洛星中学校・高等学校
洛星中学校・高等学校(らくせいちゅうがっこう・こうとうがっこう、英: St.Viator Rakusei Junior and Senior High School)は、京都府京都市北区小松原南町に所在し、中高一貫教育を実施する私立男子中学校・高等学校。 概要カトリック系ミッションスクールであり、高等学校においては生徒を募集しない完全中高一貫校[1]。 カトリック教会の修道会である聖ヴィアトール修道会が満州国で経営していた暁東中学校が母体となっている。第二次世界大戦後、激化する国共内戦を避けて京都の本校と台湾・台中市の衛道高級中学に分散移転した。 1952年に中学校が、1955年には高等学校が創立。キリスト教精神(カトリック)に基づく「全人教育」を掲げており、神父および修道士が現在も教職員と共に活動している。 2010年、中高学校法人として初めて、国連グローバル・コンパクトに加盟した。 ミッションカトリック精神に基づく全人教育を実施することを使命とし、全ての人間を「神に愛された存在」として尊重し愛をもって接することの出来る心と力が備わった人材を育てることにあることを共通の認識とする[2]。 教育方針「キリスト教カトリック精神に基づく“全人教育”」を目標に掲げて教育を行う
社会の一員として生活していく上で、必要不可欠な心がけが常にできるようにし、本来、出来て当たり前のことが自然にできる、ということがいかに大事なことなのかを理解し、実行できるようにするために、以下の心得を実践する[4]。
沿革略歴母体である聖ヴィアトール修道会は、1831年にフランスのリヨン市において、ルイ・ケルブ神父がカトリック精神による青少年教育を目的として設立した修道会である。ヴィアトールの名は、4世紀頃にいたとされる教育者聖ヴィアトールを守護者としたことによる。聖ヴィアトール修道会は世界各地でミッションスクール(ヴィアトール学園)を運営しているが、本校は日本で唯一のヴィアトール学園である。 第二次世界大戦前の1930年代、当時の満洲国政府からも認可を得て、聖ヴィアトール修道会は満洲の四平街(現:中華人民共和国吉林省四平市)に暁東中学を設立し、アジアにおけるカトリック教育の拠点とした[5]。この学校が本校の前身とされる[6]。しかし第二次世界大戦後、中華人民共和国成立に伴って、中国大陸では宗教教育を行う学校が維持できなくなった。 聖ヴィアトール修道会は1948年に日本での活動を開始するが、中学・高等学校の設立を希望する修道会と、発足から間もなく管内に教育機関を持たなかったカトリック京都司教区(当時は知牧区)との間で希望が一致したことから、修道会は京都に日本本部を置くことになる[7]。 1951年に学校法人として認可され[3]、1952年に中学校が、1955年には高等学校が創立された[3]。 2024年3月4日に順天堂大学と高大連携に関する協定を締結した[8]。 2024年3月31日をもって、宗教法人聖ヴィアトール修道会が日本・カトリック京都司教区から撤退することに伴い、宗教法人聖ヴィアトール修道会は聖ヴィアトール学園の運営からも撤退する[9]。 2024年9月24日に上智大学と高大連携に関する協定を締結した[10]。 年表
交通アクセス
象徴
京都市の公立高校は、かつてそのほとんどが制服を定めず、私服で自由な校風が特徴的であったが[11]、洛星中学・高校ではカトリックの教育理念に基づき、創立以来制服が定められ、その着用が厳しく指導された。型は、創立以来基本的には不変で、校章が刻まれた5個の金ボタンで前を留める紺色の詰襟学生服である。ただし標準型とは異なって、上着の襟・打ち合わせ・脇ポケットの蓋などにオールステッチが入り、胸ポケットと袖ボタンが無い。ズボンは上着と共布でツータック、尻ポケットは雨蓋つきとされている。詰襟は、内側にプラスチック製の白いカラー(現在は入手の難しさから襟の端にカラーを模した白線を入れるだけになっている)、左襟に校章、右襟に金文字の学年章を装着する(中学が1,2,3、高校はI,II,III)。かつては完全オーダーメイドで、詰襟が標準より高いハイカラ―(約4.5cm)、カラーサイズがきつめに仕立てられていて、その襟元のホックを常時留めることが求められた[12]。現在は既製品となり、襟が低くなり首回りも緩くなった他、服装基準が緩和され、セーターとベストも定められて、夏服期間の涼しい時に着用可能となった。 