氷結鏡界のエデン
『氷結鏡界のエデン』(ひょうけつきょうかいのエデン)は、細音啓による日本のライトノベル。イラストはカスカベアキラが担当している。富士見ファンタジア文庫(富士見書房→KADOKAWA)より2009年9月から2014年3月まで刊行された。『ドラゴンマガジン』にも不定期で短編が発表されている。2012年7月時点で原作小説の累計部数は56万部を記録している[3]。 前作『黄昏色の詠使い』に続き、作者オリジナルの架空言語(セラフェノ音語の派生形)が用いられている。 メディアミックスとして、2010年8月2日更新の富士見ファンタジア文庫公式サイトで、ドラマCD化が発表された。同年12月29日発売。『月刊少年シリウス』(講談社)2012年8月号よりコミカライズ版が連載開始。 あらすじ「魔笛」という力を持つ謎の存在「幽幻種」という脅威が存在する世界。人々が生きることができる地は、巫女の祈りによってなる「氷結鏡界」に守られる「浮遊大陸オービエ・クレア」のみであった。 オービエ・クレア第二居住区の喫茶店に居候する少年シェルティスは、かつて天結宮(ソフィア)で氷結鏡界を守る巫女のために戦う護士として双剣を振るっていた。しかし、とある任務中の事故で浮遊大陸から穢歌の庭へ落下、誰もが彼の死亡を確信した。 だが1年後、彼は浮遊大陸へ奇跡の生還を果たす。その身に、魔笛を宿して。 登場人物※声はドラマCDのもの メインキャラクター
友人・知人
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沁力と魔笛
- 沁力(しんりよく)
- 人が生まれつき持っている力。魔笛と反発し、浄化することができる。
- 用途によって、結界系・降臨系・領域系・礼讃系・洗礼系がある。
- 魔笛(まてき)
- 本来、穢歌の庭や幽幻種が持っている術式。濃紫色をしている。様々な作用があり、単に有害なだけでなく、発狂(精神操作)、昏睡状態にする作用もある。
- エルベルト共鳴
- 沁力と魔笛が互いに反発、共鳴しあう現象。沁力と魔笛、両方の力が圧倒的に強くなければ起こらない。また浮遊大陸が浮いているのは、穢歌の庭の魔笛と、氷結鏡界の沁力が触れ合って起きたエルベルト共鳴によるもの。
- 物理現象をも捻じ曲げ、電光のような火花が散る(シェルティスの魔笛とユミィの沁力・ツァリの沁力での発生が確認されている)。
- 第七天音律(ソフィア・コード)
- 皇姫と巫女だけに伝わる神秘の旋律にして、氷結鏡界を支える祈りの歌。
- 現在は皇姫サラの沁力に合わせて編曲されている。
- 第七真音律(エデン・コード)
- シェルティスの保有する魔笛。穢歌の庭最深部で流れている。魔笛の中でも相当強力なもので、沁力を無効化・幽幻種を使役することもできる。
- 第七天音律の対になるとユミィは考えている。
オービエ・クレア
地上から上空1万メートルに位置する浮遊(ふゆう)大陸にして、この世界の名称。巨大な大陸と、無数の浮遊島(ラグーン)によって形成される。すべては1000年前から巫女たちが唱える結界系沁力術式『氷結鏡界(ひようけつきようかい)』によって支えられ、人はこの中でしか生活することができない。
浮遊大陸自体は以前から存在したが、1000年前に氷結鏡界が張られる前は盛んに幽幻種が侵攻し、人々を襲っていた。
また、単一民族ではなく、様々な民族が混在する多民族地域である。
いくらかの区分けされており、『天結宮』を中心に外側へ向かって、『居住区』『自然区』『生態生育野(ビオトープ)』の3つ地区がある。
沁力が発達する中で、航空機やスーパーコンピューターなど、科学技術も発展している。
- 天結宮(ソフィア)
- 浮遊大陸オービエ・クレアの中心に聳え立つ塔で、最上階は291階。
- 氷結鏡界を支える中心であり、そのための巫女や護士を養成する護法院。
- 階級順に護士候補生⇒正護士⇒錬護士⇒千年獅と、巫女見習い⇒巫女の隊員約1200人と、備品の管理や彼らを補佐する職員およそ1万人で組織されている。
- 塔制局、沁理局、総務局、機工局、環境局、護法院などの機関がある。
- 実は天結宮の頂上と穢歌の庭は繋がっており、第九鏡面までのエデンと足して、300階になる。
- 結界の巫女
- オービエ・クレアを守る氷結鏡界に祈りを捧げる巫女のこと。皇姫(おうひ)サラを筆頭に序列1位から5位までの計6人のことを指す。基本的に皇姫サラを除く5人のうち2人が結界の巡回を、残る3人と皇姫が結界を支えている。
- 巫女見習い(みこみならい)
