平成21年7月中国・九州北部豪雨
平成21年7月中国・九州北部豪雨(へいせいにじゅういちねんしちがつちゅうごく・きゅうしゅうほくぶごうう)とは、2009年(平成21年)7月19日から7月26日にかけて、日本の中国地方から九州北部(正確には九州中部地域)にかけての地域を中心に襲った集中豪雨である[1]。名称については、2009年(平成21年)7月27日に気象庁が正式に命名した [1][2]。 概要7月19日から26日にかけて梅雨前線の活動が活発化し、中国地方や九州北部で1953年(昭和28年)6月に発生した昭和28年西日本水害の降水量に匹敵する記録的な大雨を観測した。 豪雨は、山口県・福岡県・長崎県において1時間に80 mmを超える猛烈な雨となったほか、福岡県と長崎県においては、7月24日、5か所の観測地点で1時間の降水量が100 mmを超える降水量を記録[3][4]。福岡市博多区(福岡空港)では19時25分までの1時間に116.0 mmの雨を観測する。そのほか各地でも1時間・24時間の降水量が各地の観測史上最多となる記録的な大雨となった[2]。 また、7月19日から26日までの8日間に大分県日田市で702 mmの降水量を記録したほか、福岡県と山口県を中心に広い範囲で平年同期比700 %以上の降水量となった[5]。 2009年8月25日、政府は、本豪雨を含む6月9日から8月2日にかけての豪雨に伴う農地災害に対して政令に基づく激甚災害に指定することを閣議決定した[6]。 原因気象庁によると、太平洋東側において7年ぶりに6月から発生したとみられるエルニーニョ現象によって地球全体の6・7月の平均海面水温が平年よりいずれも約0.3度高く、観測史上最高を記録、太平洋西側の大気の対流活動を不活発にしていた[7][8]。 それが日本付近への太平洋高気圧の張り出しを弱めることになり、梅雨前線の停滞を招き、対馬海峡付近において南方からの暖かく湿った空気が「湿舌(しつぜつ)」の現象を発生[9]。「テーパリングクラウド」(にんじん雲)と呼ばれる積乱雲が次々と放射状に発達することによって集中的な大雨をもたらしたものと分析されている[10]。湿舌については暖湿流を参照のこと。 被害消防庁によると、10月26日19時30分現在、鳥取・広島・山口・福岡・佐賀・長崎の各県で合わせて死者31名・負傷者55名となっている。また、家屋の浸水や崖崩れなどの被害は中国・九州地方を中心に関東・東北地方にも及んでいる。そのほかにも、大分において川に転落、流されて1名亡くなっている[11]。上記の県での住宅被害が全壊45棟・半壊86棟・一部破損120棟・床上浸水2180棟・床下浸水9229棟・崖くずれ1430か所となり、そのほか13府県においても負傷者2名・全壊3棟・半壊11棟・一部破損74棟・床上浸水11棟・床下浸水326棟・崖くずれ235か所の被害が発生している。 山口県防府市(下右田) (防府市下右田 7月22日) 県内では合計17名の死者が生じている[12]。 7月21日に1時間72.5ミリメートル、日雨量275ミリメートルといういずれも通年での観測史上最多の時間雨量を記録した防府市を中心に県内各地で土砂災害が発生、住宅などの浸水・土石流被害やライフラインの寸断などの被害が見られた。防府市真尾(まなお)の特別養護老人ホーム裏では21日正午頃、大規模な土石流が発生。施設の1階部分が土砂に埋まり、食事を終えた入所者7名が生き埋めとなって死亡した[13] [14]。また、同じ防府市真尾別の箇所でも土石流が発生して3名が犠牲になったほか、防府市下右田の国道262号付近でもほぼ同時期に大規模な鉄砲水による土石流が発生、付近の住民や国道を通行していた車両に乗っていた人など3名が犠牲となった[13]。このほかでも土砂災害による被害や河川の増水による被害などで道路の通行が困難になり、食料品の調達が困難になった地域もあった。 また、山口市の山間部にある下小鯖棯畑(しもおさば・うつぎはた)地区につながる3本の道路が、一時全て7月23日まで通行止めとなったために車の乗り入れが制限され、孤立状態となった同地区内の74世帯208人に対して避難指示がだされる事態となった[15]。