ヘンゼルとグレーテル
![]() 「ヘンゼルとグレーテル」(独: Hänsel und Gretel, KHM 15) は、グリム童話に収録されている作品。 ![]() 長く続いた飢饉で困った親が口減らしのために子捨てをする話。中世ヨーロッパの大飢饉(1315年から1317年の大飢饉(en))の記憶を伝える話という見方がある[1]。こうした飢饉の時代は16世紀末のジャガイモの耕作の始まりまで続いていた。 あらすじある森のそばに、貧しい木こりの夫婦とその子であるヘンゼルとグレーテルの兄妹が暮らしていた。その日のパンに事欠くほど貧しかった一家は、あるときからまったくパンが手に入らなくなり、どうしようもなくなった。そんな夜、木こりの妻は夫に子供を森の中に捨ててくるように提案する。木こりはためらうが、妻に押し切られて承知してしまう。 両親の会話を漏れ聞き、妹のグレーテルは泣き始めるが、兄のヘンゼルは自分がなんとかするからと妹をなだめ、ひとり外に出て月の光を受けて光る白い石をポケットいっぱいに集める。 翌日、両親に連れられて兄妹は森の中へ入っていくが、帰りの道しるべとしてヘンゼルは道々白い石を落としながら歩く。森の真ん中で両親はあとで迎えに来ると言い残して去って行き、そのまま夜となった。泣き出すグレーテルの手を引いて、白い石を辿りながら夜通し森を歩き、朝になってふたりは家にたどり着く。 木こりは子供たちの帰還を喜ぶが、妻は表面では喜んだものの心中では怒っていた。パンが底をつきかけた頃、妻は木こりにふたりが家に戻って来られないほどの森の奥まで連れて行こうと持ちかけ、木こりも一度やってしまったことだからとやむなく承諾する。両親の会話を聞いていたヘンゼルはまた小石を拾いに行こうとするが、戸口が閉められていて拾うことができなかった。 翌朝、両親に連れられて兄妹は森に入る。ヘンゼルは小石の代わりに弁当として与えられたパン(クリスプ・ブレッドなどのハードブレッド)をポケットの中で粉々に砕き、道しるべとして道々落として歩く。そのまま二人は生まれてから来たこともないほど森の奥に連れて行かれた。お母さんたちは夜になったら迎えに来ると言い残して去って行くが、昼が過ぎ、夜になっても誰も現れなかった。 月が昇り、ヘンゼルは目印となるはずのパンのかけらを探すが、パンのかけらは森の何千もの鳥がついばんでしまったため、見つけることができなかった。ヘンゼルとグレーテルは野いちごで飢えをしのぎながら3日間森の中をさまよう。 3日目の昼頃、森の中で屋根がケーキ、壁がパン、窓が砂糖で作られた小さな家を見つける。二人が夢中でその家を食べていると、中から老婆が現れる。老婆は驚くふたりの手を取って家の中に誘い、食事やお菓子、ベッドを提供する。しかし、この老婆の正体は子供をおびき寄せ、殺して食べる悪い魔女だった。 翌朝、ふたりが目覚める前にベッドに現れた魔女は、ヘンゼルを掴むと狭い家畜小屋に押し込んでグレーテルを大声で起こし、「おまえの兄さんを太らせてから食うから、太らせるための食事を作れ」と命じる。グレーテルは泣きながらも魔女の言うことを聞くしかなかった。それから毎日のようにヘンゼルは上等の食事を与えられる。目の悪い魔女はヘンゼルの指を触って太り具合を確かめようとするが、ヘンゼルは指の代わりに食事の残りの骨を差し出したため、魔女はヘンゼルが一向に太らないのを不思議に思い、ヘンゼルを食べるのを先延ばしにする。 しかし、4週間も経つと魔女はついに我慢ができなくなり、ヘンゼルが太っていようといまいと、明日殺して煮て食うから大鍋の準備をしろとグレーテルに命じる。翌朝、グレーテルに大鍋を火にかけ湯を沸かすように言いつけ、魔女はパンを焼くかまどを準備しはじめる。グレーテルは兄を煮るための鍋を沸かすに至った自分の運命を嘆き、無言でその時を待つ。 そのとき、魔女がグレーテルを呼び、目の悪い自分の代わりにパン窯に入ってパンの焼け具合を確かめろと言いつける。