3がつ11にちをわすれないためにセンター3がつ11にちをわすれないためにセンター(center for remembering 3.11)は、仙台市の生涯学習施設であるせんだいメディアテークが市民、専門家、アーティストと協働し、2011年3月11日の東日本大震災とその後の復旧・復興のプロセスを独自に記録・発信していくために開設したプラットフォームである。2011年5月3日始動。略称は「わすれン!」。 概要わすれン!では、ビデオカメラ等の技術や経験の有無にかかわらず、趣旨に賛同した人々が参加者となり、個人個人が体験した震災やそれにまつわることがらを映像、写真、音声、テキストなどで記録している。わすれン!に寄せられたそれらの記録は権利処理されたのち、「震災の記録・市民協働アーカイブ」として整理・保存され、ウェブサイトでの公開、ライブラリーへの配架(パネルやDVD)、展示や上映会の開催、さらには記録を囲み語る場づくりなど、さまざまな形で利活用されている。[1] 震災から1年後の2012年3月より、わすれン!参加者が記録した映像や写真などの成果を上映・展示する「星空と路」を毎年開催している。 活動拠点はせんだいメディアテーク7階のスタジオ。わすれン!の活動に参加登録した参加者はスタジオの設備や機材を利用することができる。また2階の映像音響ライブラリーには、わすれン!が制作した定点観測写真パネルや「わすれン!DVD」、「わすれン!レコード」などが閲覧できる小さな移動式資料室「アーカイヴィークル」が常時設置されている。パネルやDVDは同ライブラリーで貸出も行っている。 来歴震災直後からせんだいメディアテーク再開までせんだいメディアテークは東日本大震災によって7階の天井が一部落下し、休館を余儀なくされた。建物の構造自体には支障がなかったため、2011年5月3日に一部再開されることになったが、震災直後の混乱した状況下に東北地方の文化拠点のひとつである施設として、どのような活動や取り組みをしていくべきか議論がなされた。その際、事業の構想において重要であったのは、
の4点であった。そして大きく分けて2つの事業が立ち上げられる。そのひとつが、メディア活動として、震災復興の過程を市民自らが記録し保存していくための「メディアセンター的機能」をベースとした「わすれン!」であり、もうひとつが被災後の人々が寄り添い語り合える場をつくる「コミュニティセンター的機能」を持った「考えるテーブル」であった。「考えるテーブル」では現在まで「てつがくカフェ@せんだい」による震災にまつわるテーマについて語り合う「てつがくカフェ」が継続的に開催されている。 「3がつ11にちをわすれないためにセンター」開設わすれン!の発案者であり、当時せんだいメディアテーク企画・活動支援室長であった甲斐賢治は、それまで大阪を拠点としたremo(NPO法人 記録と表現とメディアのための組織)で「個人を発信源とする映像や音を用いた表現が、どのように社会的価値を持ち、それがコミュニケーションのありかたを変えるのか」[3]に着目しながら市民と映像のワークショップなどを行ってきた経験を持つ。また、2008年の北海道洞爺湖サミットの時にはボランティアスタッフとして世界各地から市民有志が集まってつくられた「G8市民メディアネットワーク」に参加し、既成のマスメディアの視点からだけではなく、それとは異なる市民の視点で情報を発信する機会を得ていた。その時の経験が、震災後のわすれン!の取り組みに活用できると考えたのである。震災直後の混乱のなかで市民としてのいわば「当事者性」が急に底上げされ、それによってビデオカメラを持つ必然が生まれるかもしれないと感じたという[4]。 そして、センターには「スタジオ」と「放送局」が設けられた。スタジオには情報収集やビデオカメラ等の取材用機材が用意されており、テキスト執筆、映像や写真の編集、インターネットへの配信などの作業が、放送局ではインターネットを介した番組の収録と配信がおこなわれていった。 せんだいメディアテークにおける草アーカイブせんだいメディアテークでは、草の根的なアーカイブ(コミュニティ・アーカイブ)活動を行う市民にスタジオの環境や機材等を無償で提供し、その成果を公共財として記録・発信する仕組みを持っており、多くの協働者とともに、地域の出来事を記録し伝える取り組みを行っている。せんだいメディアテークの持つ機材やノウハウを提供し、市民と共に協働しながら行う「記録・収集」のプロセスと、その素材を持ち寄って上映会や展示の場をひらく「提示・表現」のプロセスを、スタジオを拠点とするプラットフォームにおいて行き来しながら、ともに考え、対話し、集められた記録を地域のアーカイブとして育てている。[5]わすれン!もこの仕組みを軸にしており、多くの参加者と協働しながら震災にまつわることがらを記録・収集、そして利活用している。 一般的に、市民自らがその地域・コミュニティの出来事や歴史を記録し、アーカイブ化する試みのことを「コミュニティ・アーカイブ」と言うが、わすれン!スタッフは活動当初から、プロのアーキビストによる「プロ・アーカイブ」の対義語として「草アーカイブ」という言葉を使って捉えていた。[6]専門家=プロに任せきりにするのではなく、上手い下手にかかわらず誰もが楽しみながら関わることのができる草野球のように、ごく日常的な文化活動としてのアーカイブを目指すという意味で使われている。 わすれン!参加者の取り組みわすれン!参加者の取り組みは個人による記録から、その記録を見直す対話の場づくり、わすれン!参加者以外の一般の方々から震災の記憶を集める試みにまで多岐にわたる。それらの活動を協働で考え、場づくりや利活用を支えているのはわすれン!スタッフである。
脚注
外部リンク
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