薄膜の成長機構![]() 薄膜の成長機構(はくまくのせいちょうきこう)では材料表面における薄膜のエピタキシャル成長の様々な機構について述べる。現在、薄膜の成長機構は、フォルマー・ウェーバー成長、フランク・ファンデルメルヴェ成長、ストランスキー・クラスタノフ成の3種類に大別されている[1]。 成長機構フォルマー・ウェーバー成長![]() フォルマー・ウェーバー成長(英語: Volmer-Weber growth mode、VWモード、島状成長機構、核生成・成長機構[1])は吸着原子間の相互作用が吸着原子と表面間の相互作用よりも強い時の成長機構で、この時には核となる原子を中心に3次元的なクラスターが形成され、やがて島状に薄膜が成長していく[2]。この成長機構はマックス・フォルマーとA.ウェーバーによって名付けられた[3]。 フランク・ファンデルメルヴェ成長![]() フランク・ファンデルメルヴェ成長(英語: Frank–van der Merwe growth mode、FMモード、層状成長機構、単層成長機構[1])は吸着原子と表面間の相互作用が吸着原子間より強い時の成長機構で、原子同士が平滑に付着するため上方の層が形成される前に下方の層が形成されるという2次元的な成長機構である[4][2]。この成長機構はフレデリック・チャールズ・フランクとジャン・H・バン・デル・メルヴェによって名付けられた[5]。 ストランスキー・クラスタノフ成長![]() ストランスキー・クラスタノフ成長(英語: Stranski-Krastanov growth mode、SKモード、島状+層状成長機構、単層上核生成機構[1])では、はじめのうちは2次元的な層成長が見られるが、ある臨界層厚以上になると3次元的な島状成長の両方の成長機構が見られるようになる[6][4][2]。この成長機構はイヴァン・ストランスキとリュボミール・クラスタノフにちなんで名づけられた。 理論薄膜成長の機構を決定するには堆積する膜のうち、最初の数層の化学ポテンシャルについて考える必要がある。マルコフによれば、原子あたりの層の化学ポテンシャルは で表すことができる[7]。ここで、は吸着材料のバルク部分の化学ポテンシャル、は吸着原子の同一材料からなる濡れ層からの脱着エネルギー、は基板表面からの吸着原子の脱着エネルギー、は原子ごとのミスフィット転位エネルギー、は原子ごとの均一歪みエネルギーである。一般的にこれらの値は成長する層の層厚と基板ー吸着膜の格子ミスフィットに複雑に依存している。歪みがごく小さな場合(の場合)、膜の成長機構はに依存する。
SK成長では、初めのうちはFM成長によって成長し、歪みエネルギーが堆積層に蓄積され、が負になると成長機構がVW成長のものに切り替わる。つまり島状に成長する方がエネルギー的に有利になるのである[7]。 註
|
Portal di Ensiklopedia Dunia