硫酸銅(II)
CuSO 4 · 5H2 Oの結晶
五水和物の構造の一部
(Cu(H
2O)
2+ 4 中心に結合する硫酸)
別称
Cupric sulphate Blue vitriol (五水和物) Bluestone (五水和物) Bonattite (三水和物鉱物) Boothite (七水和物鉱物) 胆礬 (五水和物鉱物)Chalcocyanite (鉱物)
Copper Sulphate pentahydrate
識別情報
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard
100.028.952
EC番号
Gmelin参照
8294
KEGG
RTECS number
GL8800000 (無水物) GL8900000 (五水和物)
UNII
InChI=1S/Cu.H2O4S/c;1-5(2,3)4/h;(H2,1,2,3,4)/q+2;/p-2
Key: ARUVKPQLZAKDPS-UHFFFAOYSA-L
InChI=1/Cu.H2O4S/c;1-5(2,3)4/h;(H2,1,2,3,4)/q+2;/p-2
Key: ARUVKPQLZAKDPS-NUQVWONBAI
特性
化学式
CuSO 4 (無水物) CuSO 4 · 5H2 O (五水和物)
モル質量
159.60 g/mol (無水物)[ 2] 249.685 g/mol (五水和物)[ 2]
外観
灰白色(無水物) 青色(五水和物)
密度
3.60 g/cm3 (無水物)[ 2] 2.286 g/cm3 (五水和物)[ 2]
融点
110℃ で分解 560℃で分解[ 2] (五水和物) 590℃で分解 (無水物)
沸点
650 °Cで酸化銅に分解
水 への溶解度
五水和物 316 g/L (0 °C) 2033 g/L (100 °C) 無水物 168 g/L (10 °C) 201 g/L (20 °C) 404 g/L (60 °C) 770 g/L (100 °C)[ 3]
溶解度
無水物 エタノールに溶けない[ 2] 五水和物 メタノールに溶ける[ 2] 10.4 g/L (18 °C) エタノールとアセトンに溶けない
磁化率
1330·10−6 cm3 /mol
屈折率 (n D )
1.724–1.739 (無水物)[ 4] 1.514–1.544 (五水和物)[ 5]
構造
直方晶系 (無水物, カルコシアナイト), 空間群 Pnma, oP24 , a = 0.839 nm, b = 0.669 nm, c = 0.483 nm.[ 6] 三斜晶系 (五水和物), 空間群 P1 , aP22 , a = 0.5986 nm, b = 0.6141 nm, c = 1.0736 nm, α = 77.333°, β = 82.267°, γ = 72.567°[ 7]
熱化学
標準生成熱 Δf H o
−769.98 kJ/mol
標準モルエントロピー S o
5 J/(K·mol)
危険性
GHS 表示 :
Danger
H302 , H315 , H318 , H319 , H410
P264 , P264+P265 , P270 , P273 , P280 , P301+P317 , P302+P352 , P305+P351+P338 , P305+P354+P338 , P317 , P321 , P330 , P332+P317 , P337+P317 , P362+P364 , P391 , P501
NFPA 704 (ファイア・ダイアモンド)
引火点
不燃性
致死量または濃度 (LD, LC)
300 mg/kg (経口, ラット)[ 9]
87 mg/kg (経口, マウス)
NIOSH (米国の健康曝露限度):
TWA 1 mg/m3 (as Cu)[ 8]
TWA 1 mg/m3 (as Cu)[ 8]
TWA 100 mg/m3 (as Cu)[ 8]
安全データシート (SDS)
anhydrous pentahydrate
関連する物質
その他の陽イオン
特記なき場合、データは常温 (25 °C )・常圧 (100 kPa) におけるものである。
硫酸銅(II) (りゅうさんどう に、英 : copper(II) sulfate,sulphate 、化学式 CuSO4 )は、銅 (II)イオンと硫酸 イオンのイオン 化合物である。
性質
無水物は白色の粉末である。水和物 として、有名な青色の三斜晶系結晶 (五水和物)の他に、一水和物、三水和物、七水和物があり、水に易溶で水溶液 は青色を示す。中学校 および高校 の理科 の実験に用いられることから馴染み深い化合物である。しかし、重金属 である銅 による毒性 があるために取り扱いには注意を要し、毒物及び劇物取締法 により医薬用外劇物 に指定されている[ 10] 。
五水和物で、特に鉱物 として自然産出するものは、胆礬 (たんばん)とも呼ばれている。これは銅山 の古い坑道 の内壁などで、地下水 から析出して結晶となっているものを得ることができる。主に霜柱 状、若しくは鍾乳石状の形で産出することが多い。銅の錆である緑青 にも含まれる。三水和物はボナッティ石
(Bonattite)[ 11] 、七水和物はブース石 (英語版 ) [ 12] として産出するが希少である。
無水物の製法
硫酸銅(II)水和物の加熱脱水で得られる、白色粉末状の物質である無水物は、脱水時に加熱しすぎると更に反応が進み、黒色の酸化銅(II) と三酸化硫黄 に分解する。無水物をつくる際は火加減に十分注意しなければならない。
脱水 :
CuSO
4
⋅
5
H
2
O
⟶
CuSO
4
+
5
H
2
O
{\displaystyle {\ce {CuSO4\cdot 5H2O->CuSO4\ +5H2O}}}
