スンダ文字(スンダもじ、英語: Sundanese)は、Unicodeの60個目のブロック。
解説
インドネシアのジャワ島西部で話されるスンダ語を表記するためのスンダ文字を収録している。
スンダ文字はブラーフミー文字から派生した所謂ブラーフミー系文字(インド系文字)の一つであり、音素文字のうち子音字単独では短母音/-a/を伴って発音され、別の母音にする際に母音記号を付加することで発音を切り替えるアブギダに分類される。書字方向はラテン文字やキリル文字などと同様に左から右へと横書き(左横書き)し、下に行を送り、単語毎に分かち書きをする。
子音字は子音クラスタを表す際に、通常は単にU+1BAA ᮪ SUNDANESE SIGN PAMAAEH
という記号を殺母音記号として後置する。ただし歴史的な文献においては、U+1BAB ᮫ SUNDANESE SIGN VIRAMA
と結合して脚文字と呼ばれる別の子音字と結合するための特殊な形状に変化する。
加えて、アラビア文字やタイ文字などと同様に独自の数字体系(スンダ数字)を有している。
符号位置の順序はおおむね伝統的なスンダ文字の順序に従っている。
Unicodeのバージョン5.1において初めて追加された。
収録文字
コード
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文字
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文字名(英語)
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用例・説明
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ラテン文字転写
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各種記号
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U+1B80
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ᮀ
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SUNDANESE SIGN PANYECEK
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デーヴァナーガリーなどにおけるアヌスヴァーラに相当する。後に音節が後続する子音字に付き、直後の子音と同じ調音点の鼻音が挿入されることを表す。現在のスンダ語では音節末に[ŋ]を伴うことを表す。
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ṁ
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U+1B81
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ᮁ
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SUNDANESE SIGN PANGLAYAR
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音節末に[r]を伴うことを表す。
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r
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U+1B82
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ᮂ
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SUNDANESE SIGN PANGWISAD
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デーヴァナーガリーなどにおけるヴィサルガに相当する。
音節末に[h]を伴うことを表す。
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ḥ
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母音字
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U+1B83
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ᮃ
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SUNDANESE LETTER A
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母音[a]を表す。
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a
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U+1B84
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ᮄ
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SUNDANESE LETTER I
|
母音[i]を表す。
|
i
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U+1B85
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ᮅ
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SUNDANESE LETTER U
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母音[u]を表す。
|
u
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U+1B86
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ᮆ
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SUNDANESE LETTER AE
|
母音[e]を表す。
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é
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U+1B87
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ᮇ
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SUNDANESE LETTER O
|
母音[o]を表す。
|
o
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U+1B88
|
ᮈ
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SUNDANESE LETTER E
|
母音[ə]を表す。
|
e
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U+1B89
|
ᮉ
|
SUNDANESE LETTER EU
|
母音[ɤ]を表す。
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eu
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子音字
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U+1B8A
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ᮊ
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SUNDANESE LETTER KA
|
子音[k]を表す。
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k
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U+1B8B
|
ᮋ
|
SUNDANESE LETTER QA
|
子音[q]を表す。
|
q
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U+1B8C
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ᮌ
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SUNDANESE LETTER GA
|
子音[ɡ]を表す。
|
g
|
U+1B8D
|
ᮍ
|
SUNDANESE LETTER NGA
|
子音[ŋ]を表す。
|
ng
|
U+1B8E
|
ᮎ
|
SUNDANESE LETTER CA
|
子音[t͡ɕ]を表す。
|
c
|
U+1B8F
|
ᮏ
|
SUNDANESE LETTER JA
|
子音[d͡ʑ]を表す。
|
j
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U+1B90
|
ᮐ
|
SUNDANESE LETTER ZA
|
子音[z]を表す。
|
z
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U+1B91
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ᮑ
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SUNDANESE LETTER NYA
|
子音[ɲ]を表す。
|
ny
|
U+1B92
|
ᮒ
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SUNDANESE LETTER TA
