不良電解コンデンサ問題
不良電解コンデンサ問題(ふりょうでんかいコンデンサもんだい)とは、電解コンデンサの製造上もしくは設計上の欠陥により、正常な使用条件であるにもかかわらず本来の寿命よりも大幅に短い期間で電解コンデンサが故障する現象である。 PCのマザーボードに搭載されている液体電解コンデンサがよくこの問題として話題になるが、実際には各種電子機器で起こり得る問題である。 主な事例と原因液体電解コンデンサの構造による本質的な問題
四級塩電解液によるもの1980年代後期、第四級アンモニウム塩(四級塩電解液)を用いた低ESR品と呼ばれるタイプにおいて、電解コンデンサから液漏れを起こし、基板のパターンをショートさせ回路を故障させる[3]という事故が多発した。これは四級塩が強アルカリ性で腐食性がありシールが難しく[4]、電極のリード線や封口のゴムを侵し液漏れを起こすというものであった。 台湾製不良電解液によるもの2001年から2002年ごろにかけて製造されたマザーボードに搭載された台湾製の電解コンデンサが1~2年の使用で膨張や液漏れ、破裂といった現象が多発し、特に自作パソコンユーザーの間では物議を醸した。この事例で問題となった電解コンデンサも前述と同じ低ESR品で、台湾の電解コンデンサメーカー各社に電解液を供給している業者が日本のメーカーの技術を真似て低ESR品用電解液を製造・販売したが、真似た技術のいくつかに欠落した点があったため、このような事態となった。これも四級塩電解液が主因とみられている。 電解液の過剰注入によるもの2004年に製造されたHP社製ワークステーションの一部に搭載されたマザーボード上の電解コンデンサがやはり膨張や液漏れ、破裂といった現象を引き起こした。こちらの電解コンデンサは、日本のメーカーであるニチコンの"HN"および"HM"シリーズと呼ばれる製品で、一時期の製造ロットにおいて電解液を過剰注入してしまうという製造上の欠陥があったためである。なお、2008年現在製造されているニチコン製"HN"および"HM"シリーズは、このような問題はない。 対策液体電解コンデンサの液漏れ、破裂に対して頻繁に取られる直接的な対策は以下の2点のいずれかである。
固体コンデンサは電解液の代わりにTCNQ錯体などの電荷移動錯体、またはポリチオフェンなどの導電性高分子を用いており、液漏れの心配が無く一般的に液体電解コンデンサよりも長寿命である。電解コンデンサの不良問題が周知されつつあった2005年以降のマザーボードでは、全ての液体コンデンサを固体コンデンサに切り替えたり、負荷の高いCPU周りのコンデンサを固体コンデンサに切り替えて対策を施す例が多い[5]。 しかし、固体コンデンサは液体コンデンサと比較して価格が高く容量や耐圧ラインナップも少ない。そのため、電源ユニットのメインコンデンサなど多くの容量を必要とする用途には使用しづらい。このような大容量コンデンサでは、高品質な耐熱温度105℃または125℃の液体電解コンデンサを使用する(10℃上がると寿命が半分になるため、設計寿命が同じ場合、耐熱温度85℃品と比べ105℃品で寿命が4倍、125℃品で16倍)ことによって対策を施す場合が一般的である。 そして、見落としがちな、間接的ではあるが重要な故障予防策は、前述のアレニウスの法則から明らかなように、電解コンデンサの雰囲気温度をできるだけ上げないことである。パソコンを自作する場合、CPU、GPU、チップセット等に取り付けられているファンの排気が電解コンデンサに当たらない様に気をつけるべきである。電子工作の場合、電解コンデンサの回路基板上の配置を発熱するものから離しておくことが望ましい。 故障した電解コンデンサの見分け方外観
その他コンデンサが液漏れや破裂する状態になると、鼻につく独特な刺激臭が周囲に漂う事も見られ、これによって故障に気づくケースも多いようである。また、破裂時には爆発音が聞こえることもある。また、防爆弁が開いて電解液が噴出す際、「シュー」という音と共に蒸気となって噴き出てくることもあり、いわゆる取扱説明書の注意書きにもあるような「発煙」と同じような状態が見られる。 また、電解コンデンサが破壊したマザーボードは、BIOSレベルで認識せずに画面が真っ黒になったり、またはOSが起動しても、途中で止まるなど様々な症状が現れる。音響機器やテレビなどでは画面がちらついたり、音が小さくなる故障も多いようであり、一般的に不安定になる。 脚注
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