ワイズマンズワールド
『ワイズマンズワールド』(WiZmans World)は、2010年2月25日にニンテンドーDS用ソフトとしてジャレコから発売されたRPGである。キャッチコピーは「あの頃の“RPG”をもう一度」。 2022年にはHDリマスター版『ワイズマンズワールド リトライ』がシティコネクションより発表[1]、Nintendo Switch、PlayStation 5、PlayStation 4で2024年5月30日に発売された[2][3][4][5](Xbox OneとSteamでは2024年内に発売予定)。『リトライ』では、UIの変更のほか、モンスター辞典からのモンスターの再戦機能、周回プレイなどの要素が追加されている。 本作は主人公の魔法使いを操作し、崩壊の進む街「ウィザレスト」を舞台に変わりつつある世界を救う内容のRPGであり[6]、プレイヤーの行動によってダンジョンの様相が大幅に変化するという特徴がある。また、仲間のホムンクルスをモンスターと融合させ、より強力に進化させる「アニマフュージョンシステム」を搭載している[6]。その他、キャッチコピーに「あの頃の“RPG”」とある通り、ゲーム中のグラフィックが全てドット絵で描かれている、若干シビアな戦闘の難易度になっているなど、古典的なRPGを意識したような外見、内容となっている。なお、初回では予約特典として、本作のオープニング曲及びエンディング曲を歌う六弦アリスのスペシャルシングルCDが同梱された。CDの内容は、オープニング曲「忘却チルドレン」とエンディング曲「X軸上の旋律」の2曲。 ゲームシステムゲームの基本的な流れは、拠点となる街ウィザレストで魔導長からのメインクエストを受け、準備を整えた後ダンジョンへと赴き、そこで目的を果たしたら街へと戻り、そしてまた魔導長より新たなメインクエストを受け、次のダンジョンへと向かうという『ウィザードリィ』方式をとっている。 本作ではプレイヤーの行動によってダンジョンが崩壊したり再生することでその様相が変わるという特徴があり、具体的には「再生⇔通常⇔崩壊⇔大崩壊」の4段階に変化する。ダンジョンの崩壊や再生によって、進めるルートや行ける場所、さらには入手できるアイテム、敵シンボルや障害物の配置までも変わる。なお、ストーリー終盤のとあるイベントをこなすまではダンジョンは再生状態にはならず、それまでは通常状態止まりである。また、ダンジョンが再生状態になると、出現する敵モンスターが大幅に強化される。 ゲーム内ではメインクエストとは別に、ウィザレストの街の住民から受けることのできるサブクエストが存在し、同時に3つまで受託できる。 アニマフュージョン敵モンスターは(一部の例外を除き)倒されると魂(アニマ)を落とす場合があり、主人公の仲間であるホムンクルスと魂を融合(アニマフュージョン)させることで、そのモンスターの性質やスキルを引き継ぐことができる。ホムンクルスのスキルには戦闘時に行動コマンドを選択することによって、敵にダメージを与えたり補助や回復を行う「アクティブスキル」と、HPアップなど常時その効果を得ることができる「パッシブスキル」の2種類が存在する。同じモンスターの魂を融合させた場合はホムンクルスの全てのパラメータが上昇する一方、違うモンスターの魂を融合させた場合、融合前に所持していたスキルを2つまで継承させる事が可能である。なお、ホムンクルスは6つまでスキルを所持できる。 また、ストーリーが進むと、ホムンクルスの融合の補助に使うアイテム「触媒」が入手できるようになり、最大2つまで加えることができる。これはホムンクルスの強化に役立つ一方、一定のMONEY(お金)が必要となる。ホムンクルスのレベルには上限があり、この上限を上げるためには、アニマフュージョンを繰り返し「FUSION EXP」をためる必要がある。ストーリーが進むにつれ、出現するモンスターは強力になるが、同時に落とす魂も強力となる。 魔力特異点とReturnダンジョン内には魔力特異点と呼ばれるポイントが存在し、同じくダンジョン内にある起動石と呼ばれるアイテムを使う事により起動する。魔力特異点を起動させる事により、そこでデータのセーブができるようになるほか、次回のダンジョン進入時、魔力特異点からダンジョンの探索を再開できるようになる。また、メニュー画面にはReturn(リターン)という項目があり、ダンジョン探索時これを選ぶと、瞬時にウィザレストにある主人公の自宅へと戻る事ができる。このため、ダンジョン探索中に危険を感じた場合、ダンジョンから瞬時に街に帰還する事ができるようになっている。また、魔力特異点を起動させた後、Returnを使っていったん街へと戻り、準備を整えた後、再び魔力特異点からダンジョン探索を開始する、といった方法をとる事も可能である。その他、メニュー画面にはSaveの項目があり、これを選ぶことで街やダンジョンのどこでも中断セーブを行う事ができ、ゲームを終了する事ができる。