位置的頭蓋変形症位置的頭蓋変形症(いちてきとうがいへんけいしょう、英: positional skull deformity、positional cranial deformity、positional skull deformation、positional cranial deformation)とは、胎児期や乳児期に頭蓋へ圧力が加わることによって生じる後頭部の扁平や非対称な頭蓋のこと[1]。アメリカなどでは、俗に「Flat Head Syndrome(フラットヘッドシンドローム、フラットヘッド症候群、絶壁頭症候群)」と呼称する[1]。 沿革欧米と日本では、沿革に大きな違いがある。 欧米欧米では、うつ伏せ寝が乳幼児突然死症候群の危険因子であることが判明したため、うつ伏せ寝の文化から仰向け寝の文化へと一大転換が図られた。しかし、その結果として乳幼児の頭蓋変形が飛躍的に増加し[1]、頭蓋変形に対する医学的な研究が発展するとともに社会的な意識も高まった。 日本他方、日本では、そもそも仰向け寝の文化であったことに加えて[2]、下記のような誤解が蔓延しているため、頭蓋変形に対する意識が高まらず、現在に至っている。
種類頭位性斜頭症(変形性斜頭症)「頭位性斜頭症(とういせいしゃとうしょう、英:positional plagiocephaly)」または「変形性斜頭症(へんけいせいしゃとうしょう、英:deformational plagiocephaly)」とは、非対称な頭蓋の状態のこと[4][5]。多くの場合、片側性の後頭部の平坦化と対側の前頭部の突出により菱形の頭蓋となる[4][5]。 頭位性短頭症(変形性短頭症)「頭位性短頭症(とういせいたんとうしょう、英:positional brachycephaly)」または「変形性短頭症(へんけいせいたんとうしょう、英:deformational brachycephaly)」とは、頭長幅指数が81%以上の状態 (客観的)または前後径が幅に比較して短い状態(主観的)のこと[4][5]。後頭部扁平を併発することが多い[4][5]。 頭位性長頭症(変形性長頭症)「頭位性長頭症(とういせいちょうとうしょう、英:positional dolichocephaly)」または「変形性長頭症(へんけいせいちょうとうしょう、英:deformational dolichocephaly)」とは、頭長幅指数が76%以下の状態(客観的)または明らかに頭の前後径が横径に比較して増加している状態(主観的)こと[4][5]。 後頭部扁平後頭部扁平(こうとうぶへんぺい、英:flat occiput)とは、後頭部の曲率半径が減少している状態のこと[4][5]。俗に「絶壁頭(ぜっぺきあたま、英:flat head)」と呼称される。短頭症に伴うことが多いため、区別されないことが多い[4][5]。ただし、両者は区別すべきだとされる[4][5]。 疫学日本日本では、生後1カ月から7カ月までの正常乳児の75%に位置的頭蓋変形がみられた[6]。 アメリカアメリカでは、1歳未満の乳児の16~48%に位置的頭蓋変形がみられた[7]。 カナダカナダでは、生後7から12週までの健康な新生児の46.6%に頭位性斜頭症がみられた[8]。 診断まずは、頭蓋骨縫合早期癒合症の診断を行う。 頭蓋変形に該当するかどうかは、頭長幅指数(英:cephalic index)によって診断する。 原因胎児期や乳児期に頭蓋へ外圧が加えられることによって発症する[9]。 出生前出生時
出生後
健康への影響かつては健康への影響はないと考えられていたが、現在では以下のような健康への影響があることが判明している。 発達遅滞発達遅滞(英:developmental delay)を生じさせる可能性がある[11]。厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会においても以下のように記載されている。
頭痛頭痛を発症する可能性がある[16]。 顎関節症顎関節症(英:Temporomandibular joint disorder)を発症する可能性がある[16]。 斜頸二次的斜頸(英:Torticollis)を発症する可能性がある[16]。 脊柱側彎症脊柱側彎症(英:Scoliosis)を発症する可能性がある[16]。 外見への影響顔面変形位置的頭蓋変形症は顔面変形を伴うので、『位置的頭蓋顔面変形症』と呼称されることもある[17]。 歯列異常歯列異常を発症する可能性がある[16]。 日常生活への影響自転車用のヘルメットが合わなかったり、眼鏡が斜めになる。 予防以下のような予防法がある。 タミータイムタミータイム(英:tummy time)とは、乳幼児が起きているときに、保護者などの厳重な監督のもとで、乳幼児を腹ばいにして過ごさせる方法のこと[18]。 体位変換法(リポジショニング)体位変換法(英:repositioning)とは、乳幼児の頭の同じ位置ばかりが下に来ないように、乳幼児の体位を変える方法のこと[19]。 治療法としても有効である。 治療軽度では自然に改善する場合もあるが、中度や重度では改善しないことが判明している[20][21]。厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会においても以下のように記載されている。
ヘルメット治療ヘルメット治療(英:helmet therapy)とは、オーダーメイドの「頭蓋形状矯正ヘルメット(英:remolding helmet、Cranial Remolding Orthosis)」を用いて、乳幼児の変形した頭蓋骨の形状を矯正する治療法。ヘルメット治療については、厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において以下のように記載されている。
治療できるのは定頸する生後3カ月から大泉門が閉鎖する生後18カ月までとされている[22]。至適開始時期については、生後5~6カ月といわれている。 治療開始後に、医師が主導となって健診やヘルメット調整を行う場合と、技師(義肢装具士)が主導となってヘルメット調整を行う場合とに分かれる。 国産第一号:アイメット(Aimet)、大学病院取扱数国内一位:クルム(Qurum)などがある。 アメリカでは、年間に1万人程度がヘルメット治療を受けている[2]。 オランダでは、新生児の1~2%がヘルメット治療を受けている[23]。 日本で流通しているヘルメットは以下の通り。
ただし、ヘルメット治療の効果に否定的な研究もある[20][23][28]。 民間療法上記の通りヘルメットによる治療が可能な期間は限定的であり、現在のところ他に医学的な治療法はないため、ヘルメットによる治療可能期間を過ぎてしまうとカイロプラクティックや整体などの民間療法に頼らざるをえないのが現状である。 子どもが位置的頭蓋変形症の著名人ブログ等で子どもの位置的頭蓋変形症を公表している著名人は下記の通り。 脚註
関連項目外部リンク
|
Portal di Ensiklopedia Dunia