フォンダパリヌクス
フォンダパリヌクス(Fondaparinux)は低分子ヘパリン(LMWH)様の抗凝固薬である。血小板第4因子への親和性がほとんどないのでLMWHよりもヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の危険が少ないが、腎排泄型の薬剤であるので腎不全の患者には使えない。ヘパリンと異なり、効果は第Xa因子選択的である[1]。直接第Xa因子阻害薬とは異なり、アンチトロンビンIIIを介して間接的に第Xa因子を阻害する。商品名アリクストラ。 効能・効果添付文書に記載されている効能・効果は、1.5mg・2.5mg製剤が「静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、下肢整形外科手術施行患者または腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」[2]、5mg・7.5mg製剤が「急性肺血栓塞栓症および急性深部静脈血栓症の治療」[3]である。 フォンダパリヌクスはエノキサパリン等と同じく9日以内の虚血性イベントを抑制し、加えてその後の大出血[注 1]ならびに塞栓症罹患率および死亡率を低減させる[4]。当初、ストレプトキナーゼとの併用について研究されていた[5]。 臨床的には、整形外科手術等を受けた患者の深部静脈血栓症の予防または治療、あるいは肺塞栓症の治療に用いられる。 血小板第4因子への親和性がほとんどなく、LMWHでヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を起こした患者に使用できた例がある。 用法・用量フォンダパリヌクスは1日1回皮下投与で使用する。腎機能の低下により全身クリアランスが低下し、血中濃度が増加する。 静脈血栓塞栓症の発症抑制に用いる場合には1回2.5mgを基本とし、クレアチニンクリアランス20〜30mL/minの患者または出血リスクの高い患者に対しては1回1.5mgを用いる。 急性血栓症の治療に用いる場合には、患者の体重に応じて用量を調節する必要がある。体重50kg未満:5mg、体重50以上・100kg以下:7.5mg、体重100kg超:10mgである。ただし、日本での臨床試験で10mgを投与した例はなく、体重40kg未満の患者に投与した例はほとんどない。 薬物動態フォンダパリヌクスを1日1回反復皮下投与すると、3日目には定常状態に達し[6]:18、用量1.5mg・2.5mgの場合の血中半減期(7日目)は約18.1時間であった。CmaxおよびAUC0-24は用量0.75mg〜3.0mgの範囲で線形であったが、それ以上の用量については資料に言及されていない。Cmaxが体重による影響を受けるとされているが明確な資料はない。ただし、体重別に用量を調節(体重50kg未満:5mg、体重50以上・100kg以下:7.5mg、体重100kg超:10mg)した臨床試験では、定常状態での投与後1〜3時間後の血中濃度は平均で 体重50kg未満群:1.00〜1.20mg/L、体重50以上・100kg以下群:1.21〜1.31mg/L、体重100kg超群:1.14〜1.15mg/L と概ね一定であった[6]:19。 腎機能(クレアチニンクリアランス:CCr)別にAUC0-24を比較すると、腎機能正常(90<CCr≦140):7.6mg・hr/L、軽度低下(60<CCr≦90):11.5mg・hr/L、中等度低下(30<CCr≦60):18.3mg・hr/L、重度低下(10≦CCr≦30):43.8mg・hr/L であった[6]:20。 禁忌下記の患者には、フォンダパリヌクスは禁忌である。
副作用添付文書に記載されている重大な副作用は、出血、肝機能障害、黄疸、ショック、アナフィラキシーである。血小板の減少・増加が起こることがある。 注射針カバーに天然ゴムラテックスを含むので、アレルギー反応を起こす事がある。 構造および作用機序
フォンダパリヌクスは合成五糖類であり、第Xa因子を阻害する。分子末端のO-メチル基を除き、加水分解で生成される5つの単糖の配列は、グリコサミノグリカンポリマー(ヘパリンやヘパラン硫酸(HS))を加水分解して得られる単糖の配列と同一である。この5つの糖配列は、抗凝固因子アンチトロンビンIII(AT III)に対する高親和性に必須の配列であると考えられる。ヘパリンやHSがAT IIIに結合すると、AT IIIの抗凝固活性が1,000倍になる。ヘパリンと異なり、フォンダパリヌクスはトロンビン活性を阻害しない。 化学式
上記の5つの糖がD-GlcNS6S-α-(1,4)-D-GlcA-β-(1,4)-D-GlcNS3,6S-α-(1,4)-L-IdoA2S-α-(1,4)-D-GlcNS6S-OMeの順に結合している。 ![]() 注
出典
外部リンク |
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