Additive Manufacturing File Format
Additive Manufacturing File Format (AMF)は、3Dプリンティングとも呼ばれる積層造形プロセスのためのファイルフォーマットで、 2013年にISO(国際標準化機構)と、ASTM(アメリカ工業規格会)[1]という2つの標準化団体によるジョイントスタンダードとなった。XMLで記述されており、どのようなコンピュータでも一般的に読み書きできる。過去約30年にわたってデファクトスタンダードとなってきたSTLフォーマットが抱える欠点や不足を根本的に解決するため、色、材料、内部構造、部品の配置、作者や著作情報などのメタデータといった、現代の3Dプリンティングに必要とされる情報や、3Dデータの正しい流通に必要とされる情報を網羅している。STLからAMFへの変換ツールも公開されており[2]、SolidWorks、NetFabbをはじめとした3Dモデリングソフトでの対応も徐々に進められている。 構造AMFはひとつのオブジェクトを記述することも、また複数のオブジェクトが配置された全体を記述することもできる。各オブジェクトは、オーバーラップのないボリュームで記述される。それぞれのボリュームは、頂点の集合で構成される三角形メッシュで記述される。1つのオブジェクト内に複数のボリュームがある場合、ボリューム同士がオーバーラップすることはないが、境界部分で頂点を共有することは許されている。AMFはまた、ボリュームの色や材料を指定することができる。色はメッシュの各三角形に割り当てることもできる。AMFはZIP圧縮を用いてファイルサイズを圧縮することができるが、ファイル名はそのまま".amf"で変わらない。AMFリーダーの側でAMFファイルを解凍して幾何情報を読み込む。最小構成のAMFファイルリーダーの実装はAMFファイルのZIP解凍と幾何情報のインポートが必要である(曲面化三角形は除く) 基本構造AMFはXMLで記述されている。単位は、ミリ、インチ、フィート、メートルなどから指定するが、もし指定がなかった場合には、ミリメートルが採用される。
代表的なAMFのタグは以下の5つである。(最低限、
幾何情報現時点(バージョン1.2)でのAMFフォーマットの幾何情報の記述には、STLと同様に面と頂点から構成されるポリゴンメッシュが採用されている。 色色は テクスチャマップテクスチャマップはコンピュータグラフィックスの世界のテクスチャマッピングの考えを借用して表面やボリューム全体に色や材質を割り当てる。 マテリアルマテリアルは 混合、傾斜、ラティス、ランダムマテリアル他の素材との組合せで新しい素材を定義することができる。 配置(コンステレーション)複数オブジェクトは メタデータ
曲面三角形形状の忠実度を向上させるために、フォーマットは曲がった三角パッチを許可している。デフォルトでは全ての三角形は平坦で、三角形の辺は2つの頂点を結ぶ直線であることを仮定している。しかしながら、カーブを持った表面(サーフェス)を記述するとき、必要なメッシュ要素の数を減少させるために曲面三角形と曲線エッジを必要に応じて指定することができる。曲率情報は、平面三角形の同じ数によって記述される表面に比べて1000倍の規模で球面の誤差を低減することが示されている[1]。曲率は曲面が平面から平面三角形の最大寸法の50%超えない範囲で指定できる。曲率を指定するために、 数式
圧縮AMFファイルはプレーンテキストフォーマットと圧縮されたテキストフォーマットをサポートしている。圧縮する場合はZIP形式で圧縮される。圧縮されたAMFファイルは一般的に、圧縮されたバイナリSTLファイルの約半分のサイズと同等である。圧縮はWinZIPや7-ZIPのようなソフトウェアで手動で圧縮することもあれば、AMFをサポートするソフトウェアのエクスポート機能で自動的に圧縮されることもある。圧縮、非圧縮に関わらずファイルの拡張子は.amfとなり、AMFをサポートするソフトウェアはどちらも読み込む必要がある。もしAMFファイルが圧縮されている場合、インポート時に解凍処理される。 AMF設計に際して考慮された点ASTMがAMFの仕様を策定するにあたって事前調査を行った結果、新しいフォーマットに最も望まれているのは特定の企業による独占的なフォーマットでないことであった[3]。またSTLフォーマットでは単位(mm,inch等)の指定ができないことや三角パッチ同士の接続を保障してしないことなどによる造形可能性の問題が懸念事項として残っている。その他の主要な要求事項としては、忠実度の高い幾何形状を小さいファイルサイズで表現すること、複数の素材、色、微細構造の記述がある。積層造形の分野で幅広く利用されるために以下の事項について考慮されている。
