建築物環境衛生管理基準
建築物環境衛生管理基準(けんちくぶつかんきょうえいせいかんりきじゅん)とは、環境衛生上、良好な状態に維持をするのに必要な措置のことである。建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)(以下法と表記)4条を根拠とする。特定建築物管理権原者は法4条第1項および第2項により、空気環境測定、給水・排水管理、清掃、ねずみ・こん虫の防除、その他環境衛生上の維持管理に努めなければならない。従って、特定建築物管理権原者は、基準遵守義務者となる。 法4条第1項に委任された具体的な基準の内容は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(昭和45年政令第304号)(以下令と表記)2条各項に規定される。また令2条各項の基準を満たすために必要な措置については、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第2号)(以下規則と表記)3条、3条の2、3条の18、3条の19、4条から4条の5の各号に規定される。 なお、管理基準を遵守しなければならない者は、特定建築物の維持管理について権原を有する者であるが、これには、特定建築物の所有者、占有者のほか、これらの者との契約により維持管理業務の委託を受けた業者、法令に基づき維持管理の権原を有するものとされた者等が含まれること。したがって、重畳的に義務者が存在することがある。ただし所有者であっても、賃借人等との契約により、維持管理の権原を賃借人等に移譲しているような場合には、管理基準の義務者とならないこともある。 管理基準の遵守は、特定建築物について義務づけられるものであるが、特定建築物以外の建築物で多数の者が使用、利用するものについては、管理基準に従って維持管理をするように努めなければならないこととされている(法4条第3項)。[1]この規定は、多数の者が使用、利用しないもの(例えば、小規模の事務所、倉庫等)について適用がないことは条文上明らかであるが、これらのほか、法の趣旨からみて工場、病院等特殊環境にある建築物にも及ばないものと考えられる。 基準の特徴
基準の性格
基準の内容空気調和設備または機械換気設備による調整(令2条第1号イロハ)空気調和設備は、エア・フィルターや電気集じん機等を用いて外から取り入れた空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう(同項イ)。詳細は空気調和設備の項目を参照。機械換気設備は外から取り入れた空気を浄化し、流量を調節して供給することができる設備(同項ロ)つまり空気調和設備から温度または湿度調節機能を欠いたものをいう。[2]居室(建築基準法第2条第4項)における基準は次の通り(令2条第1項イ)。
機械換気設備の建築物はこのうち一~三、六、七のみ適応する(令2条第1項ロ)。 空気調和設備・機械換気設備ともに、厚生労働大臣が定める基準(空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準[注釈 2])に沿って管理しなければならない(規則3条)[1] 測定に必要な資格
空気環境の測定測定は特定建築物の使用中に行う。測定点は各階ごとに一箇所以上を選択。その中央部から床上75~150 センチメートルの位置で、測定方法に従い行う(規則3条の2第1号)。また浮遊粉塵、一酸化炭素、二酸化炭素については1日における使用時間中の平均を測定値とする(規則3条の2第2号)。ホルムアルデヒド以外の6項目は2か月以内ごとに1回計測しなければならない(規則3条の2第3号)。ホルムアルデヒドは建築、大規模改修・修繕を終えた最初の6月~9月に1回計測しなければならない(規則3条の2第1号)。[3] 空気調和設備の汚染防止(令2条第1号ニ)空気調和設備がある場合は、病原体によって建築物内の空気が汚染されることを防止する次の措置をとらないといけない。 冷却塔・加湿装置