ただし、中断セーブデータはデータをロードするか、通常セーブデータをロードすると消えてしまう。 バトルシステムバトルはターン制で、敵味方問わずAGI(素早さ)の高いキャラクターから個別にターンが回ってくる。バトルでは、通常攻撃、魔法(主人公の場合)、スキル(ホムンクルスの場合)、その他ガードやアイテムなどを駆使して戦っていく。また、逃走用のコマンドも用意されており、1人が逃走に成功すると全員逃走することができる。なお、スキルや魔法を使うと、通常攻撃をした場合よりも次にターンが回ってくるのが遅くなり、強力な魔法やスキルであるほどそれが顕著となる。また、ガードをすると、通常攻撃をした場合よりも次にターンが回ってくるのが早くなる。全ての敵のHPを0にするとバトル勝利となり、経験値やお金、ドロップアイテムを入手することができる。味方全員のHPが0になるとバトル敗北となり、ゲームオーバーとなる。なお、味方全員のHPと主人公のMPはバトル終了後、全回復する。これはバトルから逃走した場合も同じである。ただし、ホムンクルスがスキルを使用する際に必要なSPは回復せず、回復させるには主人公の自宅のベッドで休む、レベルアップするなどの方法をとらなくてはならない。 シンボルエンカウントと連戦本作ではシンボルエンカウントを採用しており、ダンジョン内を徘徊する敵シンボルと接触するとバトルに突入する。敵シンボルは、敵パーティのリーダーとなるモンスターの属性によって、火、風、土、水の4種類のシンボルが存在する。敵シンボルの背後から接触した場合は先制攻撃となり、こちらが先に行動できるが、逆に敵シンボルに背後から接触された場合は敵の先制攻撃となり、先に敵の攻撃を受けてしまう。それ以外の接触の場合は通常エンカウントとなり、味方側と敵のAGIにより行動順が決まる。また、敵シンボルに接触した際、一定の範囲内に別の敵シンボルが存在すると、そのシンボルの頭上に「!」マークが表示され連戦に突入し、1つの敵パーティを全滅させた後、つづけて他の敵パーティとのバトルへと移行する。連戦は最大5連戦まで可能で、連戦数に応じて、取得経験値と取得金額のアップ、ドロップアイテムの入手率の上昇など様々な恩恵を受ける事ができるが、バトル終了時のHP、MPの全回復が起こらずそのまま次の戦闘に突入するため、ある程度のリスクを伴う。なお、ダンジョン内には通常の敵シンボルとは違う、大型の敵シンボルも存在し、通常の敵に比べて高い戦闘能力を持っている。ちなみに、大型の敵シンボルも連戦に巻き込むことが可能。 属性本作では火、風、土、水の4つの属性が存在し、主人公や一部の敵キャラクターを除き、ほぼ全ての敵がいずれかの属性を持っている。また、敵モンスターの魂を取り込んで戦うホムンクルスも、必然的に4つの内のいずれかの属性を持つこととなる。属性は相性をもっており、火は風に強く水に弱い、風は土に強く火に弱い、土は水に強く風に弱い、水は火に強く土に弱い、となっている。また、火属性のキャラクターに対する火属性の攻撃など、同属性に対する攻撃はダメージが軽減される。なお、水属性キャラクターの通常攻撃は水属性攻撃となるなど、ホムンクルスとモンスターの通常攻撃は、自分の属性に依存するようになっている。本作は属性の相性によってダメージが大きく増減するため、属性の相性を考え効果的な攻撃を行う、属性の偏りの無いパーティを構成する、といった事が重要となってくる。 チェイン味方の攻撃を連続で繋いでいくとチェイン(CHAIN)が発生する。チェインが発生している間は敵に与えるダメージが増加し、また、魔法攻撃を魔法攻撃で繋ぐと消費MP、SPが減る、属性攻撃を同じ属性攻撃で繋ぐとアイテムドロップ率が上がるなど、チェインの繋ぎ方によって様々な効果を得ることができる。チェインは繋いでいる最中に敵に割り込まれると解除され、また、補助魔法や回復魔法など敵にダメージを与える以外の行動をした場合も同様に解除される。 ストーリー百数十年前、人々は全ての記憶を失った状態で見知らぬ街で目を覚ました。街の周りは険しいダンジョンによって外界との一切の繋がりが遮断されており、人々は失われた記憶の中で唯一残っていた魔法の知識と魔法の術を用いてダンジョンへと挑んでいった。しかし外界への道は見つからず、そして大地は崩れ異形の姿へと変わる、「崩壊」と呼ばれる現象が人々を襲う。本作の主人公である若き魔法使いは、外界への道と、消息を絶った師匠・ジゼルを見つけ出す為、彼女が残した3体のホムンクルスを連れてダンジョンに挑む[7]。 その後、主人公は雪原でジゼルの残したメッセージを見つけ、各ダンジョンに潜むガーディアンと呼ばれるモンスターを討伐することにした。すべてのガーディアンを倒した後、ジゼルが現れる。 彼女の正体は、世界の崩壊をもくろんで、ウィザレスト中央街区の水晶の下に封じられた魔女であり、「復活の魔女ジゼル」として主人公一行に立ちはだかる。だが、封印が解けたことで、すべてのガーディアンを掛け合わせたような姿をした「封印の守護者」と呼ばれる存在があらわれ、ジゼルを取り込んでしまう。 登場キャラクタープレイヤーキャラクター
