竹鼻線(たけはなせん)は、岐阜県羽島郡笠松町の笠松駅から岐阜県羽島市の江吉良駅までを結ぶ名古屋鉄道(名鉄)の鉄道路線である。
羽島線や各務原線とともに、名鉄では数少ない愛知県を全く通過しない路線である。竹鼻線・羽島線を走る列車も名古屋本線の名鉄岐阜駅へ直通する列車を含めて運転区間が全て岐阜県内のみで完結し、愛知県に乗り入れない。
運賃計算区分はC(運賃計算に用いる距離は営業キロの1.25倍)。全駅でmanacaなどの交通系ICカード全国相互利用サービス対応カードの利用ができる。
なお、『鉄道要覧』による起点は笠松駅で、列車運行および旅客案内、列車番号の設定においては、笠松駅から江吉良駅・新羽島駅へ向かう列車が下り列車で列車番号は本来上り列車に付けられる偶数、笠松駅へ向かう列車が上り列車で列車番号は本来下り列車に付けられる奇数となっている[3]。
本記事では、かつて西笠松駅 - 大須駅間を運営していた竹鼻鉄道(名古屋鉄道に合併)についても述べる。
路線データ
運行形態
羽島線と一体的に運行されている。原則として笠松駅 - 新羽島駅間のみの列車が15分間隔で運行されているが、ごく僅かに名古屋本線に乗り入れて名鉄岐阜駅を発着する列車がある。名鉄岐阜駅発着列車は基本的に名鉄岐阜駅 - 笠松駅間の名古屋本線を急行(途中無停車)として、竹鼻線・羽島線内は普通列車として運行される(平日朝の一部・土休日夜の列車は名古屋本線内も普通列車として運行)。2021年5月22日のダイヤ改正で平日夕方の名鉄岐阜駅発着列車は竹鼻線・羽島線内折り返しに短縮されている。
列車は朝ラッシュ(笠松駅基準で8時台発の新羽島行きまで)と夜(笠松駅基準で21・22時台発の新羽島行き)に4両編成があるほかは基本的に2両編成である。ワンマン運転は行われておらず、全列車に車掌も乗務する。
2023年3月のダイヤ改正で夜間の列車が減便となり、21時台(笠松駅基準)以降は30分間隔での運転となっている。
ほぼすべての列車が新羽島駅まで直通するが、笠松・名鉄岐阜方面からの羽島市役所前駅発着の列車も一部で設定されている。
全線単線であるため、途中、交換可能駅である、西笠松駅、南宿駅、羽島市役所前駅で列車の行き違いを行っている。すべての交換可能駅を使っているため、これ以上運転間隔を短くする事はできない。
竹鼻線および羽島線のダイヤはネットダイヤと言われるダイヤとなっており、各駅の時刻表には毎時間とも同一の分数が記載される時刻の設定がなされることが多い。
交換可能駅である、西笠松駅と南宿駅には分岐器にスプリングポイントが導入されており、列車の進行方向と進入できる番線が左側通行で固定されている。そのため、過去に存在した急行列車の駅通過時においては、駅通過時に左側が分岐側となる場合は分岐器の速度制限を受けてしまうため、低速(25km/h以下)での駅通過を行っていた。
2001年(平成13年)9月30日までは、新岐阜駅(現在の名鉄岐阜駅) - 新羽島駅間に竹鼻線内も急行として運転する列車が設定(停車駅は笠松駅・竹鼻駅・羽島市役所前駅。交換可能駅の西笠松駅と南宿駅で運転停車することもあった)されていたが、翌10月1日の改正で全列車が線内の各駅に停車するようになった。歴史の節の記述のように、同日までは普通列車(大須方面、新羽島方面とも)の約半数が江吉良駅を通過していた。
線内の一部に建築限界を支障する区間があるため、7000系(パノラマカー)の入線が規制されていた。
座席指定制(現在の特別車)の列車は、開業以来、今日まで設定されたことはないが、1991年6月23日に竹鼻線開業70周年の記念列車で1度だけ8800系(パノラマDX)が入線したことがある(団体列車扱い。臨時列車を運行するだけの線路容量がないため定期列車の5300系2両編成の急行に8800系3両編成を増結して運転)。
竹鼻線・羽島線の駅は笠松駅を除き、無人駅である(かつては、西笠松駅・柳津駅・竹鼻駅・羽島市役所前駅・新羽島駅も有人駅だった)。
2011年のダイヤ改正で、朝・昼の列車は名鉄岐阜駅への直通が取りやめられ、この時間帯はすべて笠松駅で折り返しとなった(土休日はほぼ終日。笠松駅が快速特急・特急の基本停車駅となったため)。
名古屋本線とは笠松駅で路線の接続がなされているが、直通列車は路線の構造上、名鉄岐阜駅方面との直通のみが可能で、名鉄名古屋駅方面(および豊橋駅・中部国際空港駅などの方面)への直通はできない。
歴史