|
子音[t]を表す。
|
t
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U+1B93
|
ᮓ
|
SUNDANESE LETTER DA
|
子音[d]を表す。
|
d
|
U+1B94
|
ᮔ
|
SUNDANESE LETTER NA
|
子音[n]を表す。
|
n
|
U+1B95
|
ᮕ
|
SUNDANESE LETTER PA
|
子音[p]を表す。
|
p
|
U+1B96
|
ᮖ
|
SUNDANESE LETTER FA
|
子音[f]を表す。
|
f
|
U+1B97
|
ᮗ
|
SUNDANESE LETTER VA
|
子音[v]を表す。
|
v
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U+1B98
|
ᮘ
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SUNDANESE LETTER BA
|
子音[b]を表す。
|
b
|
U+1B99
|
ᮙ
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SUNDANESE LETTER MA
|
子音[m]を表す。
|
m
|
U+1B9A
|
ᮚ
|
SUNDANESE LETTER YA
|
子音[j]を表す。
|
y
|
U+1B9B
|
ᮛ
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SUNDANESE LETTER RA
|
子音[r]を表す。
|
r
|
U+1B9C
|
ᮜ
|
SUNDANESE LETTER LA
|
子音[l]を表す。
|
l
|
U+1B9D
|
ᮝ
|
SUNDANESE LETTER WA
|
子音[w]を表す。
|
w
|
U+1B9E
|
ᮞ
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SUNDANESE LETTER SA
|
子音[s]を表す。
|
s
|
U+1B9F
|
ᮟ
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SUNDANESE LETTER XA
|
子音列[ks]を表す。
|
x
|
U+1BA0
|
ᮠ
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SUNDANESE LETTER HA
|
子音[h]を表す。
|
h
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子音記号
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U+1BA1
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ᮡ
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SUNDANESE CONSONANT SIGN PAMINGKAL
|
子音クラスタにおける介音としての[-j-]を表す。
|
y
|
U+1BA2
|
ᮢ
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SUNDANESE CONSONANT SIGN PANYAKRA
|
子音クラスタにおける介音としての[-r-]を表す。
|
r
|
U+1BA3
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ᮣ
|
SUNDANESE CONSONANT SIGN PANYIKU
|
子音クラスタにおける介音としての[-l-]を表す。
|
l
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母音記号
|
U+1BA4
|
ᮤ
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SUNDANESE VOWEL SIGN PANGHULU
|
母音[i]を表す。
|
i
|
U+1BA5
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ᮥ
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SUNDANESE VOWEL SIGN PANYUKU
|
母音[u]を表す。
|
u
|
U+1BA6
|
ᮦ
|
SUNDANESE VOWEL SIGN PANAELAENG
|
母音[e]を表す。
|
é
|
U+1BA7
|
ᮧ
|
SUNDANESE VOWEL SIGN PANOLONG
|
母音[o]を表す。
|
o
|
U+1BA8
|
ᮨ
|
SUNDANESE VOWEL SIGN PAMEPET
|
母音[ə]を表す。
|
e
|
U+1BA9
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ᮩ
|
SUNDANESE VOWEL SIGN PANEULEUNG
|
母音[ɤ]を表す。
|
eu
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ヴィラーマ
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U+1BAA
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᮪
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SUNDANESE SIGN PAMAAEH
|
ヴィラーマ(殺母音記号)。母音/-a/を発音せず子音のみが読まれることを表す。脚文字を形成しない[1]。
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U+1BAB
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᮫
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SUNDANESE SIGN VIRAMA
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ヴィラーマ(殺母音記号)。母音/-a/を発音せず子音のみが読まれることを表す。古い綴りにおいて用いられ、脚文字を形成する[1]。
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子音記号
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U+1BAC
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ᮬ
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SUNDANESE CONSONANT SIGN PASANGAN MA
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子音クラスタにおける介音としての[-m-]を表す。
|
m
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U+1BAD
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ᮭ
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SUNDANESE CONSONANT SIGN PASANGAN WA
|
子音クラスタにおける介音としての[-w-]を表す。
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w
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追加の子音字
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U+1BAE
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ᮮ
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SUNDANESE LETTER KHA
|
子音[x]を表す。
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kh
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U+1BAF
|
ᮯ
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SUNDANESE LETTER SYA
|
子音[ɕ]を表す。
|
sy
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数字
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U+1BB0
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᮰
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SUNDANESE DIGIT ZERO
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スンダ文字における数字の0。
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0
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U+1BB1
|
᮱
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SUNDANESE DIGIT ONE
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スンダ文字における数字の1。
