探偵ゼノと7つの殺人密室
『探偵ゼノと7つの殺人密室』(たんていゼノとななつのさつじんみっしつ)は、七月鏡一の原作、杉山鉄兵作画による日本の漫画作品。『週刊少年サンデー』連載。 本格推理漫画と銘打っており、全体的にダークでシリアスな内容が特徴。それに伴いギャグ・お色気描写も控えられている。また、物語の舞台は近代の日本に近い世界であるが、自衛隊では無く陸軍や軍警察が存在する、衆議院や参議院ではなく「第一議院」となっているなど、ある種のパラレルワールドとなっている。七月が原作を務める漫画作品『ジーザス』『闇のイージス』(どちらも藤原芳秀作画)にも登場する「カダス共和国」「藍空医科大学」などが本作品にも登場している。 ストーリー
一年前、路上で重傷を負っていたところを発見された青年ゼノは、収容先の病院で起こった殺人事件を目覚めた直後に解決したのを皮切りに、多くの難事件を解決して名探偵と呼ばれるようになった。 野球場での殺人事件を解決したゼノは、殺し屋の女子校生・D坂 エイラと共に、高名な建築家・甲斐 七楼が死後に残した「誰でも完全犯罪を成し遂げられる7つの殺人密室」の解明に乗り出す。一連の事件でゼノの過去、「蒼の学院」と呼ばれた秘密組織の謎が浮かび上がってくる。 帝都ドーム野球場「帝都ドーム」で試合中に投手がマウンドで串刺しにされて殺害される。 「犯人はこの中にいます」そう宣言したのがゼノだった。球場にはゼノを狙う暗殺者(エイリ)やら、麻薬の取引を行っている者やらも。 この帝都ドームを設計したのが甲斐七楼。甲斐には「完全犯罪のプランを作成してばらまく」という裏の顔があり、密室殺人の為の仕掛けを施した7つの建造物を設計し、作ったとゼノに宣戦布告を行うのだった。 墓標館甲斐七楼の自宅兼アトリエ「墓標館」にて甲斐七楼が殺害される。 館のカラクリ、殺害の方法、犯人を解き明かしたゼノに甲斐が生前に残した「第一の殺人密室」をクリアしたことの音声メッセージが流れる。 創修音楽大学ゼノを模した人形による首吊りがあったことからゼノとエイラは創修音楽大学を訪れる。この大学キャンパスの建物群もまた甲斐の手によるものだった。 果たして学長が密室の状態で殺害される。大学のキャンパス自体は巨大な密室であったことを見抜いたゼノは、そのカラクリを解き明かす。 やたがらす甲斐羽美の下に送られてきた豪華寝台列車「やたがらす」への招待券。ゼノとエイラも「やたがらす」に乗り込む。 やたがらすの車両設計もまた甲斐の手によるものだった。やたがらすには軍警察と、軍警察が保護対象としている陸軍中将、軍警察総監、元軍人の議員。陸軍中将が一等客室内で溺死する。客室を満たすのに必要な1万リットル以上の水をどこからもってきて、どこに消したのか。ゼノは、そのカラクリを解き明かす。 スナイパー事件元軍人の凄腕狙撃兵2人によって臨海公園がジャックされる。互いに死角を補う位置にいる2人に警察の突入もままならずにいた。2人の真の目的がゼノであり、ゼノの殺害ではないことを見抜くと、エイラに自分を狙撃させ2人が動揺した隙を突く。更にゼノは2人が数年前に隠神島で起きた軍用機墜落による毒ガス事故で余命が短く、残された家族に金銭を残すため高額報酬の依頼を受けたことを見抜くと、遺族に出所不明の金銭が渡った場合は口座凍結などを行うと脅しをかけた。 さらにゼノはこの事件の首謀者が2人に狙撃されたふりをしてその場にいたことを見抜き追い詰める。首謀者はゼノを「トモロオ」と呼び、自らを「キノオ」と名乗って姿を消した。 隠神島隠神島に住む財閥当主・久賀一蔵が行方不明になったとのことで、事件解決にゼノが呼ばれる。 しかし、久賀一蔵は甲斐七楼の父親でもあり、久賀家の別邸も甲斐が作ったものだった。その閉ざされた別邸の中で一蔵の孫である久賀真奈美の許嫁が死体で発見される。島に伝わる童歌をなぞるように連続殺人事件へと発展してゆく。 バロンとの邂逅確認のため「墓標館」を再び訪れたゼノは「闇の犯罪コーディネート組織」とその首領バロンと邂逅。 