GARDEN (ACID ANDROIDのアルバム)
『GARDEN』(ガーデン)は、日本のロックバンド・L'Arc〜en〜Ciel、geek sleep sheepのドラマー、yukihiroのソロプロジェクトであるACID ANDROIDの4作目のアルバム。『2017 MIX』を2017年11月24日配信発売、『2018 MIX』を2018年4月4日にフィジカル発売。発売元はMAVERICK内の自主レーベル、track on drugs records[注釈 1]。 解説前作『code』以来約7年1ヶ月ぶりとなるアルバム。前作がミニアルバムであったため、フルアルバムとしては2010年7月に発表した『13:day:dream』以来約7年4ヶ月ぶり、4作目のリリースとなった。 なお、本作は、2017年7月1日にアーティスト名義の表記を小文字のacid androidから、大文字表記のACID ANDROIDに変更してからリリースされた、初のアルバムになっている。 また、本作には2014年に予約開始した公式アートブックの第二弾「collection #2」の購入者を対象に限定配信された楽曲「the end of sequence code」と、2017年10月にデジタルシングルとしてリリースされた「roses」「ashes」の3曲をリアレンジしたバージョンを含む、全9曲が収録されている。 音楽性本作の音楽性は、プロジェクト開始初期から前作『code』まで下敷きとしていたインダストリアルな側面が影を潜め、yukihiroが幼い頃から好んで聴いてきた1980年代のニュー・ウェイヴ、シンセポップ、エレクトロ・ポップからの影響が色濃く反映されている[3][4]。本作の印象について、yukihiroは「エレポップというより、ニュー・ウェーヴって言われたほうがしっくり来るかな。ジャパンやデュラン・デュランとか、中学高校の頃に聴いていたヒットチャートの音楽。そこにあったニューウェーヴ感というか。まだエレポップって言葉も知らない頃に感じたものが、土台になってる。その印象が強いかな[5]」と述べている。また、自身が敬愛するニュー・ウェイヴ・バンド、デペッシュ・モードをあげたうえで、yukihiroは「デペッシュはずっと好きですし、今までの作品にも反映されてると思うんですけど…あの時代は新しくて尖ってるものはみんなニュー・ウェイヴと言われていたじゃないですか。その感覚みたいなものを改めて追求してみようと思ったんです[6]」と本作発売当時のインタビューで語っている。 また、yukihiroは、音楽評論家の小野島大、THE NOVEMBERSの小林祐介と高松浩史、そして土屋昌巳(KA.F.KA、ex.一風堂)を交えた座談会の中で、これまでの作品から大きく音楽性を変えた理由について「(インダストリアルは)やり尽くしたとまでは言えないですけど、自分のなかでやりたいと思っていたことはやったかな[7]」と語っている。さらにyukihiroは、本作発売当時に「(インダストリアルは)今でも好きだし、もしかしたらまたそういう方向性のものを作るかもしれないですけど、今回はそこから1回離れてみようかな、と思ったんですよ[5]」と述べている。なお、前作『code』のあたりから、歪んだギター・リフが入っていない楽曲を多く手掛けるようになっており[8]、徐々に音楽性の移り変わりがあったことが、過去の音源からもうかがうことができる。yukihiroは、前作を発表したタイミングで受けた音楽雑誌『音楽と人』2010年11月号のインタビューにおいて「そういう(ギターの主張が前面に出ていない)曲だと、今のところライヴで出来ない曲になっちゃうんですよ。それこそTK(凛として時雨)に参加してもらった曲(=前作『code』収録曲「mode inversion」)も、TKのアコギ以外はギター入ってないんですよね。その曲をライヴでやるにはどうすればいいんだろう、って。そういう曲作りたいと思ってたから、作ってるんだろうし。でも、激しいリフものの曲も捨てるわけでもない。だからバリエーションが増えてきそうな気がする[8]」とコメントしていた。その後、ACID ANDROIDは音楽性の変化を踏まえ、2012年頃からライヴのサポートメンバーを一新し[9]、ギタリストとして小林祐介(THE NOVEMBERS、THE SPELLBOUND)やKENT(Lillies and Remains)、ドラマーとして山口大吾(People In The Box)らを流動的に据えた新体制で公演を行うようになっている。 録音作業本作の制作では、久々にyukihiroが生のドラムを一切叩いておらず[10]、音源にはリズムマシンのRoland TR-808とTR-909の実機で鳴らしたリズムがメインで使用されている[10]。