ピューマ
ピューマ(Puma concolor)は、哺乳綱食肉目ネコ科ピューマ属に分類される食肉類。英名はcougar(クーガー)。 分布カナダのブリティッシュコロンビア州から、チリにかけて[4]。 形質頭胴長(体長)オス107 - 168センチメートル、メス96 - 141センチメートル[4]。尾長57 - 92センチメートル[4]。体重オス39 - 80キログラム、メス22.7 - 50キログラム[4]。大きさは緯度や気候・獲物の量などによって変異があり、分布域北端と南端の温帯域の個体群は大型[4]。熱帯域の個体群は小型[4][6]。尾は長く、円筒形[4][7]。 背面は淡黄褐色や濃黄褐色で、斑紋は入らない[4]。耳介の外側と尾の先端は、黒や濃褐色[4]。出産直後の幼獣には、濃褐色の斑点や斑紋が入る[4]。多くの個体は、生後9 - 12か月で斑紋が消失する[4]。幼獣は体中に黒から黒褐色のヒョウのような斑紋があり、尾には黒い輪があるが、これらは成長とともに消えていく。 嗅覚が鋭く、ネコ科の大型肉食獣の中では特に眼球が大きく、視力が高い。 分類以前は32亜種に分ける説もあったが、形態のわずかな差異しかなく亜種をまとめる説が有力とされる[4]。2000年に発表されたミトコンドリアDNA、16SrRNAなどの分子系統解析から、以下の亜種に分ける説もある[8]。 以下の亜種の分類・分布は、IUCN SSC Cat Specialist Group(2017)に従う[8]。
以下の2亜種のみとする説もある。以下の分類・分布も、IUCN SSC Cat Specialist Group(2017)に従う[8]。
生態森林や低木林・草原・サバンナ(パンタナルやパンパなども含む)・岩が多く植生の点在する砂漠など、様々な環境に生息する[4]。基本的に単独行動であり、オスでは平均の広さ250 km2(半径9 kmの円)程度の縄張りを持つとされる。比べ、メスの縄張りは狭く面積はその半分から3分の1程度となる。ただし、縄張りの広さは環境に左右され、餌が豊富で条件がよい地域ではオスの縄張りが1頭当り25 km2(半径3 kmの円)程度の地域もあるという。敏捷で瞬発力に優れ、高さ4 m、幅12 mほどの跳躍した記録が残されている。 主に中型から大型の有蹄類を食べる[4]。北アメリカではオジロジカ属、ヘラジカ(主に若獣)、ミュールジカ、シロイワヤギ、ドールシープ、ビッグホーン、プロングホーン、クビワペッカリーなどを食べる[4]。アライグマ、ウサギ、アメリカビーバー、オグロプレーリードッグ、リス、キタオポッサムなどの小型の動物も食べる。チリ中部ではグアナコが食性の88.5 %、トレスデルパイネ国立公園ではグアナコが食性の59 %を占めていたという報告例もある[4]。南アメリカでは一方でマザマジカ属、ペッカリー類、バク類、アルマジロ類、ウサギ類、アグーチやカピバラ・ヌートリア・アメリカヤマアラシ類などの齧歯類・ハナグマ属・サル類・アリクイ類・タテガミオオカミ・およびナマケモノ類といった有毛目などの小型の獲物も食べる[4]。鳥類(大型のものではレア)や爬虫類(大型のものではアメリカアリゲーターやカイマン類)を捕食することもあるが、主な獲物ではない[4]。狩りの方法は、地面に伏せて獲物に忍び寄り、後ろや物陰から瞬発力を利用して一気に飛びかかるというもの。大型の獲物は喉に噛みついて窒息死させ、小型の獲物は頭部や頸部に噛みついて殺す[4]。獲物の行動を止めるため、顎や喉笛に食いついたり、獲物を転倒させて、腹部に食いついたりもする。ヤマアラシに対する狩り方は、針毛のない腹部を爪で掻き裂くというもの。捕食された動物の中には、飛びつかれた際の衝撃による骨折が死因のものも見つかっている。殺した獲物は保存や死肉食動物から守るために、土や落ち葉・雪をかぶせて隠すこともある[4]。こうした獲物を数回(3日 - 4週間<寒冷地で大型の獲物の場合>)にわけて、食べることもある[4]。アメリカグマやヒグマ・オオカミに、仕留めた獲物を奪われてしまうこともある[4]。 妊娠期間は82 - 98日[4]。1回に1 - 4頭(平均3 - 4頭)の幼獣を産む[4]。飼育下では、最大6頭の幼獣を産んだ例がある[4]。飼育下での寿命は長くても20年[4][5]。 人間との関係ライオンのメスに似ていることから、生息地ではライオンを意味する呼称(例としてアメリカ合衆国西部ではLion)で呼ばれることもある[4]。 家畜や、郊外ではイヌ・ネコなどのペットを襲うこともある[4]。ごくまれに人間を殺すこともあり、1890 - 2012年にアメリカ合衆国およびカナダで本種による死亡例は23例(うち2例は狂犬病による死亡例)とされる[4]。 狩猟、害獣としての駆除、道路建設による生息地の分断化および交通事故(フロリダ州で顕著)などにより生息数は減少している[3][4]。アメリカ合衆国東部では、フロリダ州を除いて絶滅した[4]。1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書I・ワシントン条約附属書IIに掲載されている亜種もいたが、2017年に分類の変更に伴い掲載されていた全亜種が亜種P. c. couguarに含まれるということになりこれらの掲載は抹消されている[2]。1977年にネコ科単位でワシントン条約附属書IIに掲載され、2019年にコスタリカとパナマ個体群がワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]。 日本では2020年の時点でプマ属(ピューマ属)単位で、特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)[9]。 インカ帝国に存在したクスコの街はピューマを元にできている[10]。 呼称分類学上、本種をピューマ属とせず、ネコ属の下位に置いて「ピューマ亜属」とする学説もあり、その場合の学名はシノニムとしての Felis concolor である。 属名 Puma や英名puma(プーマ)の語源を辿ると、スペイン語名を経ているが、そもそもの由来は南アメリカのペルーやエクアドルに暮らす先住民族ケチュアの言語でのその名 pumaに源流がある[要出典]。 アメリカライオンとも呼ばれる[11]。民俗学者の南方熊楠は著書『十二支考』の中でピューマに対して亜米利加獅や米獅という漢字を当てている[12]。 画像
出典
関連項目
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