当番弁護士制度当番弁護士制度(とうばんべんごしせいど)とは、刑事事件で逮捕された被疑者に対して、起訴される前の段階であっても、弁護士を通じた弁護権を保障することを目的として、日本弁護士連合会(日弁連)により提唱・設置された制度である。 逮捕された人が捜査当局(警察、海上保安庁、麻薬取締部など)を通じて、または家族や知人などが所管の弁護士会へ依頼することによって、当番弁護士による初回の接見を無料で受けることができ、防御の手段等のアドバイスや法律相談を受けたり、弁護の依頼を行うことができる。 制度趣旨被疑者が逮捕された直後の期間には、被疑者は刑事手続の流れや自身の権利を理解できないまま、不本意な内容の供述調書に署名させられたりする危険に晒されており、この期間に弁護士の援助を受ける必要性は高い[1]。 憲法上、刑事事件の被疑者として逮捕された者には弁護人を依頼する権利が保障されている(日本国憲法第34条)が、弁護士依頼費用を負担できるほどの資力を有していない者に対する現行法上の保護は薄く、起訴前勾留(刑事訴訟法37条の2)および起訴後(刑事訴訟法36条)の期間について国選弁護制度による国からの補助があるのみである。したがって、逮捕後勾留前の捜査段階において、資力を持たない者は、自己を弁護する権利を正当に行使できないおそれが生じてしまうことになる。 過去には、取調官による暴力・自白の強要、捜査官による事実の歪曲など、弁護士を通じた防御がなされていれば起こらなかったと考えられるような問題が、裁判の中で明らかになる事例があった。しかしながら、取調室という密室で行われた行為に関して、弁護士の援助を受けられない被疑者が不当性を立証することは困難であり、冤罪の温床になりかねないとして、多くの法学者により対策が求められていた。 このような事態を重く見た日弁連が、本制度の設置を提唱し、1990年、大分県弁護士会が、日本で初めて「起訴前弁護人推薦制度」を開始した(参照:みどり荘事件)。その後、各都道府県の弁護士会の協力により、1992年から全国的に実施された。例えば、富山県弁護士会(会長:浦崎威)は、富山・長野連続女性誘拐殺人事件など、密室での取り調べによる冤罪事件を教訓に本制度を導入し、1992年4月1日から運用を開始した[2][3]。 2002年に日弁連が発表した統計では、刑事事件で逮捕された人の約4割にあたる6万3千人が本制度を利用するに至っている。 なお、近年では民事においても当番弁護士制度を導入する弁護士会が出てきている(後述)。 制度の概要
問題現在の制度は、以下のような問題を残したままである。
法的整備
当番弁護士制度の外部支援者家事当番弁護士制度大阪弁護士会は2007年10月1日から、離婚や相続などを巡って訴訟や調停の当事者になった人を対象に、初回の相談に無料で応じる家事当番弁護士制度を導入している。このような調停などに弁護士が関与する割合が低いため、弁護士に依頼しやすい環境を整えて手続などを助言し、早期に紛争を解決するのが狙いである。 脚注出典
関連項目外部リンク
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