なお、音は実機からのサンプリングではなく、Pro ToolsからMIDIで実機を鳴らし録っているという[10]。また、ACID ANDROIDの制作で必須となっているハードのアナログ・シンセサイザーは、今回、MOOG Minimoog Voyager[11]やNord rack 3[11]、Roland TB-03[11]などが使用されており、サウンドはダークウェイヴを背景に、テクノやエレクトロ・ポップに昇華させた音で仕上げられている[12]。一方で、音数を絞り空間を活かしたシンプルな音作りと、端正なバランス感覚に富んだサウンド・プロダクションは前作までと変わりなく、音楽性が変われど本作においてもyukihiroの個性を感じ取ることのできる仕上がりになっている[6]。なお、yukihiroは音数について「よくそう言われるんです。音数を絞ってるって。でも僕は"けっこう音数を入れたなあ"と思ってるんです。でも人にはそう聞こえてるんだったら、ちゃんと整合性がとれてるのかなと(笑)。もちろん必要なフレーズを必要な音色で必要な分だけ鳴らしてるつもりなんですけど……音色を作るのにめちゃくちゃ時間をかけるんですよ。それで自分で勘違いしてるのかもしれないですね。時間かかってるから、たくさん音を入れたに違いないって(笑)[6]」と本作発売当時に述べている。また、今回のミックス作業は、2003年発表の『faults』以来、久々にyukihiroが単独で行っている[13]。今回ミックスを自身が単独で行うことにした経緯について、yukihiroは「シンセを触って曲作りをしていくうちに、"この音をミックスでどう解釈するか"という部分を考えたら、人任せでは完成しないだろうなと思って、2017年の初めぐらいに自分でミックスすることを考え始めました[11][14]」と述べている。 さらに今回のレコーディングでは、2012年に開催したライヴツアー「acid android live 2012」からサポートギタリストとして参加していた、小林祐介(THE NOVEMBERS、THE SPELLBOUND)が全ての楽曲のギター録りを行っている[5]。yukihiroは本作発売当時に受けたインタビューの中で、小林にギターを弾いてもらうことにした経緯について「音楽的な知識を信頼してるんですよね。あとは感性かな。彼は研究熱心で、いろんな音楽を聴いてるし、それを自分のものにするのも上手だと思ってるので。ギターフレーズはほとんど僕が考えてるんですけど、彼のギタープレイが、ACID ANDROIDの曲にどんな変化を与えるか、は楽しみだったりするんですよ。だから今回は、彼に全曲ギターをお願いしました[5]」と述べている。 楽曲について
本作に収録された楽曲の多くは、本作発売の約5〜6年前から制作が進められていたという[6]。なお、本作の3曲目に収録された「dress」のデモ音源は、配信リリース開始の約3年前となる2014年7月1日に、"acid android voice memo"と題し、公式YouTubeアーティストチャンネルにアップロードしたショートムービー内で公開されている(デモ音源リンク)。また、前述のデジタルシングル「roses」(デモ音源リンク)、「ashes」(デモ音源リンク)の2曲も、「dress」と同様に、3年前の時点でYouTube上にデモ音源が公開されている。さらに本作収録曲の多くは、2013年に行ったライヴ「acid android live 2013」以降に開催した公演で、制作途中の段階でありながら、曲名が付いていない状態で頻繁に演奏されていた。前述の2013年に行ったライヴは、4月20日のLIQUIDROOM公演と、12月13日のSTUDIO COAST公演の2ステージのみだったが、いずれの公演でも本作の収録曲が"新曲"として披露されている(4月20日公演では1曲[15]、12月13日公演では4曲[16]が新曲として披露されている)。ちなみに、2013年12月13日に開催したSTUDIO COAST公演で披露された「the end of sequence code」のライヴ映像の一部(1分13秒)は、2014年5月7日にYouTube上で公開されている。 また、本作に収録された楽曲の歌詞は、これまでにACID ANDROIDが発表した音源と比べ、英語詞の割合が少なく、ほぼ全てが日本語詞で手掛けられている。今回日本語詞を増やした経緯について、yukihiroは「拘ってはいないですね。今回は日本語詞でいこうかな、って気分だっただけです[5]」と述べている。ちなみに、yukihiro曰く、アルバムのテーマのひとつとして「バベル」というキーワードがあったという[17]。yukihiroは本作発売当時に受けた音楽雑誌のインタビューの中で、バベルというテーマに関して「全曲じゃないですけど、数曲、自分の中でバベルをモチーフにしてた[17]」「(バベルのイメージは)ブリューゲルの『バベルの塔』です。