自動車検査登録制度
![]() 自動車検査登録制度(じどうしゃけんさとうろくせいど)とは、日本でミニカーや小型特殊自動車を除く自動車や排気量250ccを超える自動二輪車(道路交通法における大型自動二輪車を含む)に対して、道路運送車両の保安基準に適合しているかを確認するため、一定期間ごとに国土交通省が検査を行い、また自動車の所有権を公証するために登録する制度をいう。一般には車検(しゃけん)と呼ばれる。 概要自動車のうち、軽自動車・小型特殊自動車・二輪の小型自動車(これらは届出自動車、届出車とも呼ばれる)を除く、登録自動車・登録車(その意味で普通車とも呼ばれる)は、登録を受けなければ運行してはならないことになっている(道路運送車両法第4条)。登録を受けなければ自動車の所有権を巡る争いに際して第三者に対抗することができない(同法第5条)(軽自動車・二輪の小型自動車は道路運送車両法第4条を根拠とする登録ではなく同59条による検査が必要)。 車検には道路運送車両法上、新規検査(第58条)・継続検査(第62条)・構造等変更検査(第67条)の3種があるが、新規検査は新車を納品する前に購入先の販売店が代行することが多いため、通常は継続検査を指して車検と呼ぶことが多いようである。 登録には新規登録(第7条)、変更登録(第12条)、移転登録(第13条)、永久抹消登録(第15条)、輸出抹消登録(第15条の2)、一時抹消登録(第16条)がある。 「車検切れ」への対応いわゆる「車検切れ」の自動車が走行していないか、国土交通省が監視している。見つけた場合、まず所有者に車検を受けるよう求め、応じなければ刑事告発する。ガソリンスタンド、自動車用品店、自動車整備工場などにも無車検の車について情報提供を要請。国交省職員による目視パトロール[1]に加えて、カメラの前を車検切れの車両が通るとナンバープレートを読み取って検知するシステムを開発。2018年9月14日から運用を開始した[2]。 制度の変遷・歴史
検査の種類検査の内容によって次のように分類される。
登録の種類
車検の方法車両の整備および車検は法律的には車両の使用者が自ら行うことになっているが、実際には、
などがある。 厳密には定期点検整備は車検とは別なので、車検を通した後にまわすこともできる(前検査・後整備)。検査を受けるためには、有効な地方税の自動車税納付証明書ないしは軽自動車税納付証明書とその時点で有効な自動車損害賠償責任保険証が必要になる。検査の際には自動車損害賠償責任保険の更新、自動車にかかる税金(中央税の自動車重量税)の納付なども合わせて行う。 検査に合格すると、有効期間満了日を記載した前面ガラス(オートバイとトレーラーはナンバープレート)に貼る検査標章(ステッカー)と自動車検査証(車検証、予備検査の場合は予備検査証)を受け取り、完了となる。
車検を行う場所軽自動車は軽自動車検査協会の専門の検査場で行い、それ以外(オートバイ含む)は陸事分野の運輸支局または検査登録事務所で行う(前記2つを総合的に「車検場」あるいは「陸支」「陸事」と呼ぶ)。この他、国土交通省の指定を受けている自動車整備工場(指定工場。俗に「民間車検場」と呼ぶ)では整備だけでなく、検査まで行うことができる。 新規検査、構造等変更検査は「使用の本拠の位置」を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所でのみ受検・登録できる。予備検査、継続検査は日本全国どこでも受検可能である。 検査標章
![]() 検査に合格すると自動車検査証と検査標章(ステッカー)が交付される。検査標章には次の検査時期の数字(上段の小さい数字が検査年、下段の大きい数字が検査月)が記されている。検査標章は自動車において原則として前面ガラスの見やすい位置に貼付けし、大型二輪車・普通二輪車・トレーラ、一部の建設機械[注釈 5]など前面にガラスのない自動車においては番号標の左上部に貼付する。道路運送車両法第66条により表示を義務付けられ、違反者は50万円以下の罰金を科せられる。 普通自動車および二輪の小型自動車の検査標章は2003年12月まではフロントガラスを有する車両は70mm×70mm、フロントガラスを持たない車両は40mm×40mmの寸法の物を用いていたが、2004年1月以降は30mm×30mmに寸法が統一[注釈 6]された。同時に、車検年月によって背景色を変えていたものを廃し、背景色を水色●に統一して上部に車検年、下部に車検月を示す様式に改めた。 軽自動車用についても2014年1月以降は従来の70mm×70mmから30mm×30mmの寸法で様式を登録車と同一の物へ変更、背景色を黄色●とし小型化された。これはフロントガラスを持たない車両において、検査標章の取付場所に苦慮することを考慮したものであるとしている。 自動車検査証の有効期間自動車の種別・用途によって異なる。
