かくかくしかじか
『かくかくしかじか』は、東村アキコによる日本の漫画。『Cocohana』(集英社)2012年1月号から2015年3月号まで連載された[1]。 2025年に実写映画版が公開された[2]。 概要東村アキコが幼年時代からの生い立ちと、有名漫画家になるまでの女性漫画家版『まんが道』を想定して描く自伝エッセイ漫画。 もともと、女性漫画家が描いたことがなかった『まんが道』的な作品を描きたいという思いがかねてからあった。また、日高絵画教室(作中の仮名)で東村が休日アルバイト講師をしていた頃の生徒で元アシスタントであるはるな檸檬からの「日高先生のことは描かないんですか」という示唆があり、その二つが合わさり製作につながった[3]。 作品中では塾を手伝っていた先生の夫人の存在が完全に消し去られ、あたかも一人暮らしの独身のように描くなど、大きく脚色されてはいるが、「日高先生本人」のことは一切脚色せず、実際の言動を、これでも控えめに描いている、と東村は主張している。また単行本でも言及しているが、本人の言によると東村は記憶力が人一倍よく、出来事や人物を映像として明確に覚えている[4][3][5]。 連載後半はアシスタントが泣きながら作業していることが多く、最終回は東村もアシスタントも泣きながら仕上げた[6][7]。 2015年、第8回マンガ大賞[1][8]および第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した[9]。 テーマどうやって「美大に合格したか」、「漫画家になれたか」と、東村は、よく若い子に聞かれるが、絵を描くということは、ただ手を動かし「描くこと」、「どれだけ手を動かしたか」が全てだ。日高教室で同じものを何回も何十回も強制的に描かされた。それがよかったと思う。楽しくだけでない押しつけるような、きつい先生に出会うこともだいじだ。大学で描けなくなったのは、「何を描くか」、「自分の描きたいものは」と考えたからだ。根気のない子や頑張れない子、逃げで描く子は無理だ。絵を描くことに生活で一番集中してないと。しかし、口で言うと偉そうだし、若い子には伝わらないので漫画で表そうとした。若い子は、ある日何か降りてきて、いつかすっと描けるようになると思っている。それは違って、しんどいが想念の海の中から無理やり、何か掴んで引きずり降ろすしかない[3]。 あらすじ美大受験編林明子は、宮崎県の片隅で伸び伸びと育ち、自分は絵の天才だと思い込みながら「少女漫画家」になることを夢見ていた。高校生になった明子は、「美術大学に進学して、在学中に漫画家としてデビューする」という無謀な計画を立て、高校3年生で美大進学を目指そうと決意する。 デッサン力もなく油絵経験のない明子は、美大受験を目指すクラスメイトが通っている「日高絵画教室」の美大進学コースに通うことになる。しかし、講師をしている画家 日高健三に、それまでの自信と天才との思い込みを粉々に打ち砕かれ、待っていたのは罵声と竹刀とアイアンクローのスパルタ指導であった。 それ以降、厳しくも優しい恩師・日高先生と、お調子者のミラクルガール・明子が、ときに笑い涙し反発しながらも、二人三脚で美大合格を目指すことになる。 美大編無事に金沢の美大に合格した明子だったが、大学では遊びふけり授業に身が入らず、スランプで絵が描けなくなり、まったく漫画を描かない状態が続いていた。帰省した明子は、「日高絵画教室」で絵を描かされて、ようやくスランプから脱出する。 その後、西村というイケメンの彼氏も出来て、人生の春を謳歌する明子。そんな中、日高が突然に訪ねてきて、一緒に大学見学を強要した挙句に、明子の部屋に泊まろうとする。そのため明子は、日高を自分の部屋に置きざりにして、彼氏の部屋に退避する。翌日、日高を空港まで送ってから明子が部屋に戻ると、そこには焼酎が残されていた。日高は20歳になり成人した明子と、一緒に酒が酌み交わして夜通し話がしたかったのだと明子は悟る。 4年生になった明子は就活で悪戦苦闘するが、日高のツテで「私立高校の美術の先生」になることが決まる。 美大卒業後卒業した明子は帰郷するが、強いコネを持った他人が横入りしてきて、不採用になった明子はプータローとなり、「日高絵画教室」で講師のアルバイトをすることになる。父親の会社のコールセンターで働きながら、講師のアルバイトを続け、ストレスで極限まで追い詰められた明子は、「会社を辞めるため」に漫画を描き始める。 『ぶーけ』のコンテストに応募した作品は、本誌掲載&デビューが可能な「3席」に入賞するも、水性ボールペンで描いていたため掲載が見送られてしまう。担当編集者が付いた明子は、その後に描いた読切作品で漫画家デビューし、日高に自分の漫画を見せるが、日高は「漫画で儲けた金で絵画を続けろ」と強要する。 漫画家になるため、日高から離れることを決意した明子は、コールセンターと絵画教室のアルバイトという激務の中で、ひたすら読切漫画を描き続けていく。月刊連載が開始され、貯金も貯まった明子は、出版社のパーティーで知り合った漫画家 石田拓実のいる大阪へと引っ越しする。 日高の死プロ漫画家として順調にステップアップしていく明子に、日高から電話があり「肺がんで余命4か月」と告げられ、絵画教室の後継者になってほしいと懇願される。宮崎に帰郷した明子であったが、最終的に日高絵画教室を継ぐことはせず、漫画家の道を歩んでいくことを選択する。 余命4か月よりも長く生きて、最後まで絵を描き続けていた日高であったが、病には打ち勝つことはできず亡くなってしまう。葬儀には、大勢の絵画教室の仲間たちが集まり、思い出話に花を咲かせる。 10数年後、本作の執筆をしながら、「描け」と叫び続けてきた日高のことに想いを馳せたところで、物語は終わりを告げる。 登場人物主要人物
他の人物
書誌情報
実写映画
2025年5月16日に公開された[2]。 キャスト
スタッフ
製作東村は完璧な形での実現は不可能だろうと考え、長らく本作の映像化を断り続けていたが、永野を主演とする形での提案を受けた際に、考えを改めて自分自身が制作に関与する形で許諾。先生役に大泉を指名した上で、伊達さんとともに脚本も手がけた他、美術監修なども自ら行った[2][18]。 脚注
関連項目
外部リンク
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