現在の竹鼻線沿線は、岐阜市への道路のほかは水運しかなく、美濃電気軌道が笠松線(岐阜 - 笠松)の敷設を決定した際、竹ヶ鼻町とその近隣の住民とが竹ヶ鼻への延長を美濃電に要望したが聞き入れられなかったという。笠松線開通により現在の竹鼻線沿線でも敷設の気運が高まり、竹ヶ鼻町の小宮山儀太郎他の有志で竹鼻鉄道が設立された。開業当初は営業成績が低調だったものの次第に好転した。駅は乗客以外にも地元客のサロンのように使われたという。なお竹鼻鉄道は買収も含めバス事業[5] にも進出したが、後に傘下の墨俣自動車に譲渡し、合併を経て岐阜乗合自動車(岐阜バス)となった[6]。
2001年の部分廃止
2001年(平成13年)10月1日に、江吉良駅 - 大須駅間が廃止となり、バス路線へ転換された。同区間廃止に伴い廃止された駅は、牧野駅・長間駅・中区駅・市之枝駅・八神駅・大須駅の6駅である。2000年代に廃止された名鉄の路線では唯一の1500V電化路線である。
この区間は廃止直前の時点では全線単線で列車交換設備がなかった(過去には牧野駅と市之枝駅に存在したが列車本数の削減と共に廃止されていた)。そのため江吉良駅 - 大須駅間が1閉塞として同時に1編成しか入線できなかった。入線した1編成による羽島市役所前駅 - 大須駅間の往復運用を基本とした路線となっており、運行本数も毎時2本と、毎時4本が確保された笠松駅 - 羽島市役所前駅間(当時分岐駅の江吉良駅は約半数の列車が通過)の半数と少なかった。
ホーム有効長は全駅とも2両分しかなかった。しかし、一部の時間帯に設定のあった岐阜方面との直通列車においては4両編成で入線する事があり、その場合は後ろ2両を締切して対応を行っていた。非貫通式の2両編成と2両編成の組み合わせによる4両編成が入線する場合もあったが、その場合も後ろ2両の扉は締切して運行していたため実質的に後ろ2両は利用が出来なくなっていた。なお、終点駅である大須駅も他の駅と同様に2両編成まで対応のホームしか有していなかったが、非貫通式の2両編成と2両編成の組み合わせによる4両編成が入線した場合でも、岐阜寄り2両目の最後尾の扉がギリギリホームへ接する事ができた事から、その扉のみを利用した乗車を行っていた。
部分廃止後は江吉良駅が分岐駅ではなくなり、羽島市役所前駅 - (江吉良駅) - 新羽島駅間で1閉塞となった。江吉良駅の信号機は、部分廃止後もしばらく継続して使用されていたが、江吉良駅 - 羽島市役所前駅間の高架化(県道18号大垣一宮線との立体交差)の工事に伴い部分廃止当時の江吉良駅が解体された際に撤去され、現在の江吉良駅が新設された際に信号機の設置はなされなかった。
また、羽島線の開業から2001年9月30日まで行われていた江吉良駅の特別通過も取り止められ、全ての列車が江吉良駅に停車するようになった。
年表
竹鼻鉄道の車両
- デ1形(1-4)1921年名古屋電車製の木製単車(定員42人)。合併してからも番号はかわらず、2・3は熊本電鉄に1・4は野上電気鉄道へ売却された。(形式図[25])
- デ5形(5-8)1928年名古屋電車製の木製単車(定員40人)。合併してのち5・7は松本電鉄へ売却。6・8はモ80(80・81)に改番しそのまま竹鼻線で使用されていた。
他に半鋼製ボギー電動車を注文していたが完成した時には名鉄に買収されておりモ770形(初代)となった。
駅一覧
全駅岐阜県内に所在。普通列車のみ運行。全列車、各駅に停車。
- 凡例
- 線路 … |:単線区間 ◇:単線区間の交換可能駅
営業区間
駅番号
|
駅名
|
駅間キロ
|
営業キロ
|
接続路線
|
線路
|
所在地
|
NH56
|
笠松駅
|
-
|
0.0
|
名古屋鉄道:NH 名古屋本線 (一部直通運転)
|
|
|
羽島郡 笠松町
|
TH01
|
西笠松駅
|
0.9
|
0.9
|
|
◇
|
TH02
|
柳津駅
|
2.0
|
2.9
|
|
|
|
岐阜市
|
TH03
|
南宿駅
|
2.3
|
5.2
|
|
◇
|
羽島市
|
TH04
|
須賀駅
|
0.9
|
6.1
|
|
|
|
TH05
|
不破一色駅
|
0.9
|
7.0
|
|
|
|
TH06
|
竹鼻駅
|
1.6
|
8.6
|
|
|
|
TH07
|
羽島市役所前駅
|
1.0
|
9.6
|
|
◇
|
TH08
|
江吉良駅
|
0.7
|
10.3
|
名古屋鉄道:TH 羽島線
|
|
|
TH 羽島線新羽島駅まで直通運転
|
- 2024年3月15日まで柳津駅から南宿駅方面・羽島線各駅の運賃計算の際は、柳津駅 - 南宿駅間の営業キロに2.1を用いていた[26]。
- 柳津駅 - 南宿駅間でも羽島郡笠松町を通過している。
廃止区間(2001年10月1日廃止)
駅名
|
駅間キロ
|
営業キロ
|
接続路線
|
線路
|
所在地
|
竹鼻線羽島市役所前方面に直通運転
