ワディム・ムンタギロフ (Vadim Muntagirov)は、ロシア 出身のバレエダンサー である。イングリッシュ・ナショナル・バレエ団 を経て、現在はロイヤル・バレエ団 でプリンシパル を務めている[ 1] 。名前の表記について、日本ではヴァディム あるいはワジム などの表記揺れがある。
プロになるまで
ロシアのチェリャビンスク に生まれる[ 1] 。両親と姉もバレエダンサーである。9歳で、両親と姉も学んだペルミ・バレエ学校に入学し、6年間バレエ教育を受けた。2006年にローザンヌ国際バレエコンクール でスカラシップを授与され、当時英語が話せなかったにもかかわらずロンドン に移ってロイヤル・バレエ学校 で学ぶことを決めた。1年間で帰国するつもりだったが、当時の校長ゲイリーン・ストックに同校で卒業まで学ぶよう説得されて残ることにし、2009年に卒業した[ 1] [ 2] [ 3] 。
経歴
イングリッシュ・ナショナル・バレエ団 の『海賊 』公演より、コンラッド役のムンタギロフ(左)とメドーラ役のアリーナ・コジョカル (右)。
2009年にロイヤル・バレエ学校を卒業すると、ファースト・アーティストとしてイングリッシュ・ナショナル・バレエ団 に入団した。入団したシーズンに『ジゼル 』のアルブレヒト役と『シンデレラ 』の王子役を演じている[ 4] 。
2010年にはファースト・ソリストに昇進した。『白鳥の湖 』のジークフリート役で客演のポリーナ・セミオノワ とパートナーを組むことになり、19歳年長のダリア・クリメントヴァ とリハーサルを行った。しかし、セミオノワにビザ が下りず初日の公演を降板することになったため、クリメントヴァが代役として本番に臨んだ。この時のパフォーマンスが批評家から称賛され、同じく19歳差で伝説となったマーゴ・フォンテイン とルドルフ・ヌレエフ のパートナーシップとも比較された[ 5] [ 6] 。そのリハーサルと公演の模様は、BBC Four のドキュメンタリー "Agony and Ecstasy: A Year with English National Ballet " にも取り上げられた[ 7] 。それ以来、ムンタギロフとクリメントヴァは頻繁に組むようになった。クリメントヴァは、ムンタギロフとのパートナーシップは自らが20年間待ち望んでいたものだと語っている[ 8] 。
2011年にはプリンシパル、2012年にはリード・プリンシパルに昇進した。『海賊 』のコンラッド役や『レ・シルフィード 』の詩人役、『ミューズを率いるアポロ 』ではタイトル・ロールを演じ、ウェイン・イーグリング 版『くるみ割り人形 』ではオリジナル・キャストとして王子役を演じた[ 1] [ 4] 。2013年には『眠れる森の美女 』の王子役でブノワ賞 を受賞した[ 9] 。
2014年1月にロイヤル・バレエ団 にプリンシパルとして入団することを発表した。ロイヤル・バレエ団でのデビュー公演では、高田茜 をオーロラ姫として『眠れる森の美女』の王子役を演じた[ 10] 。その年後半にはいったんイングリッシュ・ナショナル・バレエ団に戻り、クリメントヴァの最終公演で『ロメオとジュリエット 』に共演した[ 6] 。ロイヤル・バレエ団では、『ラ・バヤデール 』のソロル役、『マノン 』のデ・グリュー役、『ラ・フィユ・マル・ガルデ 』のコーラス役、『二羽の鳩 』の青年役など、主役を演じている[ 1] 。2019年には『白鳥の湖』のジークフリート王子役で2度目のブノワ賞を受賞した[ 11] 。
新国立劇場バレエ団 の常任ゲスト・アーティストであり、パリ・オペラ座バレエ やマリインスキー・バレエ 、アメリカン・バレエ・シアター にも客演している他、プラハでクリメントヴァが主宰しているマスター・クラスで指導も行っている[ 1] [ 4] [ 12] 。2020年6月には、オンライン中継された新型コロナウイルス感染症の世界的流行 によるロイヤル・オペラ・ハウス の閉鎖明け初公演において、アンソニー・ダウエル から指導を受けたフレデリック・アシュトン の『Dance of the Blessed Spirits 』を踊った[ 13] 。
受賞歴
ローザンヌ国際バレエコンクール 銀賞(2006年)
アラベスク・コンクール 2位・銀メダル
ワガノワ・プリ国際バレエコンクール 1位・金メダル
ユース・アメリカ・グランプリ シニア部門 1位(2008年)
2010年英国批評家協会賞 最優秀男性公演賞(古典部門)
2015年・2018年英国批評家協会賞 最優秀男性ダンサー賞
ブノワ賞 (2013年、2019年)
出典: [ 1] [ 3] [ 4]
参考文献
^ a b c d e f g “Vadim Muntagirov ”. Royal Opera House . 2020年5月18日閲覧。
^ “Vadim Muntagirov: ‘I'm a mixture of Russian blood and the English school’ ”. Royal Opera House (2014年7月28日). 2020年5月19日閲覧。
^ a b “Vadim Muntagirov ”. Prix de Lausanne . 2020年5月19日閲覧。
^ a b c d “Vadim Muntagirov ”. English National Ballet . 2014年1月1日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年5月19日閲覧。
^ “ENB's Swan Lake; Mark Bruce's Love and War” . The Guardian . (2010年6月13日). https://www.theguardian.com/stage/2010/jun/13/swan-lake-muntagirov-mark-bruce-love-war
^ a b “With Romantic Flourish, a Ballerina Ends Her Stellar Career” . New York Times . https://www.nytimes.com/2014/06/25/arts/dance/daria-klimentova-shines-at-english-national-ballet-in-romeo-and-juliet.html 2014年6月26日閲覧。
^ “Agony & Ecstasy: A Year with English National Ballet, BBC4, Tuesday Monrow, ITV1, Thursday” . The Independent . (2011年3月13日). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/tv/reviews/agony-amp-ecstasy-a-year-with-english-national-ballet-bbc4-tuesdaymonroe-itv1-thursday-2240298.html
^ “Looking forward” . Dancing Times . (2017年10月12日). https://www.dancing-times.co.uk/looking-forward/
^ “2013 ”. prix Benois de la Danse . 2020年5月19日閲覧。
^ “Muntagirov joins the Royal Ballet” . The Telegraph . (2014年1月27日). https://www.telegraph.co.uk/culture/theatre/dance/10600259/Vadim-Muntagirov-joins-the-Royal-Ballet.html
^ “The 27th Festival Benois de la Danse ”. Prix Benois de la Danse . 2020年5月19日閲覧。
^ “Laura Morera & Vadim Muntagirov – Royal Ballet Principals, on La Fille mal gardée ”. Dancetabs (2015年4月22日). 2020年5月19日閲覧。
^ “Vadim Muntagirov on life under lockdown and dancing at the ROH again, to be seen this Saturday” . DanceTabs . (2020年6月18日). https://dancetabs.com/2020/06/vadim-muntagirov-on-life-under-lockdown-and-dancing-at-the-roh-again-to-be-seen-this-saturday/