- 名前の通り、巫女の見習いのこと。一般人の中から選ばれる。天結宮の正式な隊員の証であり、巫女に続く階段でもある階級。
- 千年獅(せんねんし)
- 結界の巫女につく専属護衛。錬護士の中から巫女の信頼が最も厚い者が選ばれる。皇姫の護衛は主天と呼ばれる。
- 錬護士(れんごし)
- 天結宮の護士の中でも精鋭が集まる階級。千年獅とほぼ同等の実力を有す。3年前、シェルティスがレオンと共に上り詰めた階級でもある。
- 正護士(せいごし)
- 天結宮の正式な護士で、巫女見習いと同じ階級。数年前まで正護士に選ばれるための制度は実績と実力のみが物を言うものであったが、制度が変更され、緊急時に部隊で協力できる護士が選ばれるようになった。
- 護士候補生(ごしこうほせい)
- 正護士になる前の階級。正式な天結宮の隊員でもない一番位の低い階級であり、一般人の中から立候補で選ばれる。
- 制度が変更され、現在は「褒賞システム」と呼ばれる制度を採用している。任務などをこなし、褒賞ポイントを一定の量まで溜めることで正護士になることができる。
- 統政庁(とうせいちょう)
- 一般的な行政を司る組織。国民の支持が天結宮ばかりに集中することを快く思っておらず、かねてから折り合いが悪い。
- 物事の全てを記録する、ミクヴァの緋眼を所有。
- ミクヴァの緋眼(ミクヴァのひがん)
- この世で起こったすべての出来事を記録する赤く、卵のような形をしたもうひとつの不完全神性機関。イリスは製作者が同じであるため完全適格者であり、中身の記録を観覧・改変することが出来る。黒猫などは不完全適格者で一部の記録を観覧できる。
- 天の車
- 統政庁に属する3人の特務部隊。天の車の一人がミクヴァの緋眼が保存される部屋へ続く回廊を守っている。
- 異篇卿(いへんきょう)
- 氷結鏡界にかわり、ノイエとノエシスによる重層世界『楽園幻想』を確立させようとしている機関。計画成就の為、天結宮・統制庁側とは敵対している。階位を持つ6名と補佐1名で構成された小規模な組織ではあるが、各々の実力は相当高い。
- 民族・種族
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- ネルの民
- 浮遊大陸に住む民族のひとつ。非常に臆病で警戒心が強い一方で、数学などの分野に秀でている。
- コーの流民
- 優れた動体視力と運動能力という長所を持ち、その一方で、肉体は暗緑色の鱗に覆われた肌。その多くは肌を見せることを嫌い、素肌を隠して生活している。
- 妖精
- オービエ・クレア全域に生息しており、沢山の種類がある。基本的に人には関わらず群を成している。
穢歌の庭(エデン)
浮遊大陸の真下に存在する幽幻種の巣窟。いくつかの層があり、深部へ行くほど狭く、魔笛が濃くなっているとされる。イグニド曰く、第九鏡面まであるとのこと。
- 幽幻種(ゆうげんしゅ)
- 体内に魔笛を保有した、穢歌の庭に住む魔物。物理的実体は霧のような体の中にある核晶(かくしよう)のみ。これを壊すことで幽幻種を倒すことができるが、非常に凶暴。
- 統率個体のように実体を持つ物もいくらか存在し、それをリーダーとする群れも存在することが、天結宮への大侵攻で明らかになった。
- また、統率個体以外に、人に対して幻影を見せたり、幽幻種自身が増殖したり、人ではなく幽幻種に対して寄生する個体も存在する。
- 統率個体(とうそつこたい)
- 一対の翼と巨大な四肢に蜥蜴(とかげ)の頭部を持つ巨大な幽幻種。竜に酷似した形態をしている。
- 非常に知能が高く、浮遊大陸全域に配下の幽幻種を送り込み、天結宮近辺の内部調査をさせることで結界が弱まる瞬間を知り、その間隙を付くことで結界にわずかな穴を開け、数百という配下の幽幻種を連れて天結宮への大侵攻を敢行する。
- 千年前から存在していた模様。
- 眠り仔(ねむりご)
- まだら模様の甲殻に6本の足を持つ、蟹のような形態の幽幻種。なぜか統政庁管轄の浮遊島の研究所で培養されていた。眠っている状態にあったが、シェルティスたちが訪れたことをきっかけに復活。初めは小さな姿だったが、水槽から目覚めたことで急成長し、体格が数倍にまで膨れ上がった。
- イグニドによって捕獲され、秘密裏に培養されていた。
- 千年の獣
- 千年前に存在した重装機兵と幽幻種。ミクヴァの緋眼に干渉したイグニドによって呼び出された。
- 幽幻種は濃い紫色の輪を仕掛け、機雷として進路妨害、もしくは攻撃に使用する。
- 重装機兵は、三メートル近い巨体に全身を鋼鉄の装甲によっておおわれている。そのため動きは鈍重だが、幽幻種との戦いを想定して作られており、沁力の刻印が施されている。
