簡易水洗式便所
簡易水洗式便所(かんいすいせんしきべんじょ)は、便所の形態の一つ。 汲み取り式便所の一種であり、下水道等の整備が十分でない地域(特に浄化槽の設置もできない場所)に於いて、非水洗式のものと比べると衛生的で水洗式便所に近い実用性が得られることから設置される。 構造排泄物を自由落下、残存物は少量の洗浄水にて洗い流し、便槽に貯留する構造となっている。便槽は浄化槽や下水道に連結せず、バキュームカーによる汲み出しを必要とすることから、技術的な広義の意味では汲み取り式に含まれる。 便器と便槽の間に弁を設け、用便時の汚物跳ね返りや臭気の逆流を防止する構造、水鉄砲型の洗浄ホースを付加し洗浄力を強化させるなど、各メーカーがそれぞれの製品で工夫を講じており、水洗便所に匹敵する実用性を確保する努力が為されている。 一般には既存の汲み取り式便所を改造して設置されることが多い。その場合、便槽は既設の便槽をそのまま使用し、既存の便器を撤去して簡易水洗式専用の便器を設置し、洗浄用の水道管を接続する。なお簡易水洗式専用の便槽も存在するため、新設する際など、場合によっては便槽も交換する。 仮設便所として工事現場やイベント時に設置されることも多く、土木工事用具のリース会社などがレンタルを行っている。 なお、簡易水洗の小便器も存在するが、大便器が簡易水洗式の場合であっても非水洗タイプのものが設置されることも多い。 長所普通の水洗式便所は大便一回で4L~20Lくらいの水を必要としているが[注釈 1]、簡易水洗式は一回の洗浄で約500ml以下しか使わないように設計されている。これは、構造上汚物の処理は直下の便槽への自然落下を基本としているために、水洗便所のような水圧洗浄・流下に依存せずに済むことによる。 その一方で水洗式同様に便器が洗浄できるため、一般の汲み取り式便所よりも衛生面で優れており、加えて専用便器の仕組みにより便槽を密閉できるので、ハエなどの病害虫の侵入を防ぐ効果がある。これらの特徴は、便所内での快適性改善にも役立つ。 また下水道や浄化槽などの設備を要さないことから、維持・管理コストを抑えられる。冬期の凍結対策の面でも、浄化槽に依存しない分、一般の水洗式より有利である。特にこの点から、公共下水道(集落排水を含む)の整備が遅れている地域では、単純な汲み取り式から簡易水洗式への移行が進んでいる。設置後に下水道が整備されたときに備えて、排水トラップ部分など最小限の部品換装により水洗便器化できるものも販売されており、これらの地域で設置すると水洗化の移行がスムーズになる。 また便所内に水道を引くことから温水洗浄便座の使用が可能になり、各メーカーともにセットで販売している。これを設置することにより、いっそう水洗式に近い使用感が得られるようになった。 短所あくまで汲み取り式便所のため、バキュームカーによる定期的な汲み取りが必要となる。加えて屎尿の洗浄に水道水を用いる分、通常の汲み取り式よりも汲み取り頻度が多くなる。特に普及初期においては、既設の便槽に元来無かった洗浄水が余分に溜まるため、容量オーバーによるトラブルが発生し、簡易水洗式を利用しないように勧告する地域もあった。もっともネポンの製品のように水道水を使わず泡立った粘性のある薬液を用いて便器を洗浄する場合は、汲み取りの回数は増えないが、専用の薬液を購入する必要があるためコストがかかる。 また匂いの問題や物を落とすと回収が困難という点に関しては、非水洗式の汲み取り式便所と同様である。無論、非水洗式と比べるとフラップ弁などがある関係で比較的マシにはなっている。 その他特有の欠点として、各種の洗浄方式が併存しており、それぞれ操作法が異なることから、正しく行えなかった場合は汚物が残ったり、飛散することにつながりかねない。特に、水洗式便所しか経験したことのない者が簡易水洗式便所を利用する際、戸惑うことがしばしばある。フラップ弁などに糞が付着することを防ぐには、排泄する前にあらかじめ少量の水を流しておくか、トイレットペーパーを敷いておくと、ある程度は防止できる。 洗浄方式
簡易水洗便器を製造発売しているメーカー
かつて簡易水洗便器を製造発売していたメーカー
なお、水洗式では日本国内で6割以上のシェアを誇る最大手便器メーカーのTOTOは、簡易水洗便所の製造をしたことがない(通常の非水洗式便器はかつて製造していた)。 脚注注釈
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