福音書を執筆する聖マタイ
『福音書を執筆する聖マタイ』(ふくいんしょをしっぴつするせいマタイ、伊: San Matteo che scrive il suo Vangelo、英: Saint Matthew Writing His Gospel)は、17世紀イタリア・バロック期の画家カルロ・ドルチが1670年ごろにキャンバス上に油彩で制作した絵画である。聖マタイを主題としており、本来、聖マルコ、聖ヨハネ、聖ルカとともに4人の福音書記者を描いた連作の一部をなしていた[1]。作品は1969年以来、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館に所蔵されている[1]。 作品ドルチは生地フィレンツェでその生涯のほとんどを過ごしたが、その作品は17世紀ヨーロッパ各地で名声を得た[2]。彼は子供のころから敬虔なキリスト教徒であり、生涯聖ベネディクトゥス信者会に属し[3][4]、その信仰心が彼の芸術の原動力となっていた[2]。ドルチの友人で伝記作者のフィリッポ・バルディヌッチは、絵を見る者が自分と同様に敬虔な信仰心を抱くよう、宗教的な主題しか描かないことをドルチが誓ったと伝えている[2]。 ドルチの洗練され、輝くような作品は17世紀の芸術庇護者たち、とりわけ彼の故郷フィレンツェの芸術庇護者たちに好まれた[1]。画家が4人の福音書記者を描いた連作は、彼の聴罪司祭の1人のおそらくドメニコ・カルパンティ (Domenico Carpanti) のために描かれ、売却された。同時期の記録によると、1点につきわずか100スクーディで、画家の原材料費を賄うのがやっとの価格であった。そのような行為は、敬虔なドルチの聴罪司祭への敬愛を反映している[1]。 ドルチは1650年ごろから大型の作品に加え、半身像の聖人像を描くようになった[3]。本作の主題である聖マタイは徴税の仕事をしていたが、イエス・キリストに選ばれて使徒となった。「マタイによる福音書」はイエスに関する記述の詳しさから、彼を実際に知ることのできたマタイ本人が執筆したと考えられる。マタイが福音書を執筆する場面が描かれる時は、天使が付き添う[5]。画中の聖マタイは、彼の福音書の冒頭の言葉を記しているが、それは彼の母語であるヘブライ語で正確に再現されている。ドルチに典型的な細密な筆致で、聖人の羽毛のような髭の質感、重い衣服の柔らかさ、そして爪の中の汚れまでもが克明に表現されている[1]。 脚注
参考文献
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