分解 :
CuSO
4
⟶
CuO
+
SO
3
{\displaystyle {\ce {CuSO4 -> CuO\ + SO3}}}
硫酸銅(II)五水和物を加熱すると、すぐに結晶から結晶水由来の水分がにじみ出てくるが、質量を測定している場合は決してガラス棒などで触れてはいけない。なぜなら、ガラス棒などで触ると、にじみ出た水に溶けている硫酸銅(II)がガラス棒に付着し、その分だけの重さが減るためである。
用途
水溶液は銅めっき や銅の電解精錬 の電解液 、エッチング 、顔料 、殺菌剤 (ボルドー液 )の原料、媒染剤 、防腐剤 、糖検出薬であるフェーリング液 やベネジクト液 の原料、血液 の比重検査などに用いられる。無水物は強力に水を吸着するので、アルコール 類を厳密に乾燥させるときの脱水剤として用いられる。また、水溶液の溶解度 が温度によって大きく変化するので、飽和 水溶液の冷却による再結晶 が容易であり、また五水和物の結晶が美しいことから、大結晶の成長実験が理科教育の実験教材としてしばしば取り上げられる。殺菌作用を持ち、熱帯魚や海水魚を飼育する際の白点病 の治療薬として用いられることもある。ビウレット反応 で使われることもある。
銅は微量必須元素 であるが、ほとんどの食物に含まれており銅の欠乏症は起こらない。ただし、人工乳に100%依存する乳児では母乳代替食品に銅の添加が必須であり、他の銅塩より水溶性の高い硫酸銅が、指定された濃度以下での食品添加物 として認められている[ 13] 。同様に、人工栄養補給に依存する患者に対する必須元素である銅の補給のために用いられる[ 14] 。
薬用としては、化膿 性皮膚疾患 (おでき )の膿 を排出させる吸出膏 である「たこの吸出し 」[ 15] の主成分である[ 16] 。
殺虫剤などにも使用されるが、収穫後色落ちしたオリーブ に鮮やかな緑色を着けるため、不法に硫酸銅をコーティングする事例も見られる[ 17] 。
脚注
^ Varghese, J. N.; Maslen, E. N. (1985). “Electron density in non-ideal metal complexes. I. Copper sulphate pentahydrate”. Acta Crystallographica Section B 41 (3): 184–190. doi :10.1107/S0108768185001914 .
^ a b c d e f g Haynes , p. 4.62
^ Rumble, John, ed (2018) (英語). CRC Handbook of Chemistry and Physics (99th ed.). CRC Press, Taylor & Francis Group. pp. 5–179. ISBN 9781138561632
^ Anthony, John W.; Bideaux, Richard A.; Bladh, Kenneth W. et al., eds (2003). “Chalcocyanite” . Handbook of Mineralogy . V. Borates, Carbonates, Sulfates . Chantilly, VA, US: Mineralogical Society of America. ISBN 978-0962209741 . http://rruff.info/doclib/hom/chalcocyanite.pdf
^ Haynes , p. 10.240
^ Kokkoros, P. A.; Rentzeperis, P. J. (1958). “The crystal structure of the anhydrous sulphates of copper and zinc”. Acta Crystallographica 11 (5): 361–364. doi :10.1107/S0365110X58000955 .
^ Bacon, G. E.; Titterton, D. H. (1975). “Neutron-diffraction studies of CuSO4 · 5H2 O and CuSO4 · 5D2 O”. Z. Kristallogr. 141 (5–6): 330–341. Bibcode : 1975ZK....141..330B . doi :10.1524/zkri.1975.141.5-6.330 .
^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0150
^ Cupric sulfate . US National Institutes of Health
^ 富山大学 ・基礎物性工学研究室 「MSDS 硫酸銅(II)五水和物」
^ Bonattite , mindat.org
^ Boothite , mindat.org
^ 厚生労働省 「各添加物の使用基準及び保存基準」
^ KEGG: Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes
「医療用医薬品: ミネラミック」
^ 東京都薬剤師会 ・北多摩支部 「たこの吸い出し」
^ 沖縄県 薬事法による特例販売業の許可の基準
^ 硫酸銅まぶしたオリーブや偽オリーブ油を押収、イタリア警察 ロイター、2016年2月4日
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
硫酸銅(II) に関連するカテゴリがあります。
外部リンク
Cu(0,I) Cu(I) Cu(I,II) Cu(II) Cu(III) Cu(IV)