|
江吉良駅
|
-
|
10.3
|
|
|
|
羽島市
|
牧野駅
|
0.6
|
10.9
|
|
|
|
長間駅
|
0.6
|
11.5
|
|
|
|
中区駅
|
0.7
|
12.2
|
|
|
|
市之枝駅
|
1.2
|
13.4
|
|
|
|
八神駅
|
2.1
|
15.5
|
|
|
|
大須駅
|
1.5
|
17.0
|
|
|
|
2001年に廃止された市之枝駅の跡
廃駅
- 笠松口駅(笠松駅 - 西笠松駅間) 1942年6月1日廃止。
- 以下の駅はすべて1944年休止、1969年4月5日廃止。
利用状況
竹鼻鉄道時代の輸送・収支実績
年度
|
輸送人員(人)
|
貨物量(トン)
|
営業収入(円)
|
営業費(円)
|
営業益金(円)
|
その他益金(円)
|
その他損金(円)
|
支払利子(円)
|
政府補助金(円)
|
1921 |
411,954 |
1,961 |
46,599 |
23,506 |
23,093 |
|
|
|
|
1922 |
580,774 |
5,676 |
66,683 |
33,522 |
33,161 |
|
|
|
|
1923 |
621,414 |
6,420 |
71,286 |
35,069 |
36,217 |
|
|
3,337 |
15,886
|
1924 |
562,303 |
5,751 |
64,941 |
36,530 |
28,411 |
|
|
2,597 |
20,842
|
1925 |
574,838 |
6,784 |
67,648 |
38,486 |
29,162 |
|
|
2,284 |
20,006
|
1926 |
597,467 |
7,860 |
69,071 |
37,247 |
31,824 |
|
|
1,632 |
18,597
|
1927 |
602,046 |
6,091 |
71,628 |
39,549 |
32,079 |
|
|
338 |
20,068
|
1928 |
616,902 |
8,195 |
74,379 |
35,545 |
38,834 |
|
|
|
15,061
|
1929 |
878,029 |
5,945 |
105,767 |
77,493 |
28,274 |
|
|
8,546 |
33,265
|
1930 |
739,819 |
2,836 |
89,935 |
75,064 |
14,871 |
|
雑損1,014 |
5,514 |
66,195
|
1931 |
658,001 |
1,622 |
80,918 |
58,149 |
22,769 |
|
自動車業279 |
4,933 |
17,869
|
1932 |
576,583 |
1,732 |
73,870 |
47,290 |
26,580 |
|
雑損742自動車業119 |
4,156 |
30,870
|
1933 |
588,431 |
1,983 |
77,887 |
50,649 |
27,238 |
|
自動車5,813雑損償却金1,483 |
701 |
22,957
|
1934 |
526,130 |
1,114 |
78,909 |
53,714 |
25,195 |
|
雑損68自動車業2,836 |
5 |
22,549
|
1935 |
580,516 |
430 |
82,733 |
54,048 |
28,685 |
|
自動車業3,165雑損償却金10,071 |
1 |
22,599
|
1936 |
624,933 |
116 |
94,383 |
61,937 |
32,446 |
自動車業5,815 |
雑損20,517 |
|
21,341
|
1937 |
636,530 |
58 |
101,149 |
68,189 |
32,960 |
|
雑損償却金14,000 |
|
18,476
|
1939 |
942,466 |
636 |
|
|
|
|
|
|
|
1941 |
1,550,735 |
2,448 |
|
|
|
|
|
|
|
- 鉄道省鉄道統計資料、鉄道統計資料、鉄道統計各年度版
駅別乗車人員
各駅の年間乗車人員の推移は以下の通り(柳津駅は不詳、西笠松駅は1997年以降。詳細は各駅を参照)。
脚注
出典
- ^ 井上マサキ、西村まさゆき『たのしい路線図』グラフィック社、2018年、76頁。ISBN 978-4-7661-3187-1。
- ^ a b c d 徳田耕一『名古屋鉄道 今昔―不死鳥「パノラマカー」の功績』交通新聞社〈交通新聞社新書〉、2017年8月、210頁。ISBN 978-4-330-81917-4。