歴史1980年代半ばから、STLファイルはCADソフトとAM装置のデータのやりとりをする上で事実上の標準フォーマットとして利用されたきた。STLフォーマットは表面のメッシュに関する情報のみしか持たず、色、テクスチャ、材質、内部構造やその他の造形対象となるオブジェクトの属性は提供されていない。積層造形技術は造形対象が、単一素材、均質な形状のものから色や機能的な傾斜素材、微細構造、複数素材を有するものへと進化し、これらに対応するために標準ファイル交換フォーマットを発展させる必要が出てきた。 また積層造形技術に対する分解能の向上の要求が新しい標準の開発につながった。造形プロセスの幾何分解能はマイクロスケールに近づいてきたため、滑らかな曲面を忠実に再現するためには大量の三角パッチが必要となり、その結果非実用的なレベルにまでファイルサイズが肥大化した。 1990年代から2000年代までの間、多くのがメーカー固有の製造設備に対応させるため、各企業が独自のファイルフォーマットを利用してきた。しかし業界内での合意形成されなかったことが共通のフォーマットの普及を妨げてきた。 2009年の1月、積層造形技術に対応するため新しいASTM委員会F42が設立され、デザインファイルの新しい標準フォーマットを開発するためのグループが結成された。2009年末[3]から新しい標準について1年以上審議されてきた結果、2011年5月2日にAMFの最初のバージョンが正式に採用された[4]。 2013年にイギリス・ノッティンガムで行われた会議において、ASTMのF42とISOのTC261が積層造形技術の標準を共同で開発してゆく計画が承認された。そのためAMFはISOとASTMによって共同で管理される。 2019年、ISO小委員会で、ソリッドモデリングのためのAMFサポート:ボクセル情報,構造的ソリッドジオメトリ表現,ソリッドテクスチャ追加に関して審議中。 サンプルファイル下記のAMFファイルは2つの素材で作られた四角錐(ピラミッド)を表している[5]。 下記のテキストをテキストエディタもしくはXMLエディタにコピー&ペーストして"pyramid.amf"として保存することで、AMFファイルが出来上がる。 ZIP圧縮する場合は、ファイル拡張子を".zip"から".zip.amf"に変更する。 <?xml version="1.0" encoding="utf-8"?>
<amf unit="inch" version="1.1">
<metadata type="name">Split Pyramid</metadata>
<metadata type="author">John Smith</metadata>
<object id="1">
<mesh>
<vertices>
<vertex><coordinates><x>0</x><y>0</y><z>0</z></coordinates></vertex>
<vertex><coordinates><x>1</x><y>0</y><z>0</z></coordinates></vertex>
<vertex><coordinates><x>0</x><y>1</y><z>0</z></coordinates></vertex>
<vertex><coordinates><x>1</x><y>1</y><z>0</z></coordinates></vertex>
<vertex><coordinates><x>0.5</x><y>0.5</y><z>1</z></coordinates></vertex>
</vertices>
<volume materialid="2">
<metadata type="name">Hard side</metadata>
<triangle><v1>2</v1><v2>1</v2><v3>0</v3></triangle>
<triangle><v1>0</v1><v2>1</v2><v3>4</v3></triangle>
<triangle><v1>4</v1><v2>1</v2><v3>2</v3></triangle>
<triangle><v1>0</v1><v2>4</v2><v3>2</v3></triangle>
</volume>
<volume materialid="3">
<metadata type="name">Soft side</metadata>
<triangle><v1>2</v1><v2>3</v2><v3>1</v3></triangle>
<triangle><v1>1</v1><v2>3</v2><v3>4</v3></triangle>
<triangle><v1>4</v1><v2>3</v2><v3>2</v3></triangle>
<triangle><v1>4</v1><v2>2</v2><v3>1</v3></triangle>
</volume>
</mesh>
</object>
<material id="2">
<metadata type="name">Hard material</metadata>
<color><r>0.1</r><g>0.1</g><b>0.1</b></color>
</material>
<material id="3">
<metadata type="name">Soft material</metadata>
<color><r>0</r><g>0.9</g><b>0.9</b><a>0.5</a></color>
</material>
</amf>
関連項目脚注
外部リンク
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