5月初旬から11月中旬は夏服期間であり、学校指定の赤みがかったグレーベージュ・両胸に蓋つきポケットのカッターシャツ(長袖と半袖を設定)、冬と同型・同色で生地が薄い夏服用ズボンを着用する。1982年頃まではカッターシャツの胸ポケットの蓋に冬服の襟章を装着したが、現在は校章が刺繍されている。なお、夏期は学年章を装着しない。 紺色の生地に校章を付けた独特の型の制帽もあったが、現在は着用が自由化されている。 教育課程心と頭と体を育てる全人教育という目標を掲げ、効果的な学習指導を行う。 大学受験必要科目については、中学課程をハイスピードで終わらせ、中学の段階から高校課程の授業を行う[13]。高2の段階で大学受験に対応できる態勢をとることにより、高い合格実績を生み出す。 中学3年で、大学入試レベルに当たる英検準2級を全員が受験し、大部分の生徒が合格する。このように、中学生の段階で高い英語力を生徒全員に身につけさせる[14]。 高校1年では、京大見学ツアーが行われる。洛星OBの京大の教授による講演や、洛星OBの京大生によるキャンパスツアーを行う[13]。 高2では、ハーバード大学で行われる「次世代リーダー養成プログラム」に参加することができる。ハーバード大学の教授の講義を聴講し、ハーバード大学の大学生と討論等を行って交流する。 学校行事クリスマス・タブローアルファベット表記は Christmas Tableaux。イエス・キリストの誕生を祝う行事であり、タブローは活人画を意味し、12世紀ごろフランスで始まった。 キャストの台詞はなく、聖書朗読により物語が展開される。預言に始まり、受胎告知、天使の羊飼いに対するお告げ、ヘロデ王、天使の導き、そして馬小屋での謁見、メシア・救い主の誕生までの8幕、約2時間を、聖歌隊やハンドベル演奏、フルートやヴァイオリンによる独奏を交ぜながら描く。 1966年に同志社女子中学校・高等学校のパジェントを基にして始まり、2020年に第55回目を迎えた[15]。例年12月22日にリハーサル(観客による撮影可)が、23日に本番(撮影不可)が催される。感染症の予防対策が取られる2019年までは一般に公開されていた[16]が、2020年および2021年は無観客で、2022年は事前申請した卒業生本人および在校生の保護者に限定して来場を受け付けられた[17]。 中学1年生全員と約300名の中学2年生から高校生の有志の生徒によって実施されている。中学1年生はキャストもしくは聖歌隊(聖歌隊とキャンドル隊に分けられるときもある)として出演する。他の学年はキャストもしくはスタッフとして参加する。スタッフは演出や舞台監督、総務などの12のパートに分かれて準備をしている[18]。 2008年には準備からリハーサルまでをまとめた特別番組がKBS京都で本番翌日24日の午後7時より放送された。また、2009年12月24日、2010年12月24日にも同内容・同時間で放送された。 クラブ活動生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動[19]については、学園が目指す全人教育の達成のため、知的向上および心身の練磨を目的に、各分野に渡って多くのクラブが活動しており、高校2年生までは全員いずれかのクラブに所属することになる[20]。生徒達が集まって同好会を作ることも可能で[20]、兼部も部活動・同好会合わせて3つまで認められている。 クラブ活動・同好会は活動内容には大きな違いはないが、クラブ活動は生徒会組織として予算や活動場所の面で優遇される。 同好会は、5人以上の生徒と顧問教師が集まれば生徒部の許可を得て作ることができる。同好会は活動実績と校内規定(生徒会会則)による手続きを経てクラブ活動への昇格が認められる。最近では高校料理同好会が高校料理研究部に昇格した例や中学ロボット研究同好会が昇格した例がある。 文化クラブ・同好会
囲碁将棋部は全国高等学校総合文化祭で幾度か準優勝している。また高校ロボット同好会は、2006年ロボカップジュニア世界大会(ドイツ)で準優勝した。 体育クラブ・同好会
