弦 の長さを半分にする(1/2倍)か、張力を4倍にするか、長さあたりの質量を1/4にすると、音の高さは1オクターブ 高くなる(2倍)。弦の張力が5キログラム重 だとすれば、1オクターブ上の音を出すには張力を20キログラム重にしなければならない。
弦の一端を点Aに固定し、重量 W を吊り下げることで張力を加えたもの。弦は固定コマ Bおよび可動コマCの上にかけられている。Dは自由に回転する滑車 である。これらの要素により、張力や弦の長さと音高に関するメルセンヌの法則を実演することができる[ 1] 。
メルセンヌの法則 (メルセンヌのほうそく、英 : Mersenne's laws )とは、張った弦 もしくはモノコード を鳴らしたときの振動数 に関する法則で、楽器 の調律 や製造に役立っている。フランスの数学者 で音楽理論家 でもあるマラン・メルセンヌ による1637年の著作 Traité de l'harmonie universelle で最初に提唱された[ 2] 。
この法則は、弦が出す音の高さ(周波数 )と、弦の長さや質量 、張力 との間の関係を与える。ピアノ やハープ のような弦楽器 の構造や機能はメルセンヌの法則に支配されており、弦全体に正しい音高を持たせるには、楽器は相応の張力 に耐えられなければならない。低い音を発する弦は太く、したがって単位長さ当たりの質量 は大きい。張力は一般に小さい。高音側の弦は通常細く、張力は大きいが、長さは短くすることもできる。
メルセンヌはこれらの関係を自身で発見したわけではない[ 3] 。コーエン(2013)によると、「この結果はガリレオ が得ていたものと本質的に変わらないが、メルセンヌの法則と呼ばれるには十分な理由がある」。すなわち、メルセンヌが実験を通じて理論が真実であることを証明した一方、ガリレオは証明が不可能だと考えていた[ 4] 。メルセンヌの理論は正しかったが、測定精度はそれほど良くなかった。ジョゼフ・ソヴァール (1653-1716) はうなり を利用した測定でより良い結果を得た[ 5] 。
定式化
弦の基本周波数 f 0 は以下の特徴を持つ。
a) 弦の長さ L に反比例する(ピタゴラスの法則)[ 1]
f
0
∝
1
L
{\displaystyle f_{0}\propto {\frac {1}{L}}}
(式26)
f
0
∝
F
{\displaystyle f_{0}\propto {\sqrt {F}}}
(式27)
c) 弦の単位長さ当たりの質量 μ の平方根に反比例する
f
0
∝
1
μ
{\displaystyle f_{0}\propto {\frac {1}{\sqrt {\mu }}}}
(式28)
したがってたとえば、弦の性質がほかの点で変化しないとすれば、音を1オクターブ高くする(振動数2倍)には、長さをその係数で割る (1/2倍) か、張力に係数の自乗をかける (4倍) か、単位長さあたりの質量を係数の自乗で割る (1/4倍) といい。
オクターブ
長さ
張力
質量
1
1
1
1
2
1/2 = 0.5
2² = 4
1/2² = 0.25
3
1/3 = 0.33
3² = 9
1/3² = 0.11
4
1/4 = 0.25
4² = 16
1/4² = 0.0625
8
1/8 = 0.125
8² = 64
1/8² = 0.015625
これらの法則はメルセンヌの論文の式22[ 6]
f
0
=
ν
λ
=
1
2
L
F
μ
{\displaystyle f_{0}={\frac {\nu }{\lambda }}={\frac {1}{2L}}{\sqrt {\frac {F}{\mu }}}}
から導かれる。ここで ν は速度、λ は波長である。
笛 や管楽器 に対しては、同時期に同じような法則は発展しなかった。メルセンヌの法則が発展したのは、管楽器の音高が「振動」ではなく縦波によって決まるという考え方が確立するより早かったためである[ 4] 。
関連項目
脚注
^ a b Jeans, James Hopwood (1937/1968). Science & Music , p.62-4. Dover.
^ Mersenne, Marin (1637). Traité de l'harmonie universelle , [要ページ番号 ] . via the Bavarian State Library . Cited in "Mersenne's Laws ", Wolfram.com .
^ Gozza, Paolo; ed. (2013). Number to Sound: The Musical Way to the Scientific Revolution , p.279. Springer.
^ a b Cohen, H.F. (2013). Quantifying Music: The Science of Music at the First Stage of Scientific Revolution 1580–1650 , p.101. Springer.
^ Beyer, Robert Thomas (1999). Sounds of Our Times: Two Hundred Years of Acoustics . Springer. p.10.
^ Steinhaus, Hugo (1999). Mathematical Snapshots , [要ページ番号 ] . Dover,