旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律(きゅうゆうせいほごほうにもとづくゆうせいしゅじゅつとうをうけたものとうにたいするほしょうきんとうのしきゅうとうにかんするほうりつ、令和6年10月17日法律第70号。通称:強制不妊補償法)は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する補償金等の支給に関する日本の法律である。 2019年(平成31年)4月24日に施行された「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が、2024年(令和6年)7月3日の最高裁判所大法廷判決(国家賠償請求訴訟の欄を参照)を受け、同法を全部改正する形で2024年(令和6年)10月17日に公布施行された。 ここでは、前身である旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律についても解説する。 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律は、行政機関の文書以外では、強制不妊救済法(きょうせいふにんきゅうさいほう)、旧優生保護法補償金支給法(きゅうゆうせいほごほうほしょうきんしきゅうほう)などの通称で呼ばれることが多い。 成立の経緯国家賠償請求訴訟→「旧優生保護法違憲国家賠償請求訴訟」も参照
2018年(平成30年)1月30日、優生保護法による強制不妊手術を受けた宮城県在住の60代女性が、個人の尊厳や自己決定権を保障する日本国憲法に違反するとして、国家賠償を求めて仙台地方裁判所に提訴した[3]。 この原告女性の代理人弁護士を始めとする184人の弁護士によって、2018年(平成30年)5月27日、全国優生保護法被害弁護団が結成された[4]。2019年(令和元年)5月15日時点で、全国規模の一斉電話相談を5回実施するなど、被害者の救済に向けた全国的活動を行っている[5][6]。 2019年(平成31年)3月5日時点で、同様の国家賠償請求訴訟が、札幌・仙台・東京・静岡・大阪・神戸・熊本の7地方裁判所に提起されている。原告は、60代から80代までの男女20人にのぼる[7]。 2024年5月30日、旧優生保護法下で、聴覚障害のある夫(故人)が不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、福岡県の妻らが国に損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁は1644万5千円を支払うよう国に命じた。同種の訴訟は全国12地裁・支部で起こされ、一審判決は13件目。うち違憲判断は11件目、国への賠償命令は6件目[8]。 2024年7月3日に最高裁判所大法廷が、旧優生保護法中のいわゆる優生規定(同法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項)を憲法13条、14条違反と判断し、国に対し賠償を命ずる判決を言い渡した。 法整備に向けた国会の動き宮城県在住の60代女性の提訴を受けて、2018年3月6日には、超党派による「優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟」(会長:尾辻秀久元厚生労働大臣)が[9]、同年3月13日には、与党による合同ワーキングチーム(座長:田村憲久元厚生労働大臣)が[10]、それぞれ発足した。 これらの検討を経て、2019年4月10日に、衆議院厚生労働委員長から提出され、4月11日に衆議院、4月24日に参議院をそれぞれ全会一致で可決された。しかし、前文に「真摯に反省し、心から深くおわびする」とするものの国に損害賠償責任があることを前提とするものではなかった。 2024年7月3日の最高裁判所大法廷判決を受けて、2024年10月1日に召集された第214回国会において、10月7日に衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長提出法案として、謝罪の言葉を前文に明文化し、損害の迅速な賠償を図るための補償金等の支払いを定めた「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案」を提出、同日衆議院で全会一致で可決、10月8日に参議院で全会一致で可決、成立した。 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律構成
支給対象者と額および申請期間支給対象になる人優生手術等を受けた生存する本人で、具体的には次に該当する人である(第2条第2項)[11]。
支給対象にならない人母体保護や疾病の治療を目的とした、優生思想に基づかないことが明らかな不妊手術を受けた人。厚生労働省は一例として、次に該当する人などとしている[11][13]。
また、優生保護法が改正された現行の母体保護法下など、優生保護法が施行されていた期間(1948年9月11日~1996年9月25日)外に、優生思想に基づいた不妊手術または放射線の照射により、生殖機能を失わせる手術を受けた人は、支給対象にはならない[14]。 支給額320万円(第4条) この一時金は、非課税である。また、老齢年金、障害年金、生活保護制度の最低生活費などの公的扶助の受給者も、受け取ることができる(第15条)。 支給申請期間2019年4月24日から2029年4月23日までの10年間(第5条第3項)。ただし旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律の施行により2025年1月16日で終了。 受付・相談窓口各都道府県に受付・相談窓口が設置されている。また、こども家庭庁には制度全般に関する相談窓口が設置されている。 ・こども家庭庁旧優生保護法一時金に関する相談窓口 電話:03-3595-2575(10:00~17:00、月~金、土・日・祝日・年末年始を除く) ファックス:03-3595-2753 メール:ichijikin@cfa.go.jp また、優生保護法被害弁護団の相談窓口でも、相談することができる。 なお、2019年4月24日付で、厚生労働省子ども家庭局母子保健課長が、各都道府県母子保健主管部(局)長に宛てた、一時金の請求等に関する事務の取扱いについての通知には、「相談支援」の項目に、「請求者が相談・請求をしやすい体制整備を都道府県において行うこと」とある[15]。 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律構成
支給対象者と額および申請期間支給対象になる人
支給額補償金1500万円(旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者) 500万円(特定配偶者) (第4条) 優生手術等一時金320万円(旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者で、施行日において生存者)(第11条) 優生手術等一時金200万円(旧優生保護法に基づく人工妊娠中絶等を受けた者であって、施行日において生存者)(第16条) 非課税等補償金、優生手術等一時金及び人工妊娠中絶一時金の支給を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない(第26条)。非課税である。また、老齢年金、障害年金、生活保護制度の最低生活費などの公的扶助の受給者も、受け取ることができる(第27条)。 支給申請期間2025年1月17日から2029年1月16日までの5年間(第5条第3項) 出典
参考文献
外部リンク |
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