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1
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U+1BB2
|
᮲
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SUNDANESE DIGIT TWO
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スンダ文字における数字の2。
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2
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U+1BB3
|
᮳
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SUNDANESE DIGIT THREE
|
スンダ文字における数字の3。
|
3
|
U+1BB4
|
᮴
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SUNDANESE DIGIT FOUR
|
スンダ文字における数字の4。
|
4
|
U+1BB5
|
᮵
|
SUNDANESE DIGIT FIVE
|
スンダ文字における数字の5。
|
5
|
U+1BB6
|
᮶
|
SUNDANESE DIGIT SIX
|
スンダ文字における数字の6。
|
6
|
U+1BB7
|
᮷
|
SUNDANESE DIGIT SEVEN
|
スンダ文字における数字の7。
|
7
|
U+1BB8
|
᮸
|
SUNDANESE DIGIT EIGHT
|
スンダ文字における数字の8。
|
8
|
U+1BB9
|
᮹
|
SUNDANESE DIGIT NINE
|
スンダ文字における数字の9。
|
9
|
記号
|
U+1BBA
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ᮺ
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SUNDANESE AVAGRAHA
|
アヴァグラハ。二重化記号。母音aが後続する子音字の前に置き、子音字の持つ随伴母音aを省略して後続する母音aと融合して発音されることを表す[2]。元々は連音(サンディ)によって語頭の母音 a が消えたことを表していた。
|
'
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歴史的字母
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U+1BBB
|
ᮻ
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SUNDANESE LETTER REU
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音節主音化した短母音としてのR(IPA:[ɹ̩])を表す。現在のスンダ語では[rɤ]と発音される。
|
r̥[注釈 1]
|
U+1BBC
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ᮼ
|
SUNDANESE LETTER LEU
|
音節主音化した短母音としてのL(IPA:[l̩])を表す。現在のスンダ語では[lɤ]と発音される。
|
l̥[注釈 2]
|
U+1BBD
|
ᮽ
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SUNDANESE LETTER BHA
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母音[i]を表す。U+1B84 ᮄ SUNDANESE LETTER Iの古い形。この文字は元々は誤認されていたため、Unicode名は誤称である[1]。
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i
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U+1BBE
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ᮾ
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SUNDANESE LETTER FINAL K
|
末子音の[k]を表す。
|
k
|
U+1BBF
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ᮿ
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SUNDANESE LETTER FINAL M
|
末子音の[m]を表す。21世紀の文書で使用される[1]。古いスンダ語写本の筆写上の誤りに基づいているため、私用は非推奨である[3]。実際の末子音mには、1B99 1BAA のシーケンス(ᮙ᮪)を使用する[1]。
|
m
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小分類
このブロックの小分類は「各種記号」(Various signs)、「母音字」(Vowels)、「子音字」(Consonants)、「子音記号」(Consonant signs)、「母音記号」(Vowel signs)、「ヴィラーマ」(Viramas)、「追加の子音字」(Additional consonants)、「数字」(Digits)、「記号」(Sign)、「歴史的字母」(Historic letters)の10個となっている[1]。本ブロックでは、Unicodeのバージョン更新時の文字追加が隙間を埋める形で行われた影響で、同一の小分類に属する文字が飛び飛びの符号位置に割り当てられていることがある。
各種記号(Various signs)
この小分類にはスンダ文字のうち、母音字や子音字に結合する発音記号などの様々な記号が収録されている。
母音字(Vowels)
この小分類にはスンダ文字のうち、頭子音のない母音の音節を表す際に用いられる独立した母音字が収録されている。
子音字(Consonants)
この小分類にはスンダ文字のうち、基本的な子音字が収録されている。
子音記号(Consonant signs)
この小分類にはスンダ文字のうち、子音クラスタや末子音などを表すための別の子音字に結合する子音記号が収録されている。
母音記号(Vowel signs)
この小分類にはスンダ文字のうち、子音字に結合する母音記号が収録されている。
ヴィラーマ(Viramas)
この小分類にはスンダ文字のうち、子音字の持つ暗黙の随伴母音/-a/を読まずに子音のみを発音することを表す記号が収録されている。
なお文字名及び小分類名の「ヴィラーマ(virama)」とはデーヴァナーガリーにおける同様の機能を持つ記号の名称である。
追加の子音字(Additional consonants)
この小分類にはスンダ文字のうち、外来語などを表記するための追加の子音字が収録されている。
数字(Digits)
この小分類にはスンダ文字で用いられる固有の数字が収録されている。
記号(Sign)
この小分類にはスンダ文字のうち、アヴァグラハと呼ばれる母音aが後続する子音字の前に置き、子音字の持つ随伴母音aを省略して後続する母音aと融合して発音されることを表す記号1つのみが収録されている。
歴史的字母(Historic letters)
この小分類にはスンダ文字のうち、歴史的に用いられていたが、現在は廃字となった字母が収録されている。
文字コード
履歴
以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
バージョン
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コードポイント[a]
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文字数
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L2 ID
|
ドキュメント
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5.1
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U+1B80..1BAA,1BAE..1BB9
|
55
|
L2/06-002
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Michael Everson (11 January 2006), Proposal for encoding the Sundanese script (英語)
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6.1
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U+1BAB..1BAD,1BBA..1BBF
|
9
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L2/09-190
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Michael Everson (5 May 2009), Preliminary proposal for encoding additional Sundanese characters for Old Sundanese (WG2 N3648) (英語)
|
L2/21-221
|
Ilham Nurwansah (29 September 2021), Wrong Identities of Three Historical Sundanese Character (英語)
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- ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。
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脚注
注釈
出典
関連項目