さらに、山口市の水源である朝田浄水場がそばを流れる椹野川の増水などにより機器の故障が発生。大内地区においては水道管の破損もあり、7月21日から数日にわたって最も多いときには市内の3万5377世帯が断水する事態となった[16]。これによって、市内においては入浴支援が行われ、湯田温泉や宮野温泉などの入浴料が割引、または、無料開放されたりした。県内では、ほかに、防府市の阿弥陀寺や毛利氏庭園など県内全域で文化財の土砂災害による被害も報告されている[17]。また、田畑が冠水したことにより農作物関連で少なくとも約34億円の損害が生じている[18]。 福岡県福岡県内では7月24日から26日にかけて激しい集中豪雨に見舞われ、篠栗町では土砂崩れによって家屋が倒壊、2名が犠牲となった(このうち今回の豪雨で最後の行方不明者であった1名は11日後になり、自宅から約30メートル離れた場所で、豪雨によって出来た川べりの土砂の中から発見された。)[19][20][21][13]。また、大野城市の九州自動車道・須恵PA - 太宰府IC間77.6KP付近の法面上部の山が崩落し、走行中の自動車が防護壁のコンクリート片混じりの土砂にのみ込まれ、自動車に乗っていた夫婦2名が生き埋めになって死亡するなど、県内全域では10名が死亡する人的被害が生じた[13][22][23]。 また、福岡市中心部では多々良川、御笠川、那珂川、樋井川、室見川などが増水し、洪水のおそれがあるとして1万世帯あまりに避難勧告が出たほか、福岡空港でも滑走路・誘導路・駐機場が冠水して着陸後の飛行機が駐機スポットに入れず、誘導路上で長時間待機しなければならなくなり、機内に乗客が一時閉じ込められる騒ぎもあった。 那珂川上流にある南畑ダム(那珂川町)は7月26日午前からの豪雨でダムが満杯(午前9時100 %、正午140 %)となって決壊の危険性があったため、管理する福岡県側はただし書き操作(氾濫を覚悟した緊急放流)を行うことを決断し、流域市町に通知して避難勧告が出された。結果的に正午ごろから雨が弱まったため緊急放流は見送られた[24]。 佐賀県7月26日、午前を中心に豪雨となり、7月24日からの降り始めからの総降水量が4地点で400ミリメートルを超える。これにより、佐賀市の巨勢川や金立川の堤防が約15メートルにわたって決壊するなど9河川・137か所の堤防決壊や護岸崩壊が発生した。道路においては国道・県道など216か所で法面などが崩壊[25][26]。 長崎県7月27日、佐世保市瀬戸越町での大規模ながけ崩れに伴い水道管3本が破裂して約1万7000世帯が断水[27]。8月1日に断水が完全に復旧した。 影響水産河川から栄養分を含む雨水が有明海に流入した影響から、長崎県では、7月22日、島原半島沿岸の有明海南部で養殖ブリ約1万7000匹が死ぬ赤潮による漁業被害が発生。長崎市沖の橘湾東部においても7月6日・7月7日に赤潮が発生、7月26日に橘湾での拡大を確認した。 7月28日には、熊本県の測定地点全13か所でも赤潮発生の警報値を上回り、長崎県から熊本県に至る有明海沿岸や沖合いの八代海などの広範囲で19年ぶりに赤潮が確認された。天草市と上天草市の八代海では約1万3000匹の養殖ブリが死ぬ漁業被害が発生した[28]。 鉄道鉄道網は21日から22日にかけて山口県内全域で、24日に北部九州で運休が相次いだ。一部では施設の被害も発生しているが、基本的には雨量規制による運行見合わせであり、早急に復旧している。
道路中国自動車道・九州自動車道で崖崩れによる一時通行止めが相次いだほか、国道・県道などが各地で寸断されている。 一般道路一般道路では、大規模な崖崩れなどにより通行止めが相次いでいる。
高速道路九州自動車道で崖崩れが発生しているほか、土砂流出などによる一時通行止めが相次いだ。
航空
イベント各地でのイベントの中止や延期が相次ぐ[52]。
行政の対応政府
国土交通省
自衛隊
消防
警察
その他
脚注
関連項目外部リンク
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