リュールセンTNC-45型高速戦闘艇(英語: Lürssen 'TNC-45' type fast attack craft)は、西ドイツのリュールセン (Lürssen) 社によって開発された高速戦闘艇。またほぼ同型のFPB-44、45についても本項で扱う。
来歴
1875年の創業以来、リュールセン社の高速艇には定評があり、第一次世界大戦当時には魚雷艇(LMボーテ)、また戦間期にはSボートを世に送り出した。第二次世界大戦後にも、ドイツ再軍備とともに高速戦闘艇の分野に再参入し、連邦軍(西ドイツ海軍)の高速戦闘艇のほとんどを手がけていた。その一つが戦後に新規設計された140型(ヤグアル級)だったが、この艇に着目したイスラエル海軍は、これを発展させたサール型の設計を依頼し、自国で開発したガブリエル艦対艦ミサイルと組み合わせて、ミサイル艇として運用していた。
イスラエルからの発注を受ける一方で、リュールセン社自身もミサイル艇の開発を進めており、これによって開発された艇のひとつが本型である。1967年10月のエイラート事件を受けて、西側諸国でもミサイル艇が注目され、本型にも発注が相次ぐようになった。まず1970年、シンガポールおよびアルゼンチンによって発注された。1973年には、タイがシンガポール艇の準同型艇を、またマレーシアも低速の砲艇バージョンを発注した。その後、1970年代後半にはペルシア湾岸諸国の発注が相次いだ。アラブ首長国連邦(UAE)は1977年、クウェートも改良型を1980年に発注した。バーレーンも、1979年および1985年に2隻ずつを発注した。
設計
船体設計は基本的に同様で、全長44.9メートル、幅7メートルである。主機は、マイバッハMD 870シリーズ、またこれを改番したMTU 16V538ディーゼルエンジン4基で4軸のスクリュープロペラを駆動する方式が基本とされた。ただしマレーシア艇では3基3軸方式とされている。
主兵装となる艦対艦ミサイルとして、シンガポール艇とタイ艇ではガブリエルを採用したが、シンガポール艇では、1985年から1992年にかけてハープーンに換装した。UAE・バーレーン・クウェートではエグゾセを搭載しており、特にUAE艇は、エグゾセMM40を搭載して艦隊配備された初の艦艇となった。アルゼンチン艇はミサイルを搭載せず、長魚雷発射管2基(SST-4魚雷)を主兵装とする魚雷艇とされていたが、「イントレピダ」では1998年に、また「インドミタ」でも2009年よりエグゾセを搭載した。またマレーシア艇は対艦兵器をもたず、砲艇として運用されている。
艦砲は、東南アジア諸国(シンガポール・タイ・マレーシア)ではボフォース社の70口径57mm単装速射砲Mk.1を搭載した。一方、アルゼンチンおよびペルシア湾岸諸国(UAE・バーレーン・クウェート)では、オート・メラーラ社の62口径76mm単装速射砲が採用された。
同型艦一覧
運用国
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#
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艦名
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進水
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就役
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退役
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アルゼンチン海軍 (イントレピダ級(スペイン語版、英語版))
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P-85
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イントレピダ ARA Intrépida
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1973年 12月2日
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1974年 7月20日
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就役中
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P-86
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インドミタ ARA Indómita
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1974年 4月8日
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1974年 12月
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エクアドル海軍 (キト級)
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LM21
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キト BAE Quito
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n/a
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n/a
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LM23
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グアヤキル BAE Guayaquil
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LM24
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クエンカ BAE Cuenca
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バーレーン海軍 (アフマド・エル・ファテハ級)
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20
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アハマド・アル・ファテフ RBNS Ahmad El Fateh
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n/a
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1984年 2月5日
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21
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アル・ジェベリ RBNS Al Jabery
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1984年5月
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22
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アブドゥル・ラフマーン・アル・ファデル RBNS Abdul Rahman Al Fadel
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1986年 1月5日
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23
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アル・タウィーラ RBNS Al Taweelah
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1989年
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クウェート海軍 (アル・ブーム級(チェコ語版))
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K 453 → P 4505
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ジャルブート Jalboot →アル・サムブーク Al Sanbouk
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1982年 5月
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1984年 4月26日
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K 451 → P 4501
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ワルギーヤ Wergiya →アル・ブーム Al Boom
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1982年 3月
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イラク軍のクウェート侵攻後、 いずれも大破または撃沈
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K 452 → P 4503
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マシュワー Mashuwah →アル・ベティール Al Betteel
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1982年 4月
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K 455 → P 4507 |
イスティクラル Istiqlal →アル・サアディー Al Saadi
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1982年 12月
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1984年 8月9日
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P 4509
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アル・アハマディ Al Ahmadi
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n/a
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P 4511
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アル・イスティクラル Al Istiqlal
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マレーシア海軍 (ジェロン級(英語版))
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3505
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ジェロン KD Jerong
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1975年 7月28日
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1976年 3月23日
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就役中
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3506
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トゥダク KD Tudak
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1976年 3月16日
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1976年 6月16日
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3507
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パウス KD Paus
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1976年 6月2日
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1976年 8月18日
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3508
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ユー KD Yu
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1976年 7月17日
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1976年 11月15日
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3509
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バウン KD Baung
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1976年 10月5日
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1977年 7月11日
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3510
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パリ KD Pari
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1977年 1月
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1977年 3月23日
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シンガポール海軍 (シーウルフ級)
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P76
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シーウルフ RSS Sea Wolf
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n/a
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1975年 1月22日
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2008年 5月13日
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P77
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シーライオン RSS Sea Lion
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P78
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シードラゴン RSS Sea Dragon
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P79
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シータイガー RSS Sea Tiger
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1976年 2月29日
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P80
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シーホーク RSS Sea Hawk
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P81
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シースコーピオン RSS Sea Scorpion
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タイ海軍 (プラブラパク級(チェコ語版))
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311
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プラブラパク HTMS Prabrarapak
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1975年 7月29日
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1976年 7月28日
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就役中
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312 |
ハナク・サットル HTMS Hanhak Sattru
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1975年 10月28日
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1976年 11月6日
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313 |
サファーリン HTMS Suphairin
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1976年 2月20日
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1977年 2月1日
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アラブ首長国連邦海軍 (バニヤス級, ムバラス級(チェコ語版))
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P-4501
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バニヤス Baniyas
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n/a
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1980年 11月
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P-4502
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マーバン Marban
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P-4503
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ロゴム Rodqum
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1981年 4月
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P-4504
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シャヒーン Shaheen
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P-4505
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サクル Saqar
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1981年 6月
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P-4506 |
タリフ Tarif
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P-4401
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ムバラス Mubarraz
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1990年 8月
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P-4402
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マカシブ Makasib
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出典
参考文献
関連項目