情報子会社問題
情報子会社問題(じょうほうこがいしゃもんだい)とは、企業が本社機能として保有すべき情報システム部門を子会社化してITアウトソーシングする事によって、企業のITガバナンスが低下する問題である。 概要情報技術の高度化に伴い、企業の経営戦略におけるITの重要性が高まる中、従業員1000人以上の企業の約4割が情報子会社を保有し[1]、外部委託している状況である。(連結売上高5000億円以上の企業の約7割がIT子会社を保有し、その6割が完全子会社、親会社の出資比率が50%を超えるIT子会社は8割に上る[2])。企業は本体(親会社)の情報システム部門に企画機能を残し、開発・運用機能を情報子会社に移しているため、IT推進体制が分断されている状態である[3]。(矢野経済研究所の2015年の調査によると、情報システム子会社の企画プロセスへの参画比率は50%程度で、情報子会社が親会社にコンサルティングを実施しているという実態となっている[4])。また、親会社と情報子会社のIT機能に重複や欠如が生じて、深刻な状態に陥っているケースもある。これに伴い、迅速なIT戦略の実行が困難な状況に陥り、国際競争力が著しく低下している。 米国の大企業の多くは本体に数千人規模のIT技術者を保有しているが、日本企業は最小限のIT企画要員を配置するのみである。そのため、日本企業が保有するIT技術者は米国企業の10分の1程度となっている[5]。また、別の尺度では企業の総従業員に占めるIT部門の正社員比率が3%以下(情報子会社の正社員を含めると4.6%)という調査結果が示されている[6]。企業の情報システム部門の弱体化により、システム内製が困難になり、コスト高になっても外部委託せざるを得ない企業が増加している。また、内部統制・監査対応やサイバー攻撃対策、データ分析、情報技術分野の研究開発等、情報システム部門に求められる役割が広範になり、伝統的なシステムインテグレーションに留まらない戦略的な視点が求められるようになった。これらの新しいミッションに備えるため、情報システム部門の再組織化が急務となっている。 歴史
問題点
課題
対策
ケース(1)、ケース(2)は事業会社と情報子会社を統合するため、情報システム人材に適した評価制度や待遇、キャリアパスを準備する必要がある。 社会・情報産業との関係東京一極集中と地方IT技術者の減少企業の本社が首都圏に集中していることから、本社機能である情報システム部門や情報子会社は首都圏に集約化される傾向がある。そのため、データセンターの技術者(カスタマエンジニア:CE)を除いたITベンダーも首都圏に集中せざるを得ない状況となり、日本のIT業界の9割は東京に集中していると言われている。(情報通信業の上場企業の83.1%(130社中108社)が東京を中心とする京浜葉圏に立地している[9])。特に問題とされているのは地方IT技術者の減少である。地方に本社を置く企業の場合、情報システムを内製せずに外部調達しようとすると、必要の都度、首都圏のエンジニアを確保する必要があり、コスト高やビジネススピードに対応できないといった問題が発生する。また、外部依存を続けている企業は地方エンジニアの不足から内製が困難となり、フルアウトソーシングせざるを得なくなる可能性がある。[10] 産学連携によるイノベーションの加速イノベーション(技術革新)において情報技術が注目される中、企業の情報システム部門は最小限の企画機能しか持たない組織であるため、情報子会社と合わせても十分な研究開発(R&D)要員を保有していない。そのため、企業はスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学等の研究機関、ITベンチャー企業等と協業することで、不足している研究開発機能を補っている状況である。またIT企業の集積地であるシリコンバレーに共同研究を目的とした子会社を設立するといった動きも見られる。一方、日本国内のIT領域の産学連携は十分に機能しているとは言えず、日本発のイノベーションや日本版シリコンバレー、文部科学省が定めるスーパーグローバル大学との共同研究拠点の設置といった動きは限定的である。コンサルティング会社(ITR)は「デジタルイノベーションを実現するためには、IT部門の拡張機能として位置づけられるか、別部門を設置するかを問わず、企業はこれに対応する機能を保有することが求められる」[11]としている。 脚注
関連項目外部リンク |
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