国際教員指導環境調査(こくさいきょういんしどうかんきょうちょうさ、英語:Teaching and Learning International Survey,TALIS)とは、経済協力開発機構(OECD)による学校と教員に関する国際調査[1]。2008年に第一回調査、2013年に第二回調査、2018年に第3回調査が実施された。日本は第二回から参加しており、調査結果で、日本の教員の勤務時間が参加国のなかで最長であったことから、学校における働き方改革につながっていった[2]。
第二回TALIS(2013)
OECDは2008年に第一回Teaching and Learning International Survey(TALIS、国際教員指導環境調査)を実施したが、日本は参加しなかった。2013年、OECDによる第二回TALISに日本は初めて参加した[1]。参加国は34か国で、ドイツ、中国、台湾、ロシア、インド、インドネシア、スイス、サウジアラビア、トルコ、アフリカ諸国などは参加していない。日本では10,863校の中学校、289,125人の教員が対象となり、うち標本抽出で192校、192人の校長および3484人の教員から有効回答を得た[1]。
TALIS(2013)では全般的に、参加国と比べて日本は、授業時間が短く、会議・事務時間・課外活動など学業教育以外の時間が長く、また有資格教員や特別支援能力・職業教育を行う教員が不足していた[1]。
- 1週間あたり平均勤務時間の合計は参加国平均38.3時間であったのに対して、日本は53.9時間で参加国最長であり、日本に続いてカナダのアルバータ州(地域参加)が48.2時間、シンガポールが47.6 時間、イングランドが45.9時間で、参加国最短はイタリアの29.4時間だった[1]。
- 授業時間は参加国平均19.3時間であったのに対して、日本は17.7時間と短かった(アメリカ参考データでは26.8時間、アルバータ州26.4時間、フィンランド20.6時間)[1]。
- 職員会議(学内での同僚との共同作業や話し合い)は参加国平均2.9時間であったのに対して、日本は3.9時間、学校運営に関する時間も参加国平均1.6時間であったのに対して日本は3時間で、書類作成など事務時間も参加国平均2.9時間であったのに対して日本は5.5時間と、課外活動(部活動など)も参加国平均2.1時間であったのに対して日本は7.7時間で、それぞれ参加国最長だった[1]。
- 労働環境以外では、女性教員の割合が参加国平均68%であるのに対して日本は39%にとどまった。
- 平均教員数は参加国平均45人に対して日本は24人にとどまった。
- 学級あたり生徒数は参加国平均24人に対して日本は31人だった。
- 有資格教員不足は参加国平均38.4%に対して日本は79.7%、特別支援能力を持つ教員不足は参加国平均48%に対して日本は76%、職業教育を行う教員不足は参加国平均19.3%に対して日本は37.3%であり、資格・特別支援能力・職業教育を行う教員の不足率はいずれも参加国最低値だった。
- 一方、日本は、教員の初任者研修、メンター指導を受けている割合や、他校見学の割合が高かった[1]。
TALIS(2013)「教員の仕事時間」(単位は残業等含む一週間あたり時間)[1]
|
合計 |
授業 |
授業準備 |
職員会議※ |
採点添削 |
生徒指導 |
学校運営 |
事務 |
保護者との連絡連携 |
課外活動(部活動など) |
その他の業務
|
参加国平均
|
38.3 |
19.3 |
7.1 |
2.9 |
4.9 |
2.2 |
1.6 |
2.9 |
1.6 |
2.1 |
2
|
日本
|
53.9 |
17.7 |
8.7 |
3.9 |
4.6 |
2.7 |
3 |
5.5 |
1.3 |
7.7 |
2.9
|
アルバータ州
|
48.2 |
26.4 |
7.5 |
3 |
5.5 |
2.7 |
2.2 |
3.2 |
1.7 |
3.6 |
1.9
|
シンガポール
|
47.6 |
17.1 |
8.4 |
3.6 |
8.7 |
2.6 |
1.9 |
5.3 |
1.6 |
3.4 |
2.7
|
イングランド
|
45.9 |
19.6 |
7.8 |
3.3 |
6.1 |
1.7 |
2.2 |
4 |
1.6 |
2.2 |
2.3
|
マレーシア
|
45.1 |
省略 |
※ |
|
|
|
|
|
|
|
|
アメリカ※
|
44.8 |
26.8 |
7.2 |
3 |
4.9 |
2.4 |
1.6 |
3.3 |
1.6 |
3.6 |
7
|
ポルトガル
|
44.7 |
20.8 |
省略 |
|
|
|
|
|
|
|
|
オーストラリア
|
42.7 |
18.6 |
省略 |
|
|
|
|
|
|
|
|
スウェーデン
|
42.4 |
17.6 |
6.7 |
3.5 |
4.7 |
2.7 |
0.8 |
4.5 |
1.8 |
0.4 |
1.7
|
デンマーク
|
40 |
18.9 |
7.9 |
3.3 |
3.5 |
1.5 |
0.9 |
2 |
1.8 |
0.9 |
2.3
|
韓国
|
37 |
18.8 |
7.7 |
3.2 |
3.9 |
4.1 |
2.2 |
6 |
2.1 |
2.7 |
2.6
|
フランス
|
36.5 |
18.6 |
7.5 |
1.9 |
5.6 |
1.2 |
0.7 |
1.3 |
1 |
1 |
1.1
|
オランダ
|
35.6 |
16.9 |