- ^ “路線別時刻表”. 名古屋鉄道. 2025年2月20日閲覧。
- ^ a b c d e f 『地方鉄道及軌道一覧. 昭和15年11月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 1934年時の路線『全国乗合自動車総覧』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 「西美濃わが街」2001年6月号(289号)
- ^ 「軽便鉄道免許状下付」『官報』1919年6月26日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 『地方鉄道及軌道一覧 : 附・専用鉄道. 昭和10年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 『日本全国諸会社役員録. 第32回』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・名古屋鉄道(元美濃電気軌道)2・大正6~10年』 「42. 仮停車場設置の件認可」
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・竹鼻鉄道(名古屋鉄道)2・大正10年~昭和4年』 「8. 仮停車場設置の件」
- ^ 「地方鉄道運輸開始」『官報』1921年6月30日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・竹鼻鉄道(名古屋鉄道)2・大正10年~昭和4年』 「9. 笠松、竹鼻間運輸営業開始の件」
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・名古屋鉄道(元美濃電気軌道)2・大正6~10年』 「46. 仮設停車場使用期限延期の件」
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・竹鼻鉄道(名古屋鉄道)2・大正10年~昭和4年』 「13. 仮設停車場使用期限延期の件」
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・竹鼻鉄道(名古屋鉄道)2・大正10年~昭和4年』 「14. 共同使用停車場竣功の件」
- ^ 「地方鉄道停車場移転並停留場設置」『官報』1921年10月1日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 鉄道院監督局・鉄道省監督局『鉄道免許・竹鼻鉄道(名古屋鉄道)2・大正10年~昭和4年』 「21. 仮設新笠松停車場廃止の件」
- ^ 「鉄道免許状下付」『官報』1924年3月27日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 「地方鉄道運輸開始」『官報』1929年4月10日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ a b 『官報』1930年11月13日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ この時期の路線名は名古屋鉄道 編『名古屋鉄道社史』名古屋鉄道、1961年。ASIN B000JAMKU4。 で確認できる。
- ^ 「トランパス15駅に導入/名鉄、14日から」『交通新聞』交通新聞社、2007年12月7日、1面。
- ^ 『最新電動客車明細表及型式図集』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 『鉄軌道旅客運賃の改定申請が認可されました ~2024 年 3 月 16 日に運賃改定を実施します~』(PDF)(プレスリリース)名古屋鉄道、2023年9月1日。https://www.meitetsu.co.jp/profile/news/2023/__icsFiles/afieldfile/2023/09/01/23-09-01unchinkaiteininka2023.pdf。2025年2月20日閲覧。
参考文献
- 渡辺肇・加藤久爾夫 「名古屋鉄道 」『鉄道ピクトリアル』No.249
- 白土貞夫 「竹鼻鉄道『竹鼻駅』駅名異聞」『鉄道ピクトリアル』No. 816
関連書籍
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、 名鉄竹鼻線に関連するカテゴリがあります。
|