V級潜水艦(Vきゅうせんすいかん、V-class submarine)、公式には1941-42計画U級長船体型(U-Class Long hull 1941–42 programme)は、第二次世界大戦中に22隻が建造されたイギリス海軍の小型潜水艦[1]。「ヴァンパイア」(HMS Vampire, P72)をネームシップと見做して、ヴァンパイア級と呼ばれることがある[2]。
設計と開発
第二次世界大戦に突入すると、U級潜水艦だけでは必要な潜水艦の隻数を満たせなくなった。そこで、U級潜水艦をベースに量産性向上などの改設計を加えた艦級が本級である。
1941年から1943年度戦時急造計画で42隻がこの設計で発注され、全艦がヴィッカース・アームストロングのバロー=イン=ファーネスまたはウォーカー・オン・タイン(英語版)造船所で建造されることになっていたが、実際に完成したのは22隻であった。一般的にV級の艦級名で呼ばれるものの、U級との連続性から7隻は頭文字がUで始まる艦名が付けられていた(逆に、U級のうち4隻はVで始まる艦名が付けられている)。
U級と同様に単殻構造である点は変わらないものの、改良点として艦体を完全溶接化し、内殻を厚さ1/2インチから3/4インチに増厚することで安全潜航深度を95メートルに増大している。また、推進器の水中放射雑音低減のため艦尾形状がシャープな形に変更された。
艦名一覧
いずれも大戦後半に就役したため、完成した22隻に戦没艦はなかった。本級のうち、「ヴェンチャラー」(HMS Venturer, P68)は1945年2月9日、双方が潜航状態のまま「U-864」を魚雷で撃沈し「双方が潜航中の状況で敵潜水艦撃沈に成功した唯一の潜水艦」という記録を残している。
最初の8隻は1941年12月5日に発注された。
- ヴェンチャラー(HMS Venturer, P68) - 戦後ノルウェー海軍の「ウトシュタイン」(HNoMS Utstein, P302)となる。
- ヴァイキング(フランス語版)(HMS Viking, P69) - 戦後ノルウェー海軍の「ウトヴァール」(HNoMS Utvaer, P303)となる。
- ヴェルト(HMS Veldt, P71) - ギリシャ海軍の「ピピノス(フランス語版)」(Pipinos, Y8)として竣工。
- ヴァンパイア(英語版)(HMS Vampire, P72) - 1950年解体。
- ヴォックス(英語版)(HMS Vox, P73) - 1946年解体。
- ヴィガラス(英語版)(HMS Vigorous, P74) - 1949年解体。
- ヴァーチュー(フランス語版)(HMS Virtue, P75) - 1946年解体。
- ヴィジゴス(フランス語版)(HMS Visigoth, P76) - 1950年解体。
1942年5月21日に18隻が追加発注されたが、そのうち6隻は1944年初頭にキャンセルされた。
- ヴィヴィッド(英語版)(HMS Vivid, P77) - 1950年解体。
- ヴォレイシャス(フランス語版)(HMS Voracious, P78) - 1946年解体。
- ヴァルパイン(フランス語版)(HMS Vulpine, P79) - 戦後デンマーク海軍の「ストレン」(HDMS Støren)となる。
- ヴァーン(フランス語版)(HMS Varne, P81) - 1958年解体。
- アップショット(英語版)(HMS Upshot, P82) - 1949年解体。
- アーティカ(フランス語版)(HMS Urtica, P83) - 1950年解体。
- ヴィンヤード(HMS Vineyard, P84) - フランス海軍の「ドリス(英語版)」(Doris, P84)として竣工。
- ヴァリアンス(フランス語版)(HMS Variance, P85) - ノルウェー海軍の「ウートシーラ」(HNoMS Utsira, S301)として竣工。
- ヴェンジフル(英語版)(HMS Vengeful, P86) - 1945年にギリシャ海軍の「デルフィン」(Delfin, Y-9)として移管。
- ヴォーテックス(HMS Vortex, P87) - フランス海軍の「モース(フランス語版)」(Morse, P87)として竣工。1946年返還後1947年デンマーク海軍の「セーレン」(HDMS Sælen)となる。
- ヴァイルレント(英語版)(HMS Virulent, P95)- 戦後ギリシャ海軍の「アルゴナフティス」(Argonaftis, Y15)となる。
- ヴォラタイル(フランス語版)(HMS Volatile, P96) - 戦後ギリシャ海軍の「トリアイナ」(Triaina, Y14)となる。
以下はキャンセルされた。
- ヴィトー(HMS Veto, P88)- 船台上で解体。
- ヴィリル(HMS Virile, P89)- 船台上で解体。
- ヴィジタント(HMS Visitant, P91)- 未起工。
- ユーパス(HMS Upas, P92)- 船台上で解体。
- ユーレックス(HMS Ulex, P93)- 未起工。
- ユートピア(HMS Utopia, P94)- 未起工。
1942年11月17日にさらに6隻が発注されたが、そのうち4隻は1944年1月23日にキャンセルされた。
- ヴォータリー(フランス語版)(HMS Votary, P29) - 戦後ノルウェー海軍の「ウートハウグ」(HNoMS Uthaug, S304)となる。
- ヴァガボンド(HMS Vagabond, P18) - 1950年解体。
以下はキャンセルされた。
- ヴァンテージ(HMS Vantage)- 未起工。
- ヴィーアメント(HMS Vehement, P25)- 未起工。
- ヴェノム(HMS Venom, P27)- 未起工。
- ヴァーヴ(HMS Verve, P28)- 未起工。
1943年計画でさらに10隻が発注されたが、1943年11月20日に全艦キャンセルされた。このうち8隻は命名されなかった。
- アンブライドレッド(HMS Unbridled, P11)- 未起工。
- アップワード(HMS Upward, P16)- 未起工。
- 名前のない8隻
出典
- ^ Conway's All the World's Fighting Ships 1922–46
- ^ “V Class submarines”. Battleships-Cruisers. 2020年4月18日閲覧。
参考文献
- 『世界の艦船 増刊第48集 イギリス潜水艦史』海人社〈世界の艦船〉、1997年9月。
関連項目