5.1 |
3.1 |
4.2 |
2.1 |
1.3 |
2.2 |
1.3 |
1.3 |
2.5
|
フィンランド
|
31.6 |
20.6 |
4.8 |
1.9 |
3.1 |
1 |
0.4 |
1.3 |
1.2 |
0.6 |
1
|
イタリア
|
29.4 |
17.3 |
5 |
3.1 |
4.2 |
1 |
1 |
1.8 |
1.4 |
0.8 |
0.7
|
- ※「職員会議」とは「学内での同僚との共同作業や話し合い」を指す。空欄値は省略につき原表を参照。数値の太字強調はこの抄出表のなかでの最低値と最高値。抄出表以外のデータは原表を参照。日本の値が平均値よりも大差ない場合は強調しなかった。
- ※アメリカは回答率がガイドラインに達しなかったので参考データとして記載[1]。
第三回TALIS(2018)
2018年のTALIS第3回調査では48か国が参加したが、ドイツ、中国(上海は参加)、前回参加したマレーシアは参加していない[3]。
TALIS(2018)でも、中学校では、1週間あたり平均勤務時間の合計は参加国平均38.3時間に対して、日本は56時間で参加国最長であった。第二回2013が53.9時間だったので、増加したことになる。また、小学校でも54.4時間で参加国最長であった[3]。
- 前回同様、女性教員の割合が参加国最低だった[3]。
- 職員会議はカザフスタンが参加国最長の4.3時間で、日本は二番目に長く3.6時間だった(前回より0.3時間減)。
- 学校運営に関する時間も参加国平均1.6時間であったのに対して日本は2.9時間で参加国最長だった。最短はフィンランドの0.3時間だった。
- 事務時間(書類作成など)も参加国平均2.7時間であったのに対して日本は中学5.6時間で参加国最長だった。最短はフィンランドの1.1時間だった。
- 課外活動(部活動など)も参加国平均1.9時間であったのに対して日本は中学7.5時間と参加国最長だった。最短はスウェーデンとフィンランドの0.4時間だった。
- 一方、新項目「職能開発」では、日本は最短の0.6時間だった。
TALIS(2018)「中学校教員の仕事時間」(単位は残業等含む一週間あたり時間)[3]
|
合計 |
授業 |
授業準備 |
職員会議 |
採点添削 |
生徒指導 |
学校運営 |
事務 |
職能開発 |
保護者との連絡連携 |
課外活動(部活動など) |
その他の業務
|
参加国平均
|
38.3 |
20.3 |
6.8 |
2.8 |
4.5 |
2.4 |
1.6 |
2.7 |
2 |
1.6 |
1.9 |
2.1
|
日本
|
56 |
18 |
8.5 |
3.6 |
4.4 |
2.3 |
2.9 |
5.6 |
0.6 |
1.2 |
7.5 |
2.8
|
カザフスタン
|
48.8 |
15.1 |
9.1 |
4.3 |
4.8 |
3.5 |
2.5 |
3.2 |
3.2 |
2.5 |
3.1 |
2.2
|
アルバータ州
|
47 |
27.2 |
7.3 |
2.6 |
5 |
2.3 |
1.8 |
2.4 |
1.5 |
1.4 |
2.7 |
0.7
|
イングランド
|
46.9 |
20.1 |
7.4 |
3 |
6.2 |
2.5 |
2 |
3.8 |
1 |
1.5 |
1.7 |
2.2
|
アメリカ
|
46.2 |
28.1 |
7.2 |
3.5 |
5.3 |
3.4 |
1.7 |
2.6 |
1.7 |
1.6 |
3 |
7.1
|
シンガポール
|
45.7 |
17.9 |
7.2 |
3.1 |
7.5 |
2.4 |
1.4 |
3.8 |
1.8 |
1.3 |
2.7 |
8.2
|
スウェーデン
|
42.3 |
18.6 |
6.5 |
3.3 |
4.1 |
2.2 |
0.9 |
3.2 |
1.1 |
1.5 |
0.4 |
1.9
|
ポルトガル
|
39.6 |
20.1 |
省略 |
※ |
|
|
|
|
|
|
|
デンマーク
|
38.9 |
19.4 |
7 |
3 |
2.5 |
1.5 |
0.7 |
1.7 |
0.8 |
1.4 |
0.9 |
2.3
|
フランス
|
37.3 |
18.3 |
7 |
2.1 |
4.7 |
1.2 |
0.7 |
1.4 |
0.8 |
1.1 |
1 |
1.8
|
オーストラリア
|
37.2 |
19.2 |
省略 |
|
|
|
|
|
|
|
|
オランダ
|
36.4 |
17.4 |
4.9 |
3 |
3.7 |
2.5 |
1 |
2.4 |
1.9 |
1.5 |
0.9 |
2
|
韓国
|
34 |
18.1 |
6.3 |
2.5 |
2.9 |
3.7 |
1.7 |
5.4 |
2.6 |
1.6 |
2 |
1.8
|
フィンランド
|
33.3 |
20.7 |
4.9 |
2.1 |
2.9 |
1 |
0.3 |
1.1 |
0.8 |
1.2 |
0.4 |
0.9
|
イタリア
|
30 |
16.8 |
5.1 |
3.2 |
3.7 |
1.4 |
1.1 |
1.9 |
1.8 |
1.2 |
1 |
0.9
|
※ 合計勤務時間順。空欄値は省略につき原表を参照。数値の太字強調はこの抄出表のなかでの最低値と最高値。抄出表以外のデータは原表を参照。日本の値が平均値よりも大差ない場合は強調しなかった。
脚注
出典
参考文献
『国際教員指導環境調査』 - コトバンク
関連項目