排水受け空気調和設備内の排水受け(ドレンパン)について、使用開始時および使用を開始したあと一か月ごとに1回点、汚れや閉塞の点検、必要に応じて、清掃を行うこと。前号と同様に使用しない期間については免除される(同第4号)。またそれ以外に年1回は定期的な清掃を行うこと(同第5号)。 給排水の管理(令2条第2号)飲用水の管理(令2条第2号イ)飲用、炊事用、浴用、その他人の生活の用の目的に使われる水は、建築物に供給する場合は水道法第4条に規定する水質基準 [注釈 3]に適合するものを供給することとされる。(令2条第2号イ) ただし旅館業で使用される浴用水は旅館業法で規制されるため、本法の適用対象外(規則3条の19)。供給水は次の通り管理し供給すること(規則4条第1項)。ただしこれらの規定は「水道法第三条第九項に規定する給水装置を除く」とされている(令2条第2項イ)。つまり水道事業者の敷設した水道管から直接分岐して蛇口などから水を供給する場合は適用せず、一旦貯水槽に貯めて水を供給する場合などに適用する。[6]
貯水槽など給水設備の維持管理は、厚生労働大臣が定める技術上の基準(空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準)に従って行わなければならない(規則第4条第2項)。[1] 雑用水の管理(令2条第2号ロ)令第二条第二号イの目的(飲用、炊事用、浴用等)以外に使用する水は雑用水とする。具体的な目的は、水景用、清掃用、散水用、トイレの洗浄用などである。雑用水は人への健康危害防止のため、次の措置をとらないといけない(規則4条の2)。ただし飲用水と同じく水道法第3条第9項に規定する給水装置から供給される水は対象外(規則4条の2第1項)。[11]
雑用水の給水設備についても厚生労働大臣が定める技術上の基準(空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準)に沿って維持管理を行わなければならない(規則4条の2第2項)。[1] 排水の管理(令2条第2号ハ)建築物の排水設備は、その機能が阻害され、汚水などの漏出が起こらないよう、適切に清掃と整備を行うこととされる。排水設備は6か月ごとに1回定期的に清掃を行うこと(規則4条の3第1項)。[13] 排水設備の補修、清掃、その他の維持管理についても、別に厚生労働大臣が定める技術上の基準(空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準)に沿って行うこと(規則4条の3第2項)。[1] 清掃、ねずみ・こん虫の防除(令2条第3号)清掃(令2条第3号イ)建築物の清掃は規則4条の5第1項に従って行うこととされる。掃除は日常的に行うものの他、定期的に(およそ6ヶ月以内ごとに1回)特定建築物全体の大掃除を行わなければならない(規則4条の5第1項)。廃棄物処理、後述のねずみ・昆虫の防除とともに統一的に行うことが望ましい。[14] [13]その他、日常清掃・大掃除については別に厚生労働大臣が定める技術上の基準(空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準)に沿って行うこと(同第3項)。[1] ねずみ・こん虫の防除建築物環境衛生管理基準でいう「ねずみ等」とは、感染症の媒介により、人の健康を損ねる恐れのある生物のこと(規則4条の4)で、ネズミの他にはハエ、蚊、ゴキブリ、ノミ、シラミ、ダニなどが考えられる。[15]ねずみ等の防除は規則4条の5第2項に従って行うこととされる(令2条第3号ロ)。特定建築物においては、ネズミ等の生息調査を6か月ごとに1回行わなければならならず、また調査の結果に基づき、ネズミ等の発生を防止する措置をとること(規則4条の5第2項第1号)。なお技術上の基準(第五節)では、食品を扱う区画や、阻集器、排水槽、廃棄物置き場、その他ねずみ等の発生しやすい区画は2か月に1回、生息調査等を行うこととされる。ネズミ等の防除のために殺虫剤を使用する場合は、薬機法の承認を受けた医薬品や医薬部外品を使用すること(規則4条の5第2項第2号)。防除は、生息調査を重視し、薬剤の乱用を防ぐ総合的病害虫管理の考え方に基づき実施することが望ましい。[16] [17]その他、ねずみ等の発生防止、侵入防止、駆除ついては別に厚生労働大臣が定める技術上の基準(空気調和設備等の維持管理および清掃等に係る技術上の基準)に沿って行うこと(同第3項)。[1] 脚注注釈
出典
参考文献
関連項目外部リンク |
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