風立ちぬ (松田聖子の曲)
「風立ちぬ」(かぜたちぬ)は、1981年10月7日にCBS・ソニーからリリースされた松田聖子の7枚目のシングル。規格品番:07SH 1067(レコード)[1]。2004年に紙ジャケット仕様の完全生産限定盤12cmCDとして再びリリースされている。 概要同タイトルのアルバム『風立ちぬ』からの先行シングルで、大瀧詠一作曲による唯一のシングル曲である。編曲の多羅尾伴内は大瀧の変名。当時、同年リリースのアルバム『A LONG VACATION』がヒット中であった大瀧の起用は、かつて同じグループ ″はっぴいえんど″ のメンバーであった松本隆の発案によるものである。メロディーはジミー・クラントンの楽曲「ヴィーナス・イン・ブルー・ジーンズ」が元になっている。本作は大瀧が作曲家として初めてチャート一位を記録した作品であり、その後一位を取った作品は薬師丸ひろ子の「探偵物語」のみである。 A面曲「風立ちぬ」は松田自身が出演したグリコ″ポッキー″、B面曲「Romance」は資生堂(現・ファイントゥデイ)″エクボ 洗顔フォーム・ミルキィクリーム″ のそれぞれCMソングとして使用された。 背景A面曲「風立ちぬ」はCBS・ソニーのプロデューサー、若松宗雄が大好きだったと語る堀辰雄の小説『風立ちぬ』を題材として企画された曲で、松本によれば、中学の修学旅行の時に見かけた軽井沢にある万平ホテルの風の抜けるカフェテラスをイメージして歌詞を書いたという[2]。繊細な陰のある作品を目指したが、意図に反して大瀧によって完成した曲は「ものすごいゴージャスな大作」になったという。セールス面についてもヒットはしたものの若松が期待したほどではなかった[3]。書き上げられた譜に手直しを要求することも多い若松であったが、大瀧は自分の音楽を貫くこだわりの強い人で、妥協はしなかったという。「聖子の娯楽性に、松本さんの文学的な才能と大瀧さんの音楽性が加り、間違いなく松田聖子のアーティスト性がぐっと広がったエポックな作品で、大瀧さんには今もとても感謝しています」と後に語っている[4]。 本作のヒットにより、大瀧が編曲者の名義として“多羅尾伴内”の名前を無断で使っているのを初めて知った原作者の比佐芳武の親族が、名前の使用を止めるよう大瀧に求めた。以降、大瀧の編曲者名義は金延幸子の「時にまかせて」のシングルバージョンを編曲した際に用いた「CHELSEA」(当初はひらがなの″ちぇるしぃ″)を使用する事になった。大瀧はこの件を通じ、松田の人気ぶりの凄さを感じたと言う。 『大瀧詠一 Song Book I 大瀧詠一 作品集 Vol.1(1980-1998)』の大瀧本人の解説によるライナーノーツでは、「(松田が)『いい曲だが、自分には向いていない』と言った為、なかなかボーカルダビングが行われませんでした。取り敢えずCMだけでも、という事でCMバージョンの録音がされましたが、たぶん1回か2回しか歌わなかったと思いますが、嬉しそうにスタジオを出てきて『歌えました!』と言っていた笑顔が印象的でした」と回顧している。その後のシングルバージョンの録音では6テイク録ったが、全て見事に歌い切ったと綴られている。また、このレコーディングの際、大瀧は遊び心で松田の歌唱と自身の歌唱を繋いで編集したデュエットバージョンを制作した[5]。この音源は永らく発表されることなく秘蔵音源として保管されていたが、大瀧の没後10年となる2023年10月25日、松田のベストアルバム『Bible -milky blue-』に『風立ちぬ(duet version)』として収録された[6][7]。 大瀧は、自身のコンサートにて「今日歌ったらもう一生、二度と歌う事はない」というMCを添えてセルフカバーしている。公に歌われたのはこの1回限りでありスタジオ録音もされていないため(1981年に松田のレコーディングの際に歌ったものを除く)、ファンの期待に反して音源化はなかなか実現されなかった。しかし、大瀧自身がこの時のライブ音源をマスターテープ化して保管していたことが死後に明らかとなり、2016年のセルフカバーアルバム『DEBUT AGAIN』にて初収録された。すでに動画サイト等で当時のライブ音源が出回っていたが、途中が欠損していたり後日FMにて放送された実況が混ざったものであったりしたため、完全な状態での現存は知られていなかった。 収録曲全作詞:松本隆
関連作品
カバー
その他脚注
関連項目
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