- ショットガンのような重火器を用いて攻撃を仕掛けてくる。
- Sベクター第八種
- 生態生育野のSベクターで発見された幽幻種。死後もその効果が残り続ける後罪型の魔笛を有する。
- テッシャという子供にかかった魔笛を解呪するため、ホルンが追っている個体。
- 禁断水晶
- またの名を「Armariris Sophienet(アマリリス・ソフィネット)」。イグニド曰く、自ら穢歌の庭の奥深くに眠り、穢歌の庭を封じている存在だが、最後の適格者であったユミィの代わりにシェルティスが穢歌の庭へ落ちたため、現在はもうほとんど力が残っていない。自らを「残酷な純粋知性」と名乗っている。イリスとは面識がある。
既刊一覧
小説
巻数 | 初版発行日 | 発売日 | ISBN | |
---|---|---|---|---|
第一楽章(エピソードI)『再始』 | ||||
1 | 氷結鏡界のエデン 楽園幻想 | 2009年9月25日 | 2009年9月19日[6] | 978-4-8291-3443-6 |
2 | 氷結鏡界のエデン2 禁断水晶 | 2009年12月25日 | 2009年12月19日[7] | 978-4-8291-3473-3 |
3 | 氷結鏡界のエデン3 黄金境界 | 2010年4月25日 | 2010年4月20日[8] | 978-4-8291-3512-9 |
4 | 氷結鏡界のエデン4 天上旋律 | 2010年8月25日 | 2010年8月20日[9] | 978-4-8291-3541-9 |
5 | 氷結鏡界のエデン5 絶対聖域 | 2010年12月25日 | 2010年12月18日[10] | 978-4-8291-3597-6 |
6 | 氷結鏡界のエデン6 水晶世界 | 2011年3月25日 | 2011年3月19日[11] | 978-4-8291-3620-1 |
7 | 氷結鏡界のエデン7 空白洗礼 | 2011年6月25日 | 2011年6月18日[12] | 978-4-8291-3651-5 |
第二楽章(エピソードII)『世界で一番近くて遠い夢』 | ||||
8 | 氷結鏡界のエデン8 悲想共鳴-クルーエル・シャウト- | 2011年9月25日 | 2011年9月17日[13] | 978-4-8291-3680-5 |
9 | 氷結鏡界のエデン9 決戦限界-アマリリス・コーラス- | 2012年3月25日 | 2012年3月17日[14] | 978-4-8291-3741-3 |
10 | 氷結鏡界のエデン10 黄昏讃歌-オラトリオ・イブ- | 2012年9月25日 | 2012年9月20日[15] | 978-4-8291-3804-5 |
11 | 氷結鏡界のエデン11 最終双剣-ユミエル・ノイズ- | 2013年3月25日 | 2013年3月19日[16] | 978-4-8291-3870-0 |
第三楽章(エピソードIII)『振り向けば、遙か向こうにキミがいて』 | ||||
12 | 氷結鏡界のエデン12 浮遊大陸-オービエ・クレア- | 2013年12月25日 | 2013年12月20日[17] | 978-4-0471-2972-6 |
13 | 氷結鏡界のエデン13 楽園現奏-エデン・コード- | 2014年3月25日 | 2014年3月20日[18] | 978-4-0407-0064-9 |
漫画
月刊少年シリウスで連載中。作画は木村勇貴。作者が急病のため連載停止となっている。そのため2020年現在においても未完。
- 細音啓(原作)・カスカベアキラ(キャラクター原案)・木村勇貴(作画) 『氷結鏡界のエデン』 講談社〈シリウスKC〉、既刊3巻(2014年3月7日現在)
- 2012年12月20日発売[19]、ISBN 978-4-06-376376-8
- 2013年9月9日発売[20]、ISBN 978-4-06-376422-2
- 2014年3月7日発売[21]、ISBN 978-4-06-376450-5
ドラマCD
タイトルは『ドラマCD 氷結鏡界のエデン 楽園幻想』。タイトルにあるように、原作第1巻をドラマ化している。2010年12月29日限定盤・通常盤(ともに2枚組)同時発売。限定盤には特典として、原作作者及びイラストレーターのかきおろし小冊子とシナリオなどを収めたCDが付属。
- 制作 - マリン・エンタテインメント
脚注
- ^ 『!2010』宝島社、2009年12月5日、119頁。ISBN 978-4-7966-7490-4。