あと(漫画の)『バビル2世』かな(笑)。今年、展覧会やってるって聞いて、結局行かなかったんだけど。あの絵には惹きつけられますね[17]」「(ブリューゲルのバベルの塔で惹かれる点は)描き込みのすごさかな。話も人が天を目指して高い塔を建てていったら、神々が怒って罰を下すっていう神話は、いつの時代にもあてはまるもんだな、と思って。普段の考え方とかにも。(中略)何にしてもそうですけど、どんなにテクノロジーが進歩しても、良かれ悪かれそういうところは変わらないよな、って[17]」と述べている。 リリース形態2017MIX本作の2017年版のミックスバージョン『2017MIX』は、フィジカル発売前の2017年11月14日に、各種音楽配信サイトでダウンロード・ストリーミング配信が開始されている。 『2017MIX』には、アルバム配信リリース前に発表された「the end of sequence code」「roses」「ashes」の3曲のリミックスバージョン「the end of sequence code - ver2」「roses - ver2」「ashes - ver2」を含む全9曲が収録されている。 ちなみに『2017MIX』のデジタルリリースに向けたプロモーションとして、2017年10月27日に渋谷WWW-Xで実施されたワンマンライヴ「ACID ANDROID LIVE 2017」(#2)の終演後、アルバム『GARDEN』の先行試聴会が開催された[18]。また、『2017MIX』を発表するにあたり、オフィシャルサイト内に設けられた特設サイトにおいて、音楽評論家の小野島大によるyukihiroへのインタビュー記事が公開されている[6]。 2018MIX本作の2018年版のミックスバージョン『2018MIX』は、2017年版を配信開始してから約4ヶ月後となる2018年4月4日に、フィジカルでリリースされている。なお、『2018MIX』はフィジカル発売と同日に、各種音楽配信サイトにおいてダウンロード・ストリーミング配信も開始されている。 『2018MIX』には、『2017MIX』に収録されていた楽曲を再度ミックスしたバージョン9曲が収められている。なお、「the end of sequence code」「roses」「ashes」の3曲に関しては、今回が3度目のミックスになったことを踏まえ、「the end of sequence code - ver3」「roses - ver3」「ashes - ver3」として収録されている。 yukihiroは2018年に受けたインタビューで、フィジカルリリースにあたり再度ミックスをやり直した理由について「配信用のミックスは、リズムに焦点が当たりすぎていた点がちょっと気になっていたんです。どの作品でも作り終わった後に"こうしておけば良かった"という気持ちは芽生えるため、今まではそれを次の作品に反映していくというやり方だったんですが、今回は配信からCDリリースまでちょっと時間があったので少し触ってみようかなと[19]」と述べており、2017年版の発表後、約2ヶ月半ほどリミックス作業をしていたという[19]。ちなみに『2018 MIX』における『2017 MIX』からの変更点としては、特にスネアの音色で顕著に表れており、yukihiro曰く、楽曲ごとにリズムマシンで鳴らす音色を変更するため、Roland TR-808とTR-909を駆使し、曲に合わせたサウンドを制作し直したという[19]。他には、曲によってはリバーブやディレイを追加していること、ストリングス系のソフト音源をモノラルで再録音していること[19][13]などが、2017年版からの変更点としてあげられる。 なお、本作は、前作から引き続き、自主レーベル、track on drugs recordsよりリリースされている(規格品番はPOCS-9176/7、POCS-1670)。そして、ユニバーサルミュージックをディストリビューターとし発売されている。また、『2018 MIX』のフィジカルは初回限定盤(2CD)、通常盤(CD)の2形態で発売されている。初回限定盤には、2017年に発表されたバージョン『2017 MIX』を収めたボーナスディスクが付属されている。ちなみにフィジカルのアートワークは、佐藤嘉高(White Out Graphics)が担当している。 批評
収録曲
配信限定楽曲
the end of sequence code (ジ・エンド・オブ・シークエンス・コード)
roses (ローゼズ)
ashes (アッシィズ)
クレジット
参考文献・サイト
脚注注釈
参考文献・出典
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