UNIV参加者のための教皇ベネディクト16世との特別謁見(バチカン・聖ペトロ大聖堂、2008年3月) UNIV国際大学生会議 (UNIVこくさいだいがくせいかいぎ、英語 :UNIV Forum または UNIV Congress )は毎年ローマ で行われる大学生の大規模国際交流 イベントである。カトリック教会 の組織の一つであるオプス・デイ 属人区 を創立した聖ホセマリア・エスクリバー (1902年-1975年)の後押しによって1968年 に始まったのである。
2018年までの参加者は10万人以上に上っており、日本 からも1970年代後半より毎年十数名の男女学生が参加している。
目的
世界の150校以上の大学 から3千人余りの学生がローマ に集い[ 1] 、西洋文化・歴史・美術などに触れながら、現代社会における大学の役割や教育システムを考えて語り合うことがUNIVの目的である[ 2] [ 3] 。また、UNIVは聖週間 と呼ばれるキリスト教 暦で最も重要な期間と重なるため、参加者はローマ教皇 との謁見やミサ 、そして復活祭 (イースター)の諸行事に参加することができる。また、ローマ やバチカン市国 の様々な歴史遺産や美術作品を通して、西洋美術史 ・西洋史 ・キリスト教の歴史 などに触れることができる。
UNIVという名には、「大学 (univ ersity)」という意味だけではなく、「普遍性(univ ersality)」という意味も込められている。広い心と普遍的な精神を身につけた人々にこそ、社会に貢献できる、ということである[ 4] 。英語名は、男子学生向けの集いが「UNIV Forum」、女子学生向けのイベントが「UNIV Congress」であるが、日本語の正式名称はいずれも「UNIV国際大学生会議」となっている。
2018年春に、UNIVの50周年に祭して、教皇フランシスコ がUNIVの若者たちに宛てた手紙にはUNIVの目的が要約されている:
「神と教会 と教皇 への愛に動かされて再び皆さんは永遠の都[=ローマ] にやって来られました。こうして、多様な文化と経験を持ちながらも、幸福と充実と寛大な献身への同じ望みに動かされている他の若者たちと共に、聖週間 中にキリスト と出会い、信仰と皆さんの志を成熟させるための絶好のチャンスが与えられます」[ 5]
参加対象は男女高校生・大学生(学部生および大学院生)・青年社会人、または教員などの大学関係者である。宗教や国籍は問わない。毎年、UNIVを代表する数名の学生が一対一でローマ教皇 に挨拶する。
発足
UNIVを始めた聖ホセマリア・エスクリバー (1902年 - 1975年)
聖ホセマリア・エスクリバー は、自らの信仰を深めると同時に、異文化から学べるカトリック(ギリシア語では「 καθολικός /カトリック」は「普遍的」という意)な心を培うために、そして教会 とローマ教皇 への愛を示すために、全てのキリスト者が「videre Petrum」(羅語 :ペトロ[=教皇 ]に会う)ために、キリスト教の中心地であるローマ で聖週間 を過ごすことを多くの若者に勧めたのである。
また1960年代 という時代は、世界中の学生 が社会変革を目的とし、政府や社会に対する批判・懐疑を公に見せ始め、学生の力が世界的な高揚を見せた時期である。しかし、様々な社会問題を解決するためには、暴力よりも、相互理解やダイアログのみが真の発展や平和をもたらすため、UNIVは多数の国・文化から集う学生たちの意見交換の場として始まったのである[ 6] 。
開催日程・開催地
開催期間は毎年の聖週間 と重なり、枝の主日 の前日(土曜日)から復活の主日 (日曜日)までの9日間である。なお、カトリック教会の復活祭 は年によって日付が変わる移動祝日であるが、「春分 の日の後の最初の満月 の次の日曜日 」が基準であるため、復活祭 (UNIVの最終日)は3月22日から4月25日の間に当たる。
UNIV ForumおよびUNIV Congressの開催地は毎年イタリア の首都ローマ であり、会場はナヴォーナ広場 近くにある教皇庁立聖十字架大学 (イタリア語 :Pontificia Università della Santa Croce )のメインキャンパス(Piazza di Sant'Apollinare, 49) である。
聖週間 のミサ をはじめ、宗教的行事はローマ市 内の様々な教会や大聖堂で行われる。
UNIV Forumについて
聖週間 の宗教的行事の他に、一日のアカデミック・イベントがある。それはUNIV Forumと呼ばれるものであり、前半は複数のゲストによる講演、後半は学生たちによるプレゼンテーション。プレゼンテーションとは、文系理系を問わず、学生たちがそれぞれの勉強を活かして自分の分野の観点からその年のテーマに沿って研究プロジェクトを行う。指導教員のもとで1〜6名の少人数グループでこの研究プロジェクトを行うことによって、学問的研究の仕方を学びつつ、複数の学問分野(=学際 )から現代社会のあり方や諸問題を考えることが期待される。フォーラム当日、学生たちが審査員らの前で母国で行われた研究プロジェクトを発表する(使用可能言語は英語 、スペイン語 、ポルトガル語 、フランス語 )。最後に、授賞式がある。
現在、以下の6つの部門がある(なお、テーマは以下の「各年のテーマ一覧 」を参照) :
口頭発表部門(ポスター式)
小論文部門(エッセイ式)
動画部門
社会福祉部門 ※
美術部門(音楽、絵画、文学など)※
ビジネス・ケース・コンペティション部門 ※
※ テーマは自由
各年のテーマ一覧
毎年、テーマに沿って様々な講演会や討論会が行われる。
2020年 :#NGL, Next Generation Leaders
2019年 :Getting Down to Business: The Transformative Power of Work
2018年 :Rethinking the Future
2017年 :A World in Movement
2016年 :The Family Impact
2015年 :Friendship: model for a New Citizenship
2014年 :Cosmos, The Ecology of the Person and his environment
2013年 :Reality Check: Discovering Human Identity in a Digital World