- ^ 「KADOKAWAの合本版が半額となる「KADOKAWAラノベ一気読み!“ガチ”ファンタジー」が各電子書籍ストアにて開催中」『ラノベニュースオンライン』Days、2021年1月25日。2024年6月20日閲覧。
- ^ “氷結鏡界のエデン”. 月刊少年シリウス公式サイト. 講談社. 2012年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 「ドラマCD「氷結鏡界のエデン 楽園幻想」より、豪華出演陣からアフレコ後コメントが到着!」『アニメイトタイムズ』アニメイト、2010年11月25日。2023年10月24日閲覧。
- ^ a b 「ドラマCD『氷結鏡界のエデン』主人公・シェルティス役に阿部敦さんが、『神さまのいない日曜日』ハンプニー役に浪川大輔さんが決定!ファンタジア文庫原作ドラマCD化2タイトル、キャストを一挙公開!!」『アニメイトタイムズ』アニメイト、2010年10月8日。2024年6月20日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン 楽園幻想」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン2 禁断水晶」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン3 黄金境界」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン4 天上旋律」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン5 絶対聖域」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン6 水晶世界」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン7 空白洗礼」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン8 悲想共鳴-クルーエル・シャウト-」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン9 決戦限界-アマリリス・コーラス-」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン10 黄昏讃歌-オラトリオ・イブ-」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン11 最終双剣-ユミエル・ノイズ-」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン12 浮遊大陸-オービエ・クレア-」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “「氷結鏡界のエデン13 楽園現奏-エデン・コード-」細音啓 [ファンタジア文庫]”. KADOKAWA. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “『氷結鏡界のエデン(1)』(木村 勇貴,細音 啓,カスカベ アキラ)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “『氷結鏡界のエデン(2)』(木村 勇貴,細音 啓,カスカベ アキラ)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2025年1月10日閲覧。
- ^ “『氷結鏡界のエデン(3)』(木村 勇貴,細音 啓,カスカベ アキラ)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2025年1月10日閲覧。
外部リンク
- 細やかな音色を啓してみよう(細音啓公式ブログ)
- 新作・氷結鏡界のエデン特集ページ
- 氷結鏡界のエデン作品紹介・特集ページ
- 氷結鏡界のエデン ドラマCD公式サイト
- 富士見ファンタジア文庫
- 少年シリウス オフィシャルサイト|氷結鏡界のエデン|作品紹介|講談社コミックプラス - ウェイバックマシン(2012年10月23日アーカイブ分)
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