ヤマコウモリ

ヤマコウモリ
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 NT.svg
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分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 翼手目 Chiroptera
: ヒナコウモリ科 Vespertilionidae
: ヤマコウモリ属 Nyctalus
: ヤマコウモリ N. aviator
学名
Nyctalus aviator
Thomas, 1911[2]
和名
ヤマコウモリ[3]
英名
Birdlike noctule[4][5]
Japanese giant noctule[6]
Japanese large noctule[1]

ヤマコウモリ(山蝙蝠、Nyctalus aviator)は、翼手目ヒナコウモリ科に分類されるコウモリである。和名はニホンヤマコウモリともする[7]

分布

日本列島北海道本州四国九州対馬沖縄をはじめ、朝鮮半島台湾中国東部の丘陵地山地森林に分布しているが、あまり深い山林では目撃例が少ない。

模式産地は東京都[2]。近年ではおもに本州の中部地方以北で記録されており、近畿地方以西での記録は稀となっている[6]

形態

日本国内に生息しているヒナコウモリ科の中では最も大型の部類に入り、前足を広げたときの長さ(前腕長)は58mmから65mm、頭胴長は89mmから113mm、尾長は51mmから67mmほどになる。背面の体毛は、つやのある赤褐色をしており、飛膜は暗褐色。を広げると40cmを超えることもある。翼の形は細長く、長距離を飛ぶことができる。体重は26gから61gになる。視覚にはあまり頼らないせいか、目は小さい。

分類

以前はヨーロッパヤマコウモリ英語版の亜種ニホンヤマコウモリNyctalus lasiopterus aviatorとすることもあった[8][9][10]。日本ではコヤマコウモリが同所的に分布するが、前腕長や頭骨の大きさで区別できる[5][11]

生態

夜行性。夕方から夜間に活動を行う。昼間はハルニレミズナラカエデケヤキなどの樹洞(いわゆる木のうろ)を住処としている。昼間に大きな木のうろや裂け目などでヤマコウモリを見つけることができることもある。特に神社などの樹齢の長い大木に潜んでいることが多い。

他のコウモリ類と同様に超音波を出すが、周波数が他のコウモリ類より低く、人間の可聴音域にあるため、人によってはその音を聞くことができる。音は「キンキン」や「カンカン」といった一定のリズムであることが多い。

日が沈みはじめると住処を出て、採餌をおこなう。とらえるのは主に飛翔するカゲロウなどの昆虫類で、一日に体重の約半分の量を捕食する。昆虫類が少なくなる冬の間は冬眠する。冬眠時は樹洞で大きな集団を形成する。

コウモリでは珍しく、一度の出産で2子を産むことが多い。秋に交尾するが、冬眠後の春に排卵・受精し、初夏に出産すると考えられている。出産と子育ては雌のつくる集団で行われる。このとき雄は少数の群れに分散し、子育てには参加しない。

人間との関わり

住処となる樹洞が森林伐採などで減少し、個体数は大きく減少傾向にある。夜間照明の増加の影響も危惧されており、日本の発見報告も減少しつつある。ヤマコウモリの減少を食い止めるため、原生林の保全や樹齢の高い大木の保護などが求められている。

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト[6]

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出典

  1. ^ a b Fukui, D., Sano, A. & Kruskop, S.V. 2019. Nyctalus aviator. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T14921A22016483. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-3.RLTS.T14921A22016483.en. Accessed on 09 June 2025.
  2. ^ a b Oldfield Thomas, 1911. “Two new Eastern bats.” Annals and Magazine of Natural History, Series 8, 8: 378-380.
  3. ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  4. ^ Nancy B. Simmons, “Order Chiroptera,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 312-529.
  5. ^ a b 福井大「ヤマコウモリ」、コウモリの会 編『識別図鑑 日本のコウモリ』佐野明・福井大 監修、文一総合出版、2023年、80-83頁。
  6. ^ a b c 前田喜四雄ヤマコウモリ」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-1 哺乳類』ぎょうせい、2014年、64-65頁。
  7. ^ 吉行瑞子・木下あけみ「川崎市内で発見されたニホンヤマコウモリの冬眠集団」『神奈川自然誌資料』第7号、神奈川県立生命の星・地球博物館、1986年、43-48頁。
  8. ^ 前田喜四雄「日本の哺乳類(II) 翼手目 ヤマコウモリ属」『哺乳類科学』第13巻21号、日本哺乳類学会、1973年、1-28頁。
  9. ^ 前田喜四雄「日本産翼手目(コウモリ類)の分類レビューと解説」『哺乳類科学』第36巻 1号、日本哺乳類学会、1996年、1-23頁。
  10. ^ 前田喜四雄「日本産翼手目(コウモリ類)の和名再検討」『哺乳類科学』第36巻 2号、日本哺乳類学会、1997年、237-256頁。
  11. ^ 前田喜四雄「日本産翼手目(コウモリ類)の分類検索表」『哺乳類科学』第23巻 1号、日本哺乳類学会、1983年、11-20頁。

参考文献

  • コウモリの会編 『コウモリ識別ハンドブック』 文一総合出版、2005年、P40 ISBN 4-8299-0015-6

外部リンク

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