サブキャラクターここで述べる者以外にも、ウィザレストの住民全てが固有の名前を持っている。
敵キャラクターガーディアン
その他敵キャラクター
施設及びダンジョン施設
ダンジョン
用語及び世界設定
開発本作はランカース開発、ジャレコ販売という体制が敷かれ、メインプログラミングはランカースの代表である星野光弘が手掛けた[10]。 セッティング主人公が魔法使いであるという設定は最初から決まっていたものの、ファンタジーRPGで剣を持たないのはどうかという考えから「剣を持った魔法使い」というデザインが生まれるが、インパクトに欠けたため試行錯誤が続いた[11]。 その中で、壷にしてはどうかという提案がなされ、ほかの案とともにジャレコ側と話し合いを重ねた結果、この案が採用された[11]。また、そこから発展する形で、壷の中でホムンクルスを合成するというアイデアも生まれた[11]。 また、星野らは元々主人公に妖精のようなものを同行させる前提で男女の主人公を予定していたが、やがて男性主人公のみが残り、お供はせめて花を添えようという意味で女性のホムンクルスとなった[12]。 広報ジャレコが『黄金の絆』を発売した後、本作は「ジャレコ再生プロジェクト」の第一弾として『the:rpg(仮)』の名で2009年に発表され[13]、その後、タイトルが『WiZmans World(ワイズマンズワールド)』と決定した[14]。 発売までの間、「モンスターデザイン」「イベント企画」「主人公の名前」「タイトルロゴデザイン」「公式サイトトップ画像」の一般公募が行われた[15]。 雑誌「ニンテンドードリーム」の編集部によると、ユーザー公募で選ばれた敵キャラクター・まこ8は、もともと電子掲示板「2ちゃんねる」などで投稿されていたキャラクターであり、仕様に当たっては「2ちゃんねる」側からの許可を得た一方、ランカースはまこ8の収録を告げられた際に頭が真っ白になったという[16]。また、星野は2011年に行われたゲームコレクター・酒缶との対談の中で、一連の公募の企画は自分の知らないところで行われていたと明かしている[12]。リメイク版を手掛けたシティコネクション代表の吉川延宏も、星野から聞いた話として、ユーザー公募で選ばれた敵キャラクター・まこ8の登場はジャレコ側が決めたと2022年のインタビューの中で述べている[10]。まこ8は登場そのものが決まっていたもののしばらくの間その姿が明かされずにいたが、2009年11月下旬、ジャレコ代表が出張先のスウェーデン・ヨンショーピング市より行った『ニコニコ生放送』を通じて容姿が公開された[17]。 同年12月5日、ジャレコ社内にてクローズド体験会が行われ、人気ブロガーたちが招かれた[9]。 リトライシティコネクションがジャレコのIPを引き継いだ時点で本作のソースコードは一式そろっており、シティコネクション代表の吉川延宏はジャレコや開発元のランカースとも接点があり、移植そのものはこの時点から可能だった[10]。 その一方、シティコネクションは資金面や移植そのものについて迷いがあり、2010年代後半にはランカースに現行機向け移植の見積もりを相談したものの、両者ともにタイミングが合わないということで見送られた[10]。 その後、シティコネクションは純粋な移植を減らしていくことにし、移植の集大成として本作を選んだ。最終的に、ゼロディブとシティコネクションのスタッフを中心に開発体制が敷かれた。なお、ランカースは開発そのものに参加していないものの、復刻に当たってはソースコードの提供などの形で協力した[10]。 「ランカースの作ったものを復活させる」というコンセプトの都合上、キャラクターデザインやBGMの差し替えが行われた[10]。たとえば、ユーザー公募で選ばれた敵キャラクター・まこ8は登場が見送られ、彼が登場するイベントの内容も差し替えられた[10]。 『ワイズマンズワールド リトライ』では、メインテーマ曲と新規BGMをインストゥルメンタル・ユニットのsoLiが担当している[1]。 評価
ゲーム誌『ファミコン通信』の「クロスレビュー」では合計28点(満40点)[18]となっている。 評価(リトライ)「4Gamer.net」のitoは、「あの頃の“RPG”をもう一度」といったキャッチコピーの通り、RPGとしてはオーソドックスだとしつつも、ホムンクルスの育成のやりこみ度の高さや、ダンジョン攻略と合わせて進行する物語の牽引力の高さを評価した[19] 「ファミ通」のカイゼルちくわは、壮大な背景や因縁がなく、序盤で背負うものも小さいからこそ、町の人々とのドラマが生々しいと評価している[20][注釈 1]。 脚注注釈出典
外部リンク |
Portal di Ensiklopedia Dunia