幸福の科学事件幸福の科学事件(こうふくのかがくじけん)とは、宗教法人幸福の科学およびその幹部らが、元信者および代理人弁護士らが行った民事訴訟およびその提訴記者会見が名誉毀損であるとして合計8億円の損害賠償請求訴訟を提起したところ、この訴訟提起が、「批判的言論を威嚇する目的」でなされた不当訴訟であるとして、代理人弁護士に対する損害賠償が命じられた民事裁判の事例である[1]。 請求金額が不相当に高額な場合に、当該請求自体が不法行為となる可能性があることについては複数の判例が存在するが、この事案はその中で、批判的言論を威嚇する目的で名誉毀損を理由とした請求をしたものであり、いわゆる不当訴訟のうちに「批判的言論威嚇目的訴訟」(スラップ)という独自の類型を成立させるものとなった[1]。 なお、元信者および代理人弁護士らが幸福の科学に献金を強要されたとして提起していた民事訴訟は、強制の事実はないとして元信者および代理人弁護士側が敗訴している[2][3]。 経緯
裁判所の判断献金訴訟について東京地裁(平成13年6月29日)は、幸福の科学入会後の元信者の活動や退会までの経緯などから、山口らが記者会見で提示した事実および献金訴訟における主張が真実であると認めることはできないが、山口が献金の経緯などを脅迫行為による強制と判断したことには合理的な根拠があり、これを真実と信じたことには相当の理由があったとして、献金訴訟の提起が違法であるという幸福の科学(本訴原告)の主張を退け、記者会見も、公共の利害に関する事柄に関して公益を図る目的であったとして、名誉毀損を主張した幸福の科学の主張を退けた[4]。 本訴提起について判決では本訴提起に至るまでの経緯や、幸福の科学の批判的言論に対する対応の傾向などについて検討を加えた結果、幸福の科学が本訴を提起した主たる目的は献金訴訟を提起した元信者および山口各個人に対する威嚇であると認定し、「このような訴え提起の目的及び態様は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き、違法なものといわざるをえない」とした。その判断の根拠としては、本訴提起が極めて短期間で為されたこと、請求金額が異常に高額であったこと、幸福の科学の代表者である大川隆法が本訴提起の以前から教団を批判する者に対して積極的に反論してゆく姿勢をもち、その際の攻撃手段・威嚇手段として訴訟を利用する意図を有していたと伺われることなどが指摘された[4]。 以上から裁判所は第一審において幸福の科学に対し山口に100万円を支払うよう命じ、教団が元信者と山口に賠償などを求めた訴訟については請求を棄却した[8][4]。二審の東京高裁は双方の控訴を棄却して一審判決を支持[9][10]、最高裁は幸福の科学の上告を棄却し、幸福の科学の敗訴が確定した[10]。 当事者の見解山口は「攻撃的な訴訟をはっきり違法と認めた判決は異例」と評価[11]。 幸福の科学は判決確定後の時点で教団の「法務室」ホームページにて見解を発表し、裁判所の判断は「全くの誤判」であると主張した[12]。さらに、本訴は「献金訴訟」(幸福の科学の表現では「"強制献金"捏造訴訟」)への反訴を本質とするものであり、
のために止むをえないものであったとしている[12]。また裁判所が「会員と教団は別の存在」としたことも「宗教とその会員との密接不可分の関係という、信仰の根本に関わる特質を何も理解しない」と批判した[12]。 脚注
判例評釈・参考文献
関連項目
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