IPCC報告書における中世温暖期と小氷期の記述(IPCCほうこくしょにおけるちゅうせいおんだんきとしょうひょうきのきじゅつ、英語:Description of the Medieval Warm Period and Little Ice Age in IPCC reports、IPCC=気候変動に関する政府間パネル)は、1990年の最初の報告書以降、過去1000年の温度記録の科学的理解が向上するにつれて変化してきた。中世の温暖期(MWP)と小氷期(LIA)は、2千年紀において最もよく知られた気温変動である。その後の報告書のホッケースティック曲線の批判者達は、どの報告書もその現象を議論はしているが、MWPとLIAに関する記録はIPCC第3次評価報告書において抑圧されたと主張している[要検証 – ノート]。しかし最新の報告では、地域によっては今よりも温暖であった可能性があるものの、地球全体での平均気温は今よりもずっと寒冷であったと見られている[1]。
1992年の報告書の付録Cは、Wang and Wang (1991)[9]から機器観測が始まる前の気温を示す2つの図だけを用いた。それらは1350〜1950年の東中国および北中国における文書の証拠に基づく気温を示す。変動は0.5〜0.75℃程度で、変わりやすく、20世紀以前が現在より寒冷であったことを示す。図は1350年に止まり、MWPを示さない。MWPを参照する唯一のテキストでは太字でこの地域についてのものであることを示している。
1995年までに、その対象の研究は進展し、夏季だけ(年輪はしばしば夏の気温によって最も影響されるため)だが半球気温の再構築が得られるようになった。1995年のIPCC報告書は、Bradley and Jones (1993)[10]による、1400年から1979年までの北半球の夏の気温再構築(図3.20)を用いた。これもMWP(1400年にまで遡るのみ)は示されず、そのほか20世紀以前に0.5℃程度のより寒冷な気温が示される。図3.21は、1200年から現在に至る8つの氷床コアの記録を示し、混合パターンを表示している。MWPとLIAはテキストに、「特別な注を受けている2つの期間...これらはそれぞれ全球的に温暖および寒冷な時代として時に解釈された。最近の研究はMWPとして一般に知られている期間を再評価した...利用可能な証拠は(地理的に)限定されており、はっきりしていない」と紹介されている。
2001年の報告書は、Mann et al. (1999)[3]、Jones et al. (1998)[11]、Briffa (2000)[12]によって表される西暦1000年から北半球の温暖期および通年の再構築を用いた[4]。
IPCC TARはMWPについて次のように述べている。「仮定された中世温暖期は明瞭さに欠け、振幅もより控えめで、一般的に慣例上定義されていたヨーロッパの時代区分から推定されたものに比べ、半球規模のタイミングもいくらか異なって見える。Jones et al. (1998)[11]、Mann et al. (1999)[3]、Crowley and Lowery (2000)[13]による北半球平均気温の推定は、11世紀から14世紀の気温が15世紀から19世紀の気温に比べて約0.2℃高く、しかし20世紀中頃よりもむしろ低いことを示している。」[14]
IPCCは2007年に発行したIPCC第4次評価報告書(AR4)では、Esper et al. (2002)[15]、Bradley et al. (2003a)[16]、Jones and Mann (2004)[17]、D’Arrigo et al. (2006)[18]を含む、より最近の気温再構築が用いられている。
AR4においてIPCCは、”中世の温暖期”と呼ばれる時期について次のように総括している[19]:
^ abIPCC, 1990: Climate Change, The IPCC Scientific Assessment. J.T. Houghton, G.J. Jenkins and J.J. Ephraums (eds.), Cambridge University Press, Cambridge, UK, 365 pp.
^ abcM.E. Mann, R.S. Bradley and M.K. Hughes, 1999: Northern hemisphere temperatures during the past millenium: Inferences, uncertainties, and limitations. Geophysical Research Letters, 26:759-762.
^S.-W. Wang and R. Wang. 1991. Little Ice Age in China. Chinese Science Bulletin, 36:217-220.
^R.S. Bradley and P.D. Jones, 1993: 'Little Ice Age' summer temperature variations: their nature and relevance to recent global warming trends. The Holocene, 3:367-376.
^ abP.D. Jones, K.R. Briffa, T.P. Barnett and S.F.B. Tett, 1998: High-resolution palaeoclimatic records for the last millennium: interpretation, integration and comparison with general circulation model control run temperatures. The Holocene, 8:455-471.
^K.R. Briffa, 2000: Annual climate variability in the Holocene: interpreting the message of ancient trees. Quaternary Science Reviews, 19:87-105.
^T.J. Crowley and T. Lowery, 2000: How warm was the medieval warm period? Ambio, 29:51-54.
^J. Esper, E.R. Cook, and F.H. Schweingruber, 2002: Low-frequency signals in long tree-ring chronologies for reconstructing past temperature variability. Science, 295:2250–2253.
^R.S. Bradley, M.K. Hughes and H.F. Diaz, 2003: Climate in Medieval time. Science, 302:404–405.
^P.D. Jones and M.E. Mann, 2004: Climate over past millennia. Reviews in Geophysics, 42, RG2002, doi:10.1029/2003RG000143.
^R. D'Arrigo, R. Wilson and G. Jacoby, 2006: On the long-term context for late twentieth century warming. Journal of Geophysical Research, 111, doi:10.1029/2005JD006352.