1978年にバスケットボール部が全国中学校バスケットボール大会にて準優勝した。中学弓道部は武道館で行われる全日本少年少女武道錬成大会と明治神宮で行われる全国中学生弓道大会に毎年必ず出場している。2010年は第7回全国中学生弓道大会において団体全国準優勝の結果を残した。水泳部もほぼ毎年全国大会に出場している。2008年の京都市中学春季総体で陸上部員が100メートル走で優勝し、予選では11秒31の大会新記録を出した。また2011年には中学硬式テニス部が団体で全国大会に出場を果たし、ベスト16という結果を残している[21]。2016年には、高校野球部が文武両道と部員10人での秋季京都府大会ベスト8進出を評価されて、第89回選抜高校野球大会の21世紀枠京都府推薦校に選出された[22]。また、2024年には中学軟式野球部が第15回文部科学大臣杯全日本少年春季軟式野球大会に出場した。 課外活動科学オリンピック科学オリンピックでの受賞歴がある。国際数学オリンピック、国際物理オリンピック[23]、国際地理オリンピック[24]等の国際科学オリンピック日本代表としてメダル受賞が幾多もある。特に国際数学オリンピックには通算6人のメダル獲得者を輩出しており[25]、2014年には在籍生徒が金メダルを獲得した。
進路
※のべ卒業者 14,108名 京都大学通算合格者数で私立高校1位(4,507名[26])を誇る[27][28]。 近年、国公立医学部医学科にも京都大学と同数程度合格する傾向にある[26]。また、学生の8割弱は京都大学か医学部医学科を受験しており[29]、約半数は見事合格を果たしている。2016年〜2020年の東大・京大・国公立医学部の合格率(合格者/卒業生)は近畿圏の高校では灘、東大寺学園、甲陽学院、大阪星光学院に次ぐ5位、全国では12位の43.1%であった[30]。 地元である京都大学や京都府立医科大学への進学希望者が多く[28]、首都圏の最難関大学である東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学を志望する者は少ないが、それぞれ毎年10名以上合格者を輩出する年が多い。また、私立大学への現役合格者は極めて少ない傾向にある[26]。これは、現役時は東京大学、京都大学、国公立医学部等の前期日程のみを受験する者が多く、校内では学力不振とされる者でも[独自研究?]大阪大学、神戸大学等の前期日程のみを受験する者が多いためである。 浪人時は万が一に備えて私立大学も併願する者が多い傾向にあるが、国公立前期日程で京都大学等に合格を果たせなかった者も[独自研究?]中期・後期日程で神戸大学、大阪公立大学、北海道大学を中心とした最難関国公立大学に合格したり、私立大学の医学部に進学する者がほとんどである[26]。 入試2025年現在は中学からのみ募集している[31]。 中学入試は前期日程と後期日程がある。いずれも4教科型(国語・算数・社会・理科)と3教科型(国語・算数・理科)を選択することができ、出願時に決定しなければならない。なお過去に実施されていた面接は現在は実施されていない。 2024年度よりそれぞれ約165名(後述する特別選抜制度および特別奨学制度による最大10名を含む)、約35名に変更した[31]、また前期日程に帰国生枠若干名が新設された[32]。
帰国生枠帰国生対象に0〜5名の選考枠がある。 受験資格は、直近5年半の内、通算2年以上海外に在住し、かつ最終的に2年前以降に帰国した、または帰国予定の者で、選考方法は、一般受験生と同内容・同時間の学科テスト2科目(国語・算数)および英語筆記テスト、面接(英語スピーキング力の確認も含む)である。 ノートルダム学院小学校カトリック校特別選抜制度2013年4月10日、ノートルダム学院小学校との間で「協力関係確認書」が取り交わされ、その協力関係の一環として洛星中学校への特別選抜制度を設け、最大8名までの選抜を実施している[34]。 カトリック信者特別奨学制度最大2名まで洛星中学校への特別奨学制度を設け、実施している。 中高関係者と組織中高関係者組織中高関係者一覧→「洛星中学校・高等学校の人物一覧」および「Category:洛星中学校・高等学校出身の人物」を参照
事件業務上横領本学校法人の経理や会計を担当し、銀行印を保管する立場だった事務局長が2017年から2022年5月までにわたり、学費や学校の運営資金約5,200万円を着服していたことが判明した。 犯行発覚後、法人は速やかに京都府警に対して被害届および告訴状を提出するとともに、事務局長を懲戒解雇処分とした。併せて理事会としての経営責任を明らかにして再発防止策を講じるべく、検証委員会を立ち上げ、保護者説明会を実施している[35][36]。 脚注注釈出典
関連項目
外部リンク
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