利用者:永尾信幸/MT46AとMT552.1.3.1 101系に使用されたMT46Aとの比較101系が標準通勤形電車になり得なかったのは、ひとえに主電動機であるMT46Aが通勤電車の用途に適さなかったからと言っても良いが、MT46Aに代わる国鉄通勤路線のインフラで必要とする性能に合致する特性を持たせた主電動機としてMT55が設計されるまでにはいくつかの試験を行う必要があった。出力を120kWに増強したMT909はピーク電流が問題になっていた事を考えると回生ブレーキとセットでなければ使いにくく、回生ブレーキを考慮したMT50は直巻モーターを使う関係もあって、定格速度を極端に下げる必要があり、相対的に性能が落ちる高速域の特性を界磁を15%まで弱める事で対応する必要が生じ、保守に難のある補償巻線を設けなければならない上、回生効果も今ひとつであった。 それらの試験結果と具体的な運転線区の条件選定から、次期通勤電車として低電流で大きなトルクを出せるMT55が設計されたが、低速での回転力が増したため筐体は大きくなり動輪径は910mmになっている。歯車比も101系に比べて大きくなっているが、動輪が大きくなったからであり減速比としては101系も103系もさほど変わらない。同一電流における引張力は101系に比べて103系の方が3割ほど大きく[1]なっており、少ない電流で大きな加速度を出すことが可能となった。これは、とりもなおさず101系に使っていたMT46Aが苦手にしていた部分であり、MT55はこの部分を改善したのである。 MT46Aは一時間定格電流を300Aとして、公称出力を100kWとしているが、前身であるMT46が所定の加速度を出すことが出来なかったことから低速での回転力を増やす改造を行ってMT46Aになっており、MT46では全界磁定格であったのがMT46Aでは70%界磁に定格点を置いている。これは電動機が自己通風による冷却効果も考慮した上での300Aの定格電流であるからで、その結果として定格速度は50km/hを超える状態にする必要があった。つまり平均速度を50km/h程度取らなければ定格電流である300Aでは温度上昇を抑えきれない事を意味するが、当時の通勤区間の平均速度が30km/h台であることを考えると使える箇所に制約が課される事になるとわかったのは、101系の生産開始後である。 よって、全界磁程度までの速度域で使う場合、定格電流を抑える必要が生じるため公称出力を出す事が出来ず、実質的には90kW程度のモーターであるとされている。
また、MT46Aの公称出力は100kWでMT55は110kWであるが、消費電力量はどんな編成をどんな条件で走らせるかで変わってくるので、一概に形式だけで比較は出来ないが、加減速が良い形式の方が走行時間に占める平均速度を高く取れる関係で消費電力量が少なくて済む。[2]加速が良く減速度を高めた103系は中速程度で惰行に移っても駅間の運転時分は少なく経済運転上も好ましく、結果的に消費電力量を節約する効果があった。[3]この特性の違いから101系と103系を比べても出力では103系が大きいのに対して消費電力量は103系の方が少ない場合もあった。[4] また、MT46Aの絶縁種別は電機子が特B種120℃・界磁がH種[5]で150℃であったが、これをMT55では電機子がF種で140℃・界磁が当初H種で150℃、後にF種で155℃と強化された。絶縁種別の低いMT46Aは一時間定格電流を上回る電流を継続して流しにくく、編成中の電動車数が減ったり、編成重量が増えたり、高加速にするために起動電流を上げたり、力行後すぐにブレーキを掛けなければならない駅間距離が短い路線などにおいて制約を受けていたが、MT55になってからは同一運転条件でのRMS電流[6]を比較すると103系の方が小さい電流値を取る事が多かった。[7] MT46Aの前身であるMT46はモハ90試作車のみに取り付けられたが、所定の加速度を出すことが出来なかった。そのことからMT46Aでは回転力を大きく取る小改造を行っており、それに伴って定格速度がモハ90試作車の52km/hに対して45km/hと下がる事になった。しかし自己通風のMT46Aは定格速度が45km/hでは風量が足らない事もあり、定格点を70%界磁上に置き、風量が確保出来る52km/hを定格速度とした。 MT46Aの前身であるMT46はモハ90試作車のみに取り付けられたが所定の加速度を出すことが出来ず、低速での回転力を大きく取る小改造を施してMT46Aとなったが、その結果定格速度はMT46の52km/hからMT46Aでは45km/hに落ちてしまった。
起動時の引張力を高めた結果、高速での性能を示す定格速度はMT46Aを用いた101系が70%界磁で52km/h程度、MT55を用いた103系が85%界磁で36km/h程度とMT46Aの方が高いが、これが逆にMT46Aの熱容量不足を助長した。つまり、当時の国鉄線の通勤電車が走る区間の多くの平均速度は50km/h以下であり、101系をそのような線区で運転すると自然通風のMT46Aにとって冷却風量が不足するからである。[9] 高速特性なお、高速特性であるが定格速度が高いとは言え、MT46Aの弱め界磁は40%であり、35%のMT55と比べると出力の差もあってMT46Aの方が幾分高速での引張力が落ちる。これは高速性能が103系の方が高い事を示している。そのような事からMT46AとMT55を用いた通勤電車を比較した場合、MT55は比較的オールマイティに駅間が短い所から長い所まで使用できたのに対して、MT46Aを用いた通勤形電車はRMS電流の制約上、駅間で惰行を多く取れ、比較的高い速度でノッチオフ出来る線区が適していると言える。 これに対し、1968年10月の山手線10両編成化の際にはMT比が3:2となって同条件下での101系10両編成 (6M4T) に比して変電所負担が過大になることが問題となる[要出典]とする意見も一部にはあり、斎藤雅男のように「10両ならば103系は不要で101系でいいわけです」[10]と明言する国鉄幹部職員も存在した。 なお、電動機の能率をはかる指針としてSRP[11]があるが、MT46Aが出力100kW・最高回転数4320回転・定格回転数1860回転で232.3なのに対して、MT55は出力110kW・最高回転数4400回転・定格回転数1350回転で358.5となり、MT61の358.4と変わらない電動機能率を有している。定格回転数は低いが高速回転まで使えた上での低速回転であり、定格回転数が低い事が性能の高低を示さない事がわかる。なお、SRPに重量の要素を加えたSSRP[12]だと重量の軽いMT46AがMT55に少しだけ近づく。
|
Portal di Ensiklopedia Dunia