新聞拡張団
新聞拡張団(しんぶんかくちょうだん)とは日本の新聞販売において、新聞社や新聞販売店とは別の組織で新聞の訪問勧誘を行う団体[1]。新聞拡販団とも呼ばれる[1]。 概要新聞社や新聞販売店とは独立した組織である[1]。通常、団長と呼ばれる人物が団員を統率し新聞販売店から委託を受けて新聞購読契約の勧誘のために地域住民宅を訪問する。契約を取った数に応じて新聞販売店から報酬を受け取る[1]。新聞社から委託を受けている場合もあるが[1][2]、多くの場合契約勧誘を行う新聞はその時その時の契約によって変わる[2]。 強引な契約方法や、解約を巡るトラブルが多数発生している[1][3]。基本的には恫喝や威圧による勧誘を迫る手法であり、過去には少女売春やピストルの密輸にまで手を出す新聞拡張団もあったり[4][5]、新聞契約を断った会社員を絞殺して現金を奪うような事件も起きているが[2]、新聞業界の「必要悪」としてその存在は今日まで受け継がれている[2]。 新聞拡張団の問題行為勧誘員が新聞契約という勧誘目的を秘匿して住人を訪問し、断りにくい状況にしたうえで契約を迫りトラブルになるケースが多い[6]。日本では、新聞販売とは特定商取引に関する法律を始めとする各種法律、法令を無視した強引な勧誘・売り込みが横行しているとの認識があり、新聞拡張団がその担い手であるとの非難もあるが、新聞がその問題点について記事を掲載することは少ない[5]。新聞の勧誘は暴力団の縄張りも関係することもあり[1]、暴排条例が施行される以前から新聞拡張団と暴力団との関係を指摘する声もある[1][7]。 新聞社および新聞販売店は、勧誘行為は外部団体(新聞拡張団のこと)に委託しているので関係ないという姿勢で臨みがちである[8]。 過酷な団員の管理団員についても、過酷な管理が行われ、失踪する団員が後を絶たないとされる[9]。失踪した団員には懸賞金が掛けられ、業界内の新聞で指名手配される[9]。新聞購読者が契約途中で解約した場合は、勧誘した団員の負担として成果報酬の給料から天引きされる[9][10][11]。このため団長や団員間での暴力事件や殺人事件を含むトラブルが発生している[12][13][14]。団員の定着率も悪く、違う拡張団に移ったり、短期間で離職する団員も多い[15][14]。 用語
背景新聞拡張団のような団体が生まれ、様々な問題を引き起こしているにもかかわらず新聞社が根本的な対策をせずに今日までその構図が存続して新聞界の“必要悪”として根付いているのには以下のような背景があるとされる[2]。
勧誘の手口訪問目的の秘匿「お届け物です」などと宅配便の配達を装って勧誘する場合がある[8]。他にも「近所の者ですが挨拶回りに伺いました」、「引っ越してきた者ですが挨拶に伺いました」などと近隣住民を装う手口や「この地域のリサイクル担当になりました。古新聞や古雑誌、不要な家電製品などありませんか?」などと資源・廃品回収業者を装う手口もある[6]。特定商取引に関する法律の第3条には「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立って、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない」とあるが、これらの行為は特商法を無視して広く行われている[6]。 違法な景品の提供「不当景品類及び不当表示防止法」(以下、景品表示法)の「新聞業における景品類の提供に関する事項の制限」には、新聞の契約時における景品は取引価格の100分の8または6か月分の購読料の100分の8のいずれか低い金額の範囲内にされるとあるが[6]、これを超える量の景品を提供して契約を迫るケースがある[6]。 長期契約の強要や解約時の景品返却要求数年に渡る長期間の契約を求めるというケースも横行している[6]。中には12年の長期契約を結ばされたケースも相談されている[17]。また解約しようとすると、景品相当の現金を要求されたり、同じ景品を購入して返却するように求められる場合がある[17]。9年間契約させられ、老人ホーム入居のため残り6年半で解約を申し出たところ、10万円近く景品代の全額を返却するように求められたケースもあった[17]。1か月だけの契約という話だったのに、1か月後に解約しようとすると、最低でも3か月購読しないなら景品を返品しろと手のひらを反す[18]。 長時間の居座り新聞購読の意思がないことを伝えても長時間住人宅に居座り帰らないなど[6][8]。「契約するまで毎日来るぞ」などの嫌がらせをして居座ったして団員が逮捕される事件も起こっている[15]。 嘘の説明や同意を得ない契約書の作成解約しようとすると、残期間分の新聞購読料として10万円支払わないと解約できないなどの虚偽説明を行う[17]、1か月だけ購読という話で白紙の契約書にサインさせ、販売員の方で勝手に数年間にわたる契約と契約書に記入するというケースが知られている[17]。アンケート調査だと偽って契約書にサインさせる[17]、無料だと嘘をつき契約書にサインさせる[8]、しつこい勧誘を止めるために形式上の契約書であると騙す[8]など。 トラブルに巻き込まれる住人の傾向全国消費生活情報ネットワーク・システムへの相談件数の統計では、年齢別では70歳代が最も多く、次いで80歳代、60歳代の順となっており、60歳以上が全体の半分以上を占めている[17]。平均年齢は2003-2012年の9年間で15歳上昇し、61.7歳となっており、高齢者がターゲットになる傾向が見られる[17]。男女比では男性が約40%、女性が約60%で圧倒的に女性の割合が高くなっている[17]。ネット情報の普及により1人ぐらしの単身アパートでは新聞を契約してくれる住人がいないため、高齢者や家族向けアパートの住人、既に他紙を購読中の住人が狙われやすいとされる[16]。 対策国民生活センターは以下のように指導している。
登録制度の導入1993年、朝日・毎日・読売・日経・産経・東京の6新聞社によって新聞セールス近代化センター(2008年6月に、「新聞セールスインフォメーションセンター」と改称)が設立され、団員の登録が義務付けられるようになった[17]。2005年現在で、前記6社の合計で9,486人の人員が登録されている。しかし、拡張団として審査・登録は容易で、団の人数、団長の本籍地、事務所の所在地などを記入した書類を提出するだけとなっている[1]。 法人化の流れ2000年代になり、それまでの新聞拡張団を法人化する動きが朝日新聞を筆頭に始まった[19]。法人化された新聞拡張団は新聞業界では「セールスチーム」という呼び名が使われることもあるが実態は以前と変わっていないとされる[19]。 国民生活センターの要望国民生活センターや全国消費生活情報ネットワーク・システムにも、新聞の勧誘に関する相談は毎年多数寄せられている[6]。平成12年に独立行政法人国民生活センターは日本新聞協会に要望を送ったが[6]、その後も新しい手口の勧誘について相談が来るなど、新聞契約をめぐってのトラブルは継続している[6]。その件数は全国消費生活情報ネットワーク・システムだけで平成15-25年の10年間、毎年1万件前後の件数になっており、日本新聞協会へ要望を送ったにもかかわらず減少傾向はみられない[17]。平成25年にも国民生活センターは日本新聞協会および新聞公正取引協議会に事態を改善するように要望書を送っている[17]。 出典
参考文献
関連項目
外部リンク
|
Portal di Ensiklopedia Dunia