教派別のキリスト教用語一覧(きょうはべつのキリストきょうようごいちらん)ではキリスト教の日本語における用語を、教派別・分野別に一覧表にして扱う。相当する外国語として英語による語彙も一覧に掲載する。
日本におけるキリスト教は、東西教会の分裂(8世紀頃から13世紀頃にかけて)と、西方教会内の分裂である宗教改革(16世紀頃)が起きた後に宣教されている。すなわち教派の分裂が画定された後に宣教されたことを意味する。
カトリック教会・正教会・聖公会・プロテスタント諸派といった教派ごとに翻訳が展開されるという歴史的経緯があることから、日本語以外の言語では教派ごとに違う言葉を用いていなくとも、日本語では全く違う訳語を教派ごとに使用するケースが今日に至るまで少なくない。また、教派ごとの概念の違いが訳語に反映されているケースも多く、単なる言い換えでは対応出来ない場合もある。詳細はそれぞれのリンク先記事を参照。
本項ではこれら教派ごとに用いられている日本語の用語・語彙の対照整理を行い、一覧対照表を作成、4つの教派(正教会・カトリック教会・聖公会・プロテスタント諸派)の間で相当する語彙を示す。
一覧・対照表の凡例と注意
- ある教派の用語「甲」が別の教派の用語「乙」に「相当する」からといって、教派ごとに伝統ないし歴史的経緯が異なる以上、用語の内実にも相違があるのであり、相当する用語の間でも概念や使用法が全く同一のものではない。
- 例 - 正教会の克肖者とカトリック教会の尊者は、英語では同じく"Venerable"であるが、正教会における克肖者は聖人の一称号であるのに対し、尊者はカトリック教会における列聖まで至る最初の段階にある者であり、その内実は全く異なっている。
- 上記と同様の理由で、ある教派では「甲」と表現されていても別の教派では「乙」と「丙」に概念が分割されている場合もある。こうした語彙においては、対照表の内容はケースバイケースで処理するが、詳細はリンク先記事を参照。
- 相当する外国語の語彙としては、スペース等の問題から止むを得ず一般に通用性の高い英語によるものを示すが、正教会ではギリシャ語やロシア語等で書かれた文献の方がより豊富であるなど、英語がどの教派にとっても概念の整理等にあたって利便性の高い言語であるという訳ではない。
礼拝・典礼・奉神礼
機密・秘跡・聖奠・礼典
聖公会では聖餐と洗礼のみを聖奠(サクラメント)とし、他の5つは聖奠的諸式と位置づける[8]。
祈祷文
葬儀・死者のための祈り
コミュニオン
「コミュニオン」には大きく分けて「信徒の交わり」と「聖餐にあずかる」の意味があるが、前者と後者に多くの教派で異なる訳語を当てている。日本聖書協会訳聖書・新改訳聖書では前者に交わりの訳語を当てている。後者には「聖体拝領」「陪餐」「領聖」の訳語が各教派で用いられる。
称号・役職
教職者
各教派ごとの位階がそのまま他教派で相当する位階と同格ないしは同義であるわけではない(むしろ異なることがほとんどである)。
聖人関連
聖人の称号を多用するのは正教会とカトリック教会。聖公会ではそれほど用いられない。またプロテスタントにはルーテル教会の一部を除き、正教・カトリックのような聖人概念が無い。
また、カトリック教会の尊者と正教会の克肖者はいずれも他言語では同一の語彙が当てられているが(例:英語"Venerable")、両概念は著しく異なるものである。カトリック教会の尊者・福者は聖人の前段階であるが、正教会の克肖者・至福者は聖人の一称号である。
教役者・牧会者の信徒に対する職務
建物
脚注
注釈
- ^ 「主の晩餐」の語彙は日本聖書協会訳の新共同訳の見出しから採った。「最後の晩餐」と呼ばれることがあるが、正教会ではこれを「最後」とは捉えないため「機密制定の晩餐」と呼ぶ。詳細は最後の晩餐を参照。「主の晩餐」はカトリック教会[1]、正教会[2]、聖公会[3]、プロテスタント[4]のいずれでも用いられる語彙であるが、最後の晩餐(機密制定の晩餐)を指す場合と、現代に継承されて行われる聖体礼儀・ミサ・聖餐式まで含めた語義を持つ場合があるので、文脈でこれを識別する必要がある。
- ^ 東方典礼カトリック教会では行われているが、日本のカトリック教会における日本語定訳は記事作成時点で不明。
- ^ 基本的にプロテスタントには聖体礼儀を含む東方奉神礼の伝統は無いが、エヴァンジェリカル・オーソドックス教会のような一部例外は存在する。
- ^ 宗教改革において「教皇派のミサ」を否定(シュマルカルデン条項、ウェストミンスター信仰告白など)。ただし、プロテスタントでも教派によって聖餐論に相違がある。
- ^ エフハリスティアは現代ギリシャ語"ευχαριστία"からの転写。聖体機密を包含する儀礼の名は聖体礼儀[6]。