また、予備検査証の有効期間は3か月である。 自動車の種別については自動車#分類・種類、日本のナンバープレート#分類番号を参照。 自賠責保険の期間自動車損害賠償責任保険(自賠責)は、登録及び検査に際して検査有効期間を満たすものが必要となる。 自賠責保険契約は、自動車検査証の満了日の翌日正午に自賠責保険期間が切れる契約のものを用意してもさしつかえはない。ただし、使用者が継続検査の受検を忘却していた場合や整備に時間を要することとなった場合などに備え、販売店は有効期間より1か月多く期間を有する自賠責保険を用意する場合が多い。継続車検の場合には一般に車検期間内に車検を受検することとなり、その時点での自賠責が有効であるため、24か月分のみ契約するだけでよいかたちとなる。 車検の切れている中古車の場合は、24か月または12か月の自賠責保険契約を用意する場合もある。 具体的には10日まで保険がある車両の車検を受ける場合、10日入庫・11日車検となると保険切れの状態で車検を受けることとなるため、25か月の自賠責を契約することとなる。仮に、車両入替などで保険期間が不足する場合には、不足期間を充足するだけの自賠責保険に加入できる。 注意車検は単に公道を走行する上での必要最低限の保安基準に適合しているかどうかを確認するものであり、検査項目に含まれる一部の要素を除けば車両が機械として故障している、あるいは故障の可能性を検査するものではない。故障の可能性を検査するのは別途必要な点検整備の役割である。たとえ車検の帰りに車が故障したとしても、それは車検に合格したこととは関係のない話である。この事は、自動車検査証の裏面にも大きく記載されている(使用者の維持・管理責任)。 一般にディーラー車検が高価なのは、ディーラーの収益も兼ねて車検前の点検整備で予防的に消耗品(ブレーキパッド、エンジンオイル、シール類、ゴム・樹脂部品など)を交換したり、次の車検までの定期点検の契約が含まれていたりすることに車検代行料が加わるためである。ユーザー車検や代行車検がディーラー車検より安価なのは、検査にパスするのに必要な点検整備しか行わないからである。従って、単にディーラーの点検整備費用を浮かせるためにユーザー車検や代行車検を選択することで、車両の使用者に車両を保安検査に合格する水準に保つ責任がかかることになる。 通常、リコール整備をしたかも確認しないので、継続検査で特に異常がなければ車検を通ってしまう。 これらの誤解のため、自動二輪車を購入する時に「400ccクラスは車検があるので、定期的に診てもらえるので良い」という理由で選択される場合がある。しかし原付、小型、250ccクラスの車両なども定期的に車両を整備するためのメンテナンスノートや整備手帳などの書類が付属しており、法律上の義務はないがメーカーでは6か月ごとの整備を求めている(外国車などでは距離ごとの場合もある)。 通常のユーザーが自らの車両を整備することは法律で許されているが、整備士の免許を持たない人間が他人の車を有料で整備することは禁じられている。国土交通省から車検の実施の認証や指定を受けていない「無資格業者」による違法整備が横行していることが、2017年に新聞報道で明らかになり、同省は「年間数十万台の車が無資格業者によって整備されている」として注意呼び掛けを行っている[13]。 これらの問題は、1995年に実施された道路運送車両法改正により車両の安全性の責任が整備工場から車の所有者に移ったことに起因する。いわゆる「前整備後車検」といわれる従来型の(数日預かり実施する)車検から、「前車検後整備」といわれる新しい形態の(短時間で終了する)車検に、車検の仕組みそのものが移行したことも大きい。車両の部品の長寿命化により予防整備の必要性が低下したことも、このような違法整備につながっていると考えられる。 車検の手数料車検そのものの手数料は2021年10月時点で、軽自動車1800円、小型車2100円、普通車2200円である[14]。数万円かかる車検の際の費用の大部分は自動車損害賠償責任保険料の2年分、自動車重量税、取り扱いディーラーへの修理や検査料の支払いで構成されている。なお、他の先進諸国においても日本と同様な頻度での車検制度導入が進んでいる[15]。 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
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