数 a , b により と書ける有限群 G は必ず可解群になることを主張する群論の定理である。この定理は位数が pa と書ける有限群(p 群)は必ず(冪零群であるから)可解群になる、というよく知られた主張の拡張と見做せる。これより、任意の非可換な有限単純群の位数は少なくとも3個以上の素因数を持たねばならない。 バーンサイドの定理は次のフィリップ・ホールによる名高い可解群の特徴づけの特別な場合である。
歴史この定理はウィリアム・バーンサイドにより有限群の表現論を使って証明された(Burnside 1904)。いくつかの特別な場合は既にバーンサイド、ジョルダン、フロベニウスといった数学者によって証明が与えられていた。ジョン・G・トンプソンは自身のN群の理論によって表現論を使わない証明が得られると指摘し、実際に位数が奇数の場合の証明(Goldschmidt 1970)、位数が偶数の場合の証明(Bender 1972)が与えられた。Matsuyama (1973) は証明を簡単にした。 証明背理法による。 p ,q を固定する。位数がこの形で書けるような非可解群がもし存在するなら、その中で位数が最小となるものがあるから、はじめから G がそのような位数最小の群であるとしてよい。
G が自明でない正規部分群 H を持てば、位数の最小性より H と商群 G/H はともに可解群になるから、G も可解群となって矛盾する。よって G は単純群である。 G の中心 Z(G) は G の正規部分群だが、G は可換群ではあり得ないので G 自身とは一致せず、よって単位元のみになるしかない。 a または b が0だとすると、G は有限 q-群(または有限 p-群)であり、よって冪零群となり、従って可解群になって矛盾する。
シローの定理より、G には位数 pa の部分群 S が存在する。S は非自明な p-群だから、その中心 Z(S) は非自明である。そこで単位元でない がとれる。 g と共役な元の個数は共役作用についての固定部分群 Gg の指数 [G : Gg] に等しく、それは S の指数 qb を割り切る。なぜなら S は Gg の部分群だからである。 よって共役な元の個数は qd の形に書ける。さらに g は単位元でなかったから G において中心的でなく、整数 d は正である。 以下、群 G の複素数体 C 上の一般線型群における表現を考察する。 (χi)1≤i≤h を G の C 上の既約指標全体( χ1 は自明指標)とする。g は単位元 1G と共役でないから、群の指標表における直交関係より ここで χi(g) は正則行列 ρ(g) の固有値の和に等しいが、ρ(g) の最小多項式は を割り切るので、固有値はみな1の冪根である。よって χi(g) は代数的整数である。 もし、χ(g) が0にならないような全ての非自明な既約指標について χ(1G) が q で割り切れるならば となる。ところが左辺は有理整数でない有理数だから代数的整数ではなく、右辺は代数的整数の有理整数倍の和だから代数的整数であり、矛盾する。よって望んでいた条件を満たす既約指標の存在が言えた。
G 上の任意の有理整数値類関数 u に対し、群環の一般論より は有理整数環 Z 上整であり、特に g の共役類上で1、それ以外で0をとるような類関数 u を選んだときの は代数的整数である。
q と n は互いに素だから、ベズーの補題より有理整数 x , y で を満たすものが存在する。この左辺は代数的整数の有理整数倍の和だから、代数的整数になる。
複素数 ζ := χ(g)/n は代数的整数だから、そのノルム N(ζ) ( ζ の Q上の最小多項式の根全体(共役数)を掛け合わせたもの)は0でない有理整数になる。 ζ およびその共役数はいずれも1の冪根(ρ(g) の固有値)の算術平均なので、絶対値は1以下である。一方それらの積 N(ζ) は1以上だから、絶対値はちょうど1でなければならない。 特に ζ の絶対値は1であり、これは ρ(g) の固有値が全て等しいことを意味する。よって ρ(g) の対角化を考えると、 ρ(g) 自身が単位行列の複素数倍であることがわかる。
N を ρ の核とする。ρ(g) は像 Im(ρ) において中心的であるが、 g は G において中心的ではない。G/N と Im(ρ) が標準的に同型である( )ことを考えると、N は単位元以外の元を含む。ここで G は単純群だから、N は G と一致する。ところがこれは、 ρ は自明表現でないとしていた仮定と矛盾する。 以上よりバーンサイドの定理は証明された。Q.E.D. 脚注
参考文献
関連項目 |
Portal di Ensiklopedia Dunia