バロンからゼノ自身も過去に関連していたと思われる「蒼の学院」の情報を得る。 蒼馬町ゼノとバロンをAI運転による無人トラックが襲う。道路の信号や電車の信号までもあやつるハッカーからの依頼でゼノとエイラは蒼馬町へ。 蒼馬町はAIを利用した実験都市であったが、AI操縦の除雪車やドローンによって殺人事件が起こっていた。蒼馬町も甲斐との関わりはあったが、殺人密室ではなかった。 ゼノはこの事件の犯人・谷口タカシを突き止めるが、谷口には逃げられる。 幻影劇場劇場で、切り落とされた自分の首を持つように客席に座って殺されていたのは、蒼馬町でAIを誤認させ殺人を行っていた谷口タカシだった。 この劇場もまた甲斐の設計であった。 カラクリを見抜いたゼノは観劇中のツワブキ首相の殺害を防ぐ。 要塞島エイラの父親・久瀬史郎からの情報でゼノたちは軍の管理下にある要塞島へと向かう。要塞島もまた甲斐の設計による改修が行われており、真空状態にさらされたかのような密室殺人が連続で起きていた。 犯人、および殺害方法を暴いたゼノは要塞島に隠されていた機密書類、「蒼の学院」の書類を手に入れる。 首相官邸要塞島から、直接ツワブキ首相に呼びつけられたゼノであったが、官邸内では墓標館と仕掛けによって、多くの人が負傷していた。首相官邸こそが甲斐の7番目の殺人密室であり、これまでの6つの仕掛けを集大成したものであったのだ。 公安が突入するが、首相官邸の地下通路にある様々な罠で多くの公安警察官が犠牲になる。地下室の奥には罠に追い詰められたツワブキ首相と、首相を詰問する息子のツワブキ・リヒト。ゼノはリヒトと会話し、2人がガーデンという組織に育てられた子どもの生き残り、トモロオ(ゼノ)とキノオ(リヒト)であり、殺人狂であったリヒトの記憶を「蒼の学院」の未完成の技術でキノオに移植したのだということが判明する。隙をついて首相はキノオ(リヒト)を撃ち、キノオ(リヒト)は地下室の水路に飛び込い、ゼノもキノオを助けようと飛び込む。 捜索の末、ゼノは見つかるが意識不明。キノオは見つからずに捜索は打ち切られる。 病院のベッドの下で意識を取り戻したゼノは、状況から自分と似た背格好の人物、すなわちキノオが自分を救ってくれたことを察し、探偵業に復帰する。 「犯人はこの中にいます」 登場キャラクター主要人物
甲斐家
ガーデン関係者「ガーデン」は優秀な人材の細胞から作られた人間を育てており、そこで育てられる子どもたちは「蒼の学院」が開発した技術を用いて重要人物の記憶を写し、いわば若返りを行うための「商品」である。
警察・軍関係者
創修音楽大学
やたがらす乗務員・乗客
殺人密室甲斐七楼が作り上げたあらかじめ殺人のための仕掛けを施した7つの建造物。それを使えばだれでも完全犯罪が可能となる殺人のための密室であることから、もはや密室殺人ではないとしてゼノにより名付けられた。 墓標館の事件解決の際、甲斐七楼が遺したテープが流されたことでマスコミにも知られ、世間で多く取り上げられて甲斐七楼が手掛けた建築物は調査がされたが発見されなかった。なお複数の建造物などを組み合わせた大掛かりなものも仕掛けを動かすことで殺人を可能とできれば殺人密室とされ、仕掛け次第では一度きりでなく繰り返し使用することができる殺人密室も存在する。また、ここで言う殺人密室の7つの建造物とは甲斐七楼が最高傑作と称したもので、密室ではないものの1話で使用された帝国ドームなど、甲斐七楼によって意図的に殺傷能力のある欠陥や仕掛けが設計された建造物は他にも存在する(1話の犯人の証言から、5年前の古いドームにも仕掛けがなされていた)。 ちなみに作中でゼノが遭遇する事件は殺人密室が使用されたものではない事件(殺人密室の事件に関係している場合もあるが、全く関係がない事件もある)もある。
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出典
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