ヤマアジサイ (山紫陽花[ 5] 、学名 : Hydrangea serrata var. serrata )は、アジサイ科 [ 注 1] アジサイ属 の1種である。山中で沢によく見られることから、サワアジサイ とも呼ばれる[ 6] 。
ただし、独立した種として認めず、アジサイ Hydrangea macrophylla (種としてのアジサイ、ガクアジサイ)の亜種 Hydrangea macrophylla subsp. serrata などとする説もある[ 7] 。
分布
本州 では福島県 以南の主に太平洋 側、また四国 、九州 などの山地に分布する[ 5] [ 8] 。千島列島 、台湾 、中国 南部の山地にもみられる[ 9] 。沢沿いの湿り気の多いところに生える[ 5] 。
特徴
落葉広葉樹の低木で、高さは1メートル (m)ほどになる[ 5] [ 8] 。枝は細く[ 8] 、ガクアジサイ (学名: Hydrangea macrophylla f. normalis )と比べて小ぶりで繊細な印象を受け[ 5] 、花の色が多様性に富む[ 6] 。樹皮 は灰褐色で薄くはがれる[ 5] 。葉質は薄く光沢がなく、小さく(6.5–13センチ[ 8] )、長楕円形・楕円形・円形など形はさまざまである[ 6] 。
花序は直径7 – 18センチメートル (cm) 、装飾花は直径1.7 – 3 cm[ 8] 。冬でも枝先の果序の装飾花がよく残る[ 5] 。
冬芽 は、枝先の頂芽 は裸芽 で大きく、はじめは芽鱗があるがすぐに落ちる[ 5] 。側芽 は枝に対生し小さく、芽鱗が2枚つく[ 5] 。葉痕は心形や三角形で、維管束 痕が3個つく[ 5] 。
利用
葉にフィロズルチン の配糖体を含むものがあり、甘茶 として利用される[ 8] [ 10] 。「甘茶(アマチャ)」は分類上特定の品種を指す名称ではない[ 11] 。
亜種等
ヤマアジサイは分布域が広く、いくつかの亜種がある。なお、ヤマアジサイを種として認めない場合、これらはアジサイ Hydrangea macrophylla の亜種となる。
アマギアマチャ
亜種 H. serrata subsp. angustata (Franch. & Savatier ) Kitam. 。富士山 ・天城山 周辺[ 12] 、静岡市 梅ヶ島、箱根 [ 13] に自生する。花はすべて白く[ 12] 、葉はヤマアジサイより細い[ 13] 。生の葉は甘苦い[ 13] 。
エゾアジサイ
亜種 H. serrata subsp. yezoensis (Koidz. ) Kitam. 。ただし分子系統 によると、ヤマアジサイよりアジサイ Hydrangea macrophylla に近縁である[ 14] 。東北地方 ・北陸地方 ・北海道 、および朝鮮南部 に分布する[ 8] [ 15] 。高さ1–1.5メートルで[ 8] 、北海道のものは本州のものより大きい[ 15] 。花序は直径10–17センチ[ 8] 、普通青色や青紫色だが白・ピンク・ほとんど赤色のものもある[ 10] [ 15] 。葉はヤマアジサイよりも大きく(10–17センチ)、ふちの鋸刃も鋭い[ 8] 。花期は5月中旬から6月中旬である[ 16] 。
シチダンカ
栽培品種 H. serrata 'Prolifera’ 。萼が星型で重なっている[ 17] 。葉は卵形で、エゾアジサイに近い[ 13] 。
シチダンカは江戸時代から知られ、シーボルト が『フローラ・ヤポニカ』で報告していたが、文献に伝わるのみで発見例はなく絶滅した「幻のアジサイ」とされていた。1959年 に六甲山 でシチダンカと考えられる品種が発見され[ 17] [ 18] 、その品種は H. serrata ‘Prolifera’ とされ、現在では「七段花」の名称で栽培、商品化もなされている。ただし、その後1993年 に滋賀県 で花型がシチダンカにより近い[ 19] 新品種が発見され、その品種は「東雲(しののめ)」と称して栽培、商品化がなされている。
ベニガク
変種 H. serrata f. rosalba (Van Houtte ) Ohwi 。南日本 の山地にみられる[ 12] 。江戸時代 から栽培されている品種である[ 20] 。装飾花は白色だが日光に当たると赤みを帯びる[ 20] 。葉は厚く楕円形で[ 13] 、秋に紅葉する[ 12] 。
脚注
注釈
^ 最新の植物分類体系であるAPG体系 や、それ以前のクロンキスト体系 ではアジサイ科 (Hydrangeaceae)に分類されるが、古い新エングラー体系 ではユキノシタ科 (Saxifragaceae)に分類されている[ 1] 。
出典
参考文献
関連項目
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