2012年 :Pulchrum : The Power of Beauty
2011年 :Living Freedom Decisively
2010年 :Can Christianity Inspire a Global Culture?
2009年 :Universitas , Knowledge without limits
2008年 :Being, Appearing, and Communicating: Entertainment and Happiness in a Multi-Medial Society
2007年 :Being, Appearing and Communicating: Lifestyles and Role Models in Film and Television
2006年 :Projecting Culture: The Language of the Media
2005年 :Projecting Culture: The Language of Music
2004年 :Projecting Culture: The Language of Advertising
2003年 :Constructing Peace in the 21st Century
2002年 :Study, Work, Service
2001年 :The Human Face in a Global World
2000年 :The Image of Man 2000 Years On
1999年 :Solidarity and Citizenship: Challenges for the University of the New Century
1998年 :Human Progress and Human Rights
1997年 :Multi-Cultural Society: Competition and Cooperation
1996年 :Communication: learning to live
1995年 :Work: Inventing the Future
1994年 :Family and Development
1993年 :Suffering and happiness
1992年 :A Possible Peace, A Challenge for the University
1991年 :The Discovery of a New World
1990年 :Creativity in the 90's
1989年 :Revolution, Dignity, Solidarity
1988年 :Dignity and Progress
1987年 :Global civilization and human culture
1986年 :The Cultural Foundations of a Project for Peace
1985年 :Today’s Youth and the Society of the Future
1984年 :The social value of professional work
1983年 :Study as Work
1982年 :Quality in Study, Quality in Life
1981年 :Science and sense of man
1980年 :The End of Man and the Future of the University
1979年 :Towards a Humane City
1978年 :Man in urban culture
1977年 :The Foundation of the Future
1976年 :In Spite of Everything, Europeans
1975年 :Cultural limits of the technological civilization
1974年 :Ideologies and Culture in the European University
1973年 :Conformity or Creativity: A Dilema for the University
1972年 :Responsibility for the university in a society in crisis
1971年 :Student-Professor Relations in European Universities
1970年 :The Democratization of the University
1969年 :Self-government of the university
1968年 :University Autonomy and Society
歴代教皇とUNIV
福者パウロ6世 や聖ヨハネ・パウロ2世 をはじめ、近年の教皇ベネディクト16世 と教皇フランシスコ を含め、歴代教皇がUNIV参加者のために特別謁見を行ったり、演説の中で彼らに向けた言葉を残している[ 7] :
"You can be as leaven in the mass, those who are able to change even the great metropolises, the great cities, the great intellectual centers. You can bring a better future because within human realities everything is accomplished through the person, and it is the person who accomplishes it. Of course if the person is carried by the power of God, in the grace of God, if he walks with Him, he or she is then capable of changing the world. Let the final word of this UNIV be this wish: that you better this world ." (教皇聖ヨハネ・パウロ2世 、UNIV 1982年)
脚注
関連項目
外部リンク