内心、魔女は中に入ったグレーテルを閉じ込めて、焼いて食べるつもりだった。ところが、グレーテルは魔女の意図を察し、窯に入るやり方が分からないふりをして、魔女に手本を見せるように促す。魔女が窯に入った途端、グレーテルは魔女を押し込み外からかんぬきを掛ける。窯の中から魔女のうめき声がし始めたところでグレーテルは台所から逃げ出したので、魔女はそのまま焼け死んでしまう。 グレーテルはヘンゼルを助け出し、ふたりは喜び合う。魔女の家には多くの財宝があり、ポケットにいっぱいの宝石や真珠を詰めたふたりは家路につく。家では妻が病で亡くなってしまい、木こりは子供達を捨てたことをずっと悔やんでいた。帰ってきたふたりの姿を見て木こりは喜び、子供たちが持ち帰った財宝で金持ちになる。 登場人物
成立「ヘンゼルとグレーテル」は1811年ごろ、当時カッセルにあったグリム兄弟の住居の近所の薬局のヴィルト家姉妹から採集した、ヘッセン州に伝わる民話の中の一篇である[2]。1812年に出版した『子供と家庭のメルヒェン集』初版に収録され、1857年の決定版とも呼ばれる第7版に至るまでに、さまざまな付け加えや書き換えが行われている[3]。 たとえば、初版では実の母親だったものが、第4版からは継母に改変され、台詞もより冷酷なものへと変更されており、初版では共犯関係にある父親が第7版ではその責任の軽減を図る描写が加えられ、母親だけが悪者扱いされている。母親や女性を悪者にするのは昔話においてよく見られる古い価値観である。また、童話を意識した付け加えの例として、第7版では魔女の身体描写がより詳細になったことが挙げられる。 他にも、以下のような改編が行われている。
エピソード改変例ドイツ語から他の言語に翻訳する場合や、主に子供向けの本では、一部のエピソードが残酷性などを理由に変更されている場合がある。以下ではその例を述べる。
また
などの話もあるが、これは、「一部のエピソードが残酷性などを理由に変更されている」という理由からは外れるだろう(詳しくは魔女の項を参照)。甘口が徹底しているのは後述のオペラ版で、母親は単に2人に苺摘みに森へ行くよう命じただけで、後から夫に魔女の話を聞き、慌てて2人で行方を捜すという改変になっている。 名前「ヘンゼル」(Hänsel) は男性の洗礼名ヨハネス (Johannes) の短縮形ハンス (Hans) に、「グレーテル」(Gretel) は女性の洗礼名マルガレーテ (Margarete) の短縮形グレーテ (Grete) に、それぞれ縮小辞 -el を添えて「ハンスちゃん」「グレーテちゃん」といった響きを持たせた。 地方色のある子供向けの呼び名である。他の地方での子供の呼び名であるヘンスヒェン(Hänschen、唱歌「ちょうちょう」の原曲に現れる)やグレートヒェン(Gretchen、ゲーテ「ファウスト」のヒロインの名で知られる)に相当し、大人になればヒェン (-chen) が取れて単にハンス (Hans)、グレーテ (Grete) と呼ばれる。 この童話を原作とする作品舞台作品
映画作品
ドラマ作品
アニメ作品グリム名作劇場1987年10月28日に朝日放送制作、テレビ朝日系列の『グリム名作劇場』枠でテレビアニメ化された。 サンリオ世界名作映画館リトルツインスターズを主役にした『キキとララのヘンゼルとグレーテル』が1993年7月にOVAとして制作された。キキがヘンゼル、ララがグレーテルとなっている。 サンリオ世界名作劇場『ハローキティのヘンゼルとグレーテル』としてハローキティがグレーテルでダニエルがヘンゼル、ジョージがヘンゼルとグレーテルの父となっている。原作に沿ってはいるものの、継母が最終的に存命しているなど一部異なる。 この童話をモチーフとして用いているもの
脚注
関連項目
外部リンク
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