- ^ 主の晩餐とも[7]。
- ^ Holy Communion、The Lord's Supperとも
- ^ ゆるしの秘跡は、かつては「告解」と呼ばれていた。
- ^ 婚姻の秘跡とも呼ばれる。なお、カトリック信者同士の結婚のみが秘跡であり、ミサによって行われる。
- ^ 病者の塗油の秘跡は、かつては「終油の秘跡」と呼ばれていた。
- ^ 中世以降から現代までのギリシャ語読みからの転写
- ^ ラテン語読みに由来
- ^ 正教会における葬儀前夜の祈りはパニヒダとして伝統的な形態であり英語ともpanikhída (Memorial service)で対応するが、その他の教派の外国語との対応関係については記事作成時点では詳細不明。
- ^ レクイエム・ミサではない典礼を以て代えることがあり、この際の葬儀はレクイエムとは呼ばれない。
- ^ レクイエム・マス(聖餐式)ではない礼拝を以て代えることがあり、この際の葬儀はレクイエムとは呼ばれない。
- ^ パニヒダとレクイエムとでは内容が全く異なる。
- ^ 改革派以降のプロテスタントは死者のために祈ることはない[19]。ウェストミンスター信仰基準は、死者のために祈ってはならないとしている。但し正教会・カトリック教会・聖公会とは違う意味合いではあるものの、通夜・葬儀・召天者記念礼拝等を行う教会は多い。これらは、死者の救済を生者が執り成して嘆願する行為ではなく、単に記念するためのものである。
- ^ 「キノニア」…カリストス・ウェア府主教の講演:「私は誰?」"Who am I?"より。正教会ではギリシャ正教会をはじめとして生きたギリシャ語を現代も用いており、現代ギリシャ語による転写を頻繁に用いる。
- ^ 基本的にプロテスタント諸派の多くには聖職者の概念および位階は存在しないが(牧師も参照)、エヴァンジェリカル・オーソドックス教会などのように、主教・司祭といった位階を有する教派・教会も僅かに存在する。
- ^ 「パパ」…正教会においてはアレクサンドリア総主教の称号。ローマ教皇は現在正教会との交わりにはない。「パパ」の権威・権限についての解釈につき、東西教会の間に著しい差がある。
- ^ 日本には存在しない。
- ^ スコットランド聖公会と、歴史上その流れを汲んだ米国聖公会において
- ^ ルーテル教会など一部のみ。定訳なし
- ^ 日本には存在しない。
- ^ ルーテル教会など
- ^ ルーテル教会・メソジスト監督教会など
- ^ 現在の日本のカトリック教会において「主席司祭」の用例を確認できておらず。
- ^ 概念はプロテスタントの牧師(Pastor)と全く異なり、一箇教会の主任聖職者たる司祭または主教のことを指す。
- ^ 概念は司祭と全く異なり、英語でも「牧師」は普通"Pastor"と称されて、"Priest"(司祭)とは呼ばれない。
- ^ 日本基督教団などにおいて/"Priest"とは全く概念が異なる。
- ^ 現在の日本のカトリック教会において「助祭長」の用例を確認できておらず。
- ^ 記事作成時点で、日本語表記「修道助祭」のみ用例を確認。カトリック教会において英語表記"Hierodeacon"の使用例が確認出来ておらず。
- ^ ルーテル教会などにおいて
- ^ 日本基督教団などにおいて
- ^ かつては「副助祭」という聖職位階があったが、第2バチカン公会議による改革で1973年に廃止され、現在は「朗読奉仕者」「祭壇奉仕者」に分担されて受け継がれている[25]。
- ^ かつては「読師」と呼ばれる下級聖職とされていたが、現在は「朗読奉仕者」という奉仕職として位置づけられている。
- ^ 長老制教会、会衆制教会などにおいて/教役者ではなく信徒の役職である。
- ^ 「祭壇奉仕者」は、かつて「侍祭」と呼ばれていた下級聖職があらためて奉仕職として位置づけられているもので、通常は司教によって選任される。これに対して「侍者」は、職名ではなく単にミサなどの時に祭壇上で司祭を補助する役割のことで、特別に選任されるものではなく、「祭壇奉仕者」とは意味合いが大きく異なる。侍者は一般信徒が務めることが多いが、助祭や祭壇奉仕者が務めることもある。
- ^ 古くは「天主堂」とも呼ばれていた。現在のカトリック教会では正式名称として使われることはないが、いまも大浦天主堂、浦上天主堂などの用例がある。
- ^ カトリック信者の間では、聖堂のことを「おみどう(御御堂・御聖堂)」と呼ぶことも多いが、これはあくまでも会話の中でのみ用いられる通称・呼称で、正式名称や表記として使用されることはありえない。
- ^ 本来は病院や学校などの施設に附属する礼拝施設を指すが、教会の聖堂を「礼拝堂」と呼ぶ場合もある[31]。
出典
関連項目
外部リンク