メリダとおそろしの森
『メリダとおそろしの森』(メリダとおそろしのもり、原題:Brave)は、2012年に公開されたアメリカ合衆国のコンピュータアニメーション3D映画。 10世紀頃のスコットランドを舞台とする。ピクサー映画初のフェアリーテールであり、また初の女性が主人公且つ初のディズニープリンセスがヒロインの作品でもある[3]。これまでのピクサー作品よりも暗く大人向けの作品となる。同時上映は『月と少年』。 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズのオープニングに最後に登場するディズニークレジットのロゴから「Walt」と「pictures」の表記が消え「disney」のみと変更された。 第85回アカデミー賞では長編アニメ映画賞を受賞した。音声にドルビーアトモスを採用した初の作品でもある。 また、本作のエンディングでは、2011年に死去したスティーブ・ジョブスへ、以下の追悼文が掲げられている。
あらすじ舞台は千年前のイギリス・スコットランド。ダンブロッホ王国の王女メリダは幼い頃から活発な性格で、成長し少女となった今は自由を愛する弓の名手である。しかし、メリダの母エリノア王妃は、王位継承者であるメリダを立派な王女に育てるため、堅苦しい生活を好まないメリダに対して日頃から厳しく接していた。 王国の伝統として、平和を維持するためには国の有力な3人の領主との同盟関係が重要とされてきた。エリノア王妃は3人の領主とその息子たちを城に招き、最も優れた武勇を示した息子をメリダの夫にしようとする。しかし、強引に決められた結婚を嫌がったメリダは競技会に乱入し、自分自身が優勝してしまう。 エリノア王妃は激怒し、メリダを自室へと連れて行くと2人の口論が始まる。メリダは王女としての在り方を押し付けるばかりの母に耐えかね、エリノア王妃が手作りしていた大切なタペストリーを剣で一裂きする。対するエリノア王妃はメリダの弓を奪い取り暖炉に放り込んでしまう。母の所業にメリダは哀しみ、愛馬アンガスに乗って城を飛び出し森を駆けていく。メリダが不思議な「鬼火」に導かれ森を進んでいくと、森の奥で店を構える森の魔女と出会う。メリダは母の考えを変える魔法を注文するが、魔女の用意した魔法のケーキを一口食べたエリノア王妃は、大きな熊へと姿を変えてしまう。 メリダの父ファーガス王は凶暴な熊モルデューに左足を食い千切られたため、全ての熊を憎んでいた。熊に姿を変えたエリノア王妃は言葉を話すことができず、ファーガス王に見つかれば殺されてしまう。メリダは弟である三つ子に協力してもらい、密かに母を連れて城を脱出すると、魔法を解く手がかりを求めて森へ入っていく。メリダが魔女の店に辿り着くと伝言が残されており、「二度目の日の出を迎えると魔法が永遠に解けなくなる」という。魔法を解く手掛かりもあったが、内容が抽象的で具体的に何をすればいいのか分からなかった。 翌日、朝食を用意するメリダが川で鮭を射ったことを切っ掛けに、2人は夢中で川の鮭を取り始める。しかし、日が暮れる頃になるとエリノア王妃はまるで本物の熊のように振舞い始める。メリダの呼びかけでエリノア王妃の意識が戻ると、2人は「鬼火」に導かれるまま荒れ果てた大昔の城跡に辿り着く。城跡の様子から、ここは昔話で伝えられる古代王国の跡地であり、かつて母と同じように熊に変わってしまった王子がいることにメリダが気付くと、目の前にモルデューが現れて彼女を襲い始める。母と協力して逃げ延びたメリダは、魔法を解く手掛かりと城跡の様子から、剣で裂いてしまったタペストリーを修復すれば魔法が解けると考えた。 夜を迎え、2人が城に潜入すると、城内ではファーガス王と3人の領主達が誰をメリダの夫にするか争っており、同盟は崩壊寸前に陥っている。メリダは彼らの前に出て注目を集めると、母が自室へ向かう時間を稼ぐために古代王国の昔話を始めた。メリダの話は次第にダンブロッホ王国が誕生した経緯に移り、絆の尊さと大切さを自他共に確認するに至る。成長したメリダの姿に心打たれたエリノア王妃は、考えが改まったことをジェスチャーでメリダに伝えると、伝統よりも自分の心に従って生き方を決めることが大事だと、メリダを通してその場にいる全員に語りかけた。 皆が円満解決を祝う宴に向かった隙をついて2人はエリノア王妃の自室に入ると、またしてもエリノア王妃の意識が熊になってしまっただけでなく、そこにファーガス王までやってきて戦いだしてしまう。程なくしてエリノア王妃の意識は戻るが、戦いの中でメリダを傷付けてしまったことに動揺し、部屋から駆け出していく。城の人間を総動員してエリノア王妃が追いたてられる中、部屋に閉じ込められたメリダは三つ子の協力で脱出に成功すると、彼らと共にアンガスに跨ってタペストリーを修復しながら母の元へと駆けつける。ストーンサークルで捕獲されていたエリノア王妃は間一髪のところで助かるが、そこにメリダを追ってきたモルデューが現れる。メリダの危機にエリノア王妃は捕縛を力ずくで解き、モルデューに立ち向かっていく。戦いの末、モルデューは直立巨石に潰されて息絶え、彼の魂はメリダとエリノア王妃に頭を下げると「鬼火」となって去っていく。 日の出が迫る中、メリダは母の体に修復したタペストリーを掛けるが、彼女が元に戻る様子はない。しかし、メリダが涙を流して母を抱きしめていると、朝日に照らされた母の体は人間に戻っていた。 登場人物ダンブロッホ王国
王国の氏族
その他
キャスト
日本語版制作スタッフ
製作旧題は『The Bear and the Bow』。 ブレンダ・チャップマンは本作をハンス・クリスチャン・アンデルセンやグリム兄弟のような童話と考えている[4]。チャップマンはピクサー初の女性の監督となる予定であったが、2010年10月に降板が発表され、マーク・アンドリュースに監督を交代した[5]。降板の理由は明らかにされていないが、チャップマンは製作上の対立からアンドリュースとジョン・ラセターにより解雇されたものとみられている[6]。チャップマンは共同監督の名義でクレジットには残されたため、ピクサー初の女性監督は達成された。チャップマン降板に合わせて、ピクサーを女性差別主義的と非難する声がインターネット上で挙がった[5]。チャップマンは後に、「(当初の自分の)ビジョンは映画に残された」「映画自体は誇りに思っている」と述べている[7]。アンドリュースは「(チャップマン版は)映画の骨に問題はなかったが、枝葉の部分が機能していなかった」とし、ストーリーをややヘヴィーに書き換え魔法の要素をいくつか削除した[8][9]。 メリダ役には当初リース・ウィザースプーンが充てられていた[3]。 ドルビーラボラトリーズが2012年4月に新たに発表した「ドルビーアトモス」を初めて導入した作品である[10]。 興行成績全世界で興行収入5億ドルを超える大ヒット作となったものの、日本では最終興行収入9億円にも届かないという対照的な興行成績をみせた[11][12]。 本作の公開以前に日本で公開されたピクサー映画はいずれも15億円を超す興行成績を残しているが、本作のみ9億円にも届いていなかった[12](その後『2分の1の魔法』がこれを下回る)。 トリビア
ピクサー作品でおなじみであるトリビアの数々は、本作ではすべておばあさんの木彫り店に